萌えと知性がせめぎあう……タイ俳優Up Poompatさんのファンミレポート(辛酸なめ子)

タイのBLドラマブームが巻き起こってから2年以上、今もその熱気はおさまる気配がありません。入国制限が緩和されると、南国の空気とともに、タイから人気の俳優が次々と来日。モニターごしにしか見られなかった方を、日本で肉眼で拝見できる機会が訪れています。

先日などは渋谷で偶然、人気の俳優ガルフさんを見かけました。女性ファン100人くらいに囲まれたガルフさんは、礼儀正しく手を合わせて挨拶していました。顔が小さくて185cmの超絶スタイルな上、礼儀もしっかりしている……そんな見た目も人徳も最高レベルの逸材がタイにはたくさんいらっしゃいます。

先日、都内で初の来日ファンミーテングを開催したUp Poompat(プーンパット・イアン=サマン)さんも、ポテンシャルしかない素晴らしい俳優。

2021年にドラマ『Lovely Writer The Series』のBL小説家役でブレイク。プライベートでは、タイ最難関のチュラロンコン大学出身でイギリス留学経験もありつつ、今はチュラロンコン大学の博士課程に在籍。自らのブランドも立ち上げ、YouTubeの番組制作、歌手活動など多彩な活躍ぶりですが、ご本人は癒し系のかわいい雰囲気というギャップが魅力です。見た目は日本人が好きな、羽生結弦や中村倫也、田中圭などの塩顔男子の良いところをミックスして蒸留したような、純度の高いイケメンです。

そんなUpさんのファンミーティング「Up Poompat 1st Fan Meeting in Japan」が11月初旬に開催。会場は大手町の日経ホール。この会場のセレクションも、Upさんの品格にふさわしいような……。

会場はほぼ女性客でにぎわっていて、グッズコーナーにはポーチや缶バッヂ、クリアファイル、アクリルスタンドにトレカなど、ファンの需要をよくわかっているアイテムが並んでいました。

イベントが開演し「みなさ~ん、サワディカップ!」と白いニット姿で登場したUpさん。思わず「かわいい……」という声が漏れてしまいました。白い上下でラブリーなうさぎのよう。ざっくりニットで萌え袖というのがまたあざとかわいいです。

まずはスペシャルトーク。心得た感じの女性司会者が、Upさんに様々な質問を振っていきます。トークには通訳さんが入って瞬時にタイ語から日本語に訳されました。

―『Lovely Writer』の撮影で楽しかった、面白かったことは?

Upさん:全部楽しかったです。制作スタッフや出演者とは今も連絡を取り合っています。

―同世代の俳優とどんな話題で盛り上がりましたか?

Upさん:監督の噂を話したりしていました(笑)。

―共演のKaoさんはどういう人?

Upさん:Kaoはとてもまじめでかわいいです。楽しいことをシェアしていました。

それを聞いて、Kaoさんと一緒の来日イベントもいつか実現すると良いのに、という思いがよぎりました。

ちなみに、次にUpさんが出演予定の作品は、韓国のIT系企業が舞台のドラマや、ホラー映画だそう。

―ホラー映画の撮影は怖かったですか?

Upさん:めちゃめちゃ怖かったです。撮影中は一人でトイレに入れませんでした……。

と、またかわいさをふりまくUpさん。

日本にはこれまでプライベートでも何度か来日しているそうで、好きな食べ物を聞かれたら、「ヤキニク、スキヤキ」と、草食動物っぽい雰囲気と裏腹に、意外と肉食系男子でした。それにしてもトークが優等生感があふれていて、今後スキャンダルなども起こしそうになく、安心して応援できそうです。

トークコーナーのあとは、ソングコーナー。歌手として活動しているUpさんが、客席の通路を歩きながら歌を披露。やや緊張感を漂わせながら、手を振ったり手を合わせたりして、ピュアな声で一生懸命歌っていました。山崎まさよしの「One more time,One more chance」も披露。さすがタイの最難関大学、卓越した語学力や記憶力を感じさせます。

「大好きな曲で、タイで練習してきました」とのこと。日本語の発音も素晴らしかったです。ちなみにイベントの翌日に取材現場に挨拶に伺ったら「山崎まさよしの曲はどうでしたか?」と聞かれて、まじめな人柄が伝わりました。 

後半は和装で日本の遊びにチャレンジする、というコーナーが。和風の顔立ちなので似合います。けん玉や、紙ふうせん傘回し、コマ回しなどに挑戦。何回目かでけん玉に成功すると、会場で大きな拍手が巻き起こりました。紅白歌合戦の三山ひろしのけん玉チャレンジくらい盛り上がった瞬間でした。Upさんは、さらに難易度が高いコマ回しなども成功させて、そのコマが数分間回り続けていたので、会場は賞賛と感動の渦に。実は器用なUpさん。ファンとしてはあのコマになってUpさんの意のままに回りたい、と思われた方もいたかもしれません。

コマ回しに成功したご褒美に、もなかを食べさせてもらえたUpさん。「口の中にくっつく」という素直なコメントに、暖かい笑いの波が。ユルさが心地よいイベントです。タイの俳優に求めてたのは、こんなチルアウト感と萌えと癒しだった……ということに改めて気付かされました。時々、客席から撮影OKタイムになるサービス精神もありがたいです。

後半も、Upさんが大好きなマヨネーズを世界最後の日に何にかけたいか、とか、ウィンクするのはどっちの目か、といったユルいクイズコーナーなどが展開(ちなみにマヨネーズはチュープからそのままいきたい、ウインクは左目だそう)。世の中の、コロナウイルスとか物価上昇とか円安とか暗いニュースをしばらく忘れ去ることができました。脳がリラックスして、タイにトリップしたかのよう……。うさぎポーズも披露してくれて、かわいい、という言葉しか出てきません。この世の楽園のような時間で、「このままずっとみんなと遊んでいたい」というUpさんの言葉に、ますます現実に戻りたくなくなりました。

「今日は本当に会いに来てくれてありがとう!オフィシャルグッズもめちゃくちゃかわいいから見てください」と、最後にお客さんの購買欲をさりげなくあおるUpさん、さすがです。俳優、歌手としてだけでなくビジネスも成功する未来が見えました。Upさんを応援することで、有能なエリート男性の成功の運気をわけてもらえる予感です。

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。