『バイオハザード REバース』レビュー:大味な面はあるがシリーズのキャラクターやクリーチャーが戦うお祭り的雰囲気は楽しい

1年間待ち続けた「バイオハザード」のマルチプレイ対戦ゲームがとうとうリリースされた。そう、『バイオハザード REバース』だ。期待半分、不安半分で待っていた筆者もすぐにプレイしてみたので、そのレビューをお届けしたい。

人間キャラもBOWも参戦! お祭り的なマルチプレイ対戦ゲーム

『バイオハザード ヴィレッジ』の購入者であればご存知とは思うが、そうでない方のために改めて解説しておくと『バイオハザード REバース』は『バイオハザード ヴィレッジ』に同梱されていたゲームだ。『バイオハザード RE:3』にカップリングされていた『バイオハザード レジスタンス』と同じ位置づけのゲームといっていいだろう。

ちなみに、現在発売中のDLC同梱版『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』を購入することでも、『バイオハザード REバース』を手に入れることができる。

同梱タイトルであるため、本来であれば『バイオハザード ヴィレッジ』が発売された2021年5月発売時点で遊べるはずだった。しかし諸事情による延期が繰り返され、1年越しの今ようやくプレイできるようになった……というのがリリースまでの経緯だ。

(画像は『バイオハザード ヴィレッジ』)

本作は『バイオハザード ヴィレッジ』同梱ということで、一見『バイオハザード ヴィレッジ』のオマケ的な作品に見えるがタイトルとしては独立しており、設定も『バイオハザード ヴィレッジ』と直接的には繋がっていない。これまでのシリーズのキャラクターたちが人間、クリーチャーを含めて登場し、ある意味設定度外視で戦う……というのが『バイオハザード REバース』の趣旨。つまり、お祭り的な作品といえる。

キルされたらクリーチャーにREバース! リベンジがテーマのデスマッチ対戦

『バイオハザード REバース』は、ゲームジャンルとしてはデスマッチ形式のTPSだ。クリスやレオン、ジルといった歴代キャラクターから自分のキャラクターをチョイスし、戦いに参加する。

試合中は他のプレイヤーをキルすることでポイントを獲得。自分がキルされないよう立ち回りつつポイントを稼ぎ、制限時間内でより多くのポイント獲得を目指す。

本作ならではといえる仕様のひとつが、スキル攻撃。銃を使った通常攻撃以外に、キャラクターごとの固有のスキル攻撃が用意されている。たとえばクリスなら一定時間ダメージによるひるみとノックバックを無効化する「不屈の闘志」、レオンなら範囲内の複数の相手にヒットする「回し蹴り」など。

キャラクターの個性を踏まえたスキルに、ファンなら思わずニヤリとしてしまう。

また本作の中核といえるのが、タイトルの『REバース』という言葉が示す「復活要素」だろう。本作では人間キャラクターがキルされると、その場でクリーチャーへ変化する。

どんなクリーチャーに変化するかはランダムだが、人間の時点で獲得したウィルスの本数が多ければ多いほどより強力なクリーチャーへ変化。たとえば獲得したウィルスが2本ならネメシスやスーパータイラントなどのボス級クリーチャーへ変化することが可能だ。

つまり、クリスやレオンといったキャラクターたちがネメシスやスーパータイラントといったクリーチャーへ変化することになる。これは既存の「バイオハザード」シリーズの世界観からすると、かなりゲームシステムに寄った……割り切った仕様だ。

そもそも本作は設定度外視のお祭り的な作品となっており、メインストーリーも存在しない。恐らく世界観や設定にこだわるより、マルチプレイでワイワイお祭り的にプレイすることを想定しているのだろう。

では、世界観や設定を度外視して「クリーチャーへの変化」という要素をゲーム的に見た場合、どんな意味合いを持っているのか。それは、リベンジだ。

本作でポイントを稼ぐために重要なのが、キルを続けてコンボ数を稼ぐこと。しかし他プレイヤーに倒されてしまうと、コンボ数がリセットされてしまう。だがここで自分を殺したプレイヤーをキルし返し、リベンジに成功すればリセットを防ぐことが可能だ。

ウィルスの本数にもよるが、クリーチャー状態は人間状態よりも基本的に強い。さらに、クリーチャー状態になると人間キャラクターがどこにいるのかが見えるようになる。

なので、人間状態のときはキルコンボを稼ぎつつデスに備えてウィルスを収集。もし自分がキルされたらクリーチャー状態のスペックを利用してリベンジを成功させる……というのが本作の立ち回りとなる。

対戦ゲームとしてやや大味か……? マッチングにも課題あり

ここまで本作の内容について紹介してきたが、ではプレイした感想としてどうかというと……正直なところ、筆者には対戦ゲームとしては大味に感じられた。というのも、プレイ時間中にメリハリや駆け引きが感じられなかったからだ。

対戦型のFPS/TPSは、ただ撃ち合いをしているだけに思えるが、実際にはそうではない。優れた対戦型FPS/TPSは序盤、中盤、終盤というゲーム展開において、求められるプレイが変化していく。

たとえば、序盤ではアイテムの収集が成功するかどうかによってプレイヤーの状況に有利/不利に差がつき、中盤ではその有利/不利がスコアなどの勝利条件に反映され始める。そして終盤では有利プレイヤーはいかに防衛するかを考えて立ち回り、不利プレイヤーはいかに逆転するかを考えて立ち回る……といった具合だ。

この点で本作は、アイテム収集や、対戦闘、リベンジといったひとつひとつの要素がゲーム展開を通して繋がっていかない印象だ。とにかくまずはアイテムを探し、敵と遭遇したら目の前の敵を倒す、倒されたらリベンジを達成する……といった具合に、行動が場当たり的になってしまう。このため、ゲーム全体を通してどう動くかという立ち回りが考えにくい。

また、時間帯にもよるがマッチングに時間がかかるというのも課題といえる。

仕方がないことだが、恐らく発売から一年経過したことも影響しているだろう。今回『バイオハザード ヴィレッジ』のDLCが発売され、『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』もリリースされたので新規ユーザーや復帰ユーザーも増えているとは思う。しかし、『バイオハザード ヴィレッジ』をクリアしてそこで満足してやめてしまったプレイヤーも少なくないのではないだろうか。

対戦ゲームである以上、プレイヤー人口はダイレクトにゲームの楽しさへ繋がってくる。なので、この点は今後の運営で解決の糸口を探ってほしいと感じた。

ここまでの感想はネガティブなものになってしまったが、誤解しないでほしい。筆者は「バイオハザード」シリーズの大ファンだ。初代プレイステーションで初代『バイオハザード』がリリースされてから、シリーズのナンバリング作品はすべてプレイしている。だからこそ本作を期待半分、不安半分で待っていたのであり、今回は後者が当たってしまったかたちといえるだろう。

そもそもなぜ「不安半分」だったかといえば、「バイオハザード」シリーズの持つ要素がどうしても対戦には向いてないように思えるからだ。「バイオハザード」シリーズはソロ向けのホラーアクションアドベンチャーとして設計されているため、クリーチャーは圧倒的に強く、自キャラはギリギリ勝てる程度に調整されている。だからこそ、クリーチャーに出会う恐怖におびえながらも、それを乗り越えた時の爽快感が味わえるわけだ。

これに対し対戦ゲームは、対戦を競うという性質上、キャラクターにそこまでの性能差をつけることができない。『デッド・バイ・デイライト』などの非対称型対戦ゲームのように、敵味方でまったく性能が異なるジャンルもあるが、その場合でも人数差によってどちらの陣営でも勝利可能となるように調整される。

ただ、『デッド・バイ・デイライト』と違ってゼロから対戦ゲームを作るわけではない。そして、企画的に「バイオハザード」の対戦ゲームである以上、元となる「バイオハザード」シリーズの設定を活かすことが求められてしまう。そうでないと、「バイオハザード」の関連タイトルとして作る意味がないからだ。

では「バイオハザード」らしさとは何かといえば、「クリーチャーに出会う恐怖におびえながらも、それを乗り越えた時の爽快感」というソロ要素に行き着いてしまう。「敵との心理戦」や「戦略的に有利な状況をどう構築するか」といった対戦ゲーム的な要素ではないのだ。

このため、「バイオハザード」を対戦ゲーム化するというのは頭でイメージするほどカンタンではない。筆者が、「バイオハザード」シリーズを対戦ゲーム化と聞いて不安感を抱いてしまったのはこうした理由からだ。

実際、同じオマケコンテンツであってもソロ向けのオマケコンテンツには秀作が多い。襲い来る敵を次々倒す『ザ・マーシナリーズ』はこれまでに独立タイトルとして発売されたことがあるのもわかるくらい面白いし、『バイオハザード リベレーションズ』のオマケとなっていた『RAIDモード』は、そのローグライト的な魅力に時間を忘れてハマってしまった。

(画像は『バイオハザード リベレーションズ アンベールドエディション』)

ガチでやりこむには向かないがお祭り的な対戦ゲームとして遊ぶにはアリ

繰り返しになるが、筆者は「バイオハザード」の大ファンだ。だからこそ不安を抱きつつも、本作にかなりの期待を寄せていた。ここでの「期待」とは、「対戦ゲームとしての駆け引きがドップリ楽しめるのではないか?」というもの。しかし、残念ながら本作はその期待に応えてくれるものではなかった、

ただ、では本作がまったく面白くないのかといえば、そんなことはない。

「駆け引きや戦略が楽しめる」ということは、「カジュアルに楽しめる」ということと裏表の関係にある。

駆け引きや戦略を重視したゲームでは、駆け引きや戦略に優れたプレイヤーが勝つように設計される。つまり、ルールを知って深く考え、テクニックを使いこなすプレイヤーが勝つということ。それは裏を返せば、初心者が気軽にサクッとプレイしてもなかなか勝てないということになる。

本作の場合、筆者は「行動が場当たり的」と書いたが、それは裏を返せばとにかく目の前の状況に対応することを考えていれば楽しめるということ。クリスやレオン、ジルやクレアなどのお気に入りキャラを選んでそれぞれの個性が反映されたスキルを使い、目の前の状況に対応する。設定度外視のパーティーゲーム的作品を、堅苦しいこと抜きでお手軽にワイワイ楽しむという観点で考えれば、本作はそこまで悪くない。

つまり本作は、マルチプレイでワイワイお祭り的にプレイするという前提でプレイした時に真価を発揮するゲームといえるだろう。そもそも『バイオハザード ヴィレッジ』の同梱コンテンツとして無償配布されているオマケ的なゲームなので、プレイスタイルとしても「ガチに楽しむ」のではなく、「お祭り的に楽しむ」方が正しいように思える。

ただやはり「バイオハザード」ファン、そして対戦ゲームのファンとしてはガチで対戦の駆け引きが楽しめるマルチプレイ「バイオハザード」に期待してしまう……。わがままかもしれないが、いつかそんな作品をプレイしたいと感じた。

文/田中一広

ガジェット通信ゲーム班

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