太陽光発電でバッテリーレスのハイテクサングラスは偏光特性もあり!スマホ撮影では特殊フィルターとして活用できる!

  by 古川 智規  Tags :  

この夏まではコロナやそれに伴う行動制限で気軽に出かけるレジャーとはならなかったが、この秋からはとりあえず旅行や外出については特に問題なくできるようになった。
日が短く低くなるにつれ、昼下がりからの直射日光が巣ごもりの長かった目にはつらい。多少強引ではあるが、こういう時にはサングラスの登場となる。しかし今回紹介するサングラスは超ハイテクものだ。自動車の運転や屋外でのジョギングのみならずあらゆるレジャーや、なんとスマホでの写真撮影にも簡易的に流用できる偏光性能まで付いているので作例も含めて紹介する。
なお、眼鏡の上からでも使用可能なサングラスもあるので、普段はサングラスを使用しにくい眼鏡使用者も参考にしていただきたい。

ビジョナップ2010年より世界初のビジョントレーニングメガネの製造販売を行なっている。Visionup(ビジョナップ)というレンズ部分に使っている国産のフィルム液晶は特殊な樹脂製の液晶パネルだ。その液晶メーカー(ウィキュー・ジャパン)と協同で企画・開発したのが瞬間調光サングラスである。

今回レビューするのは、同社が販売する瞬間調光サングラス eShades (イーシェード・写真)と瞬間調光オーバーサングラス EXCELY(眼鏡用・トップ写真右)は、0.1秒でレンズの濃さを自動調整する瞬間調光サングラスである。
写真は裸眼やコンタクトレンズ使用時に着用するイーシェードだが、眼鏡用のEXCELYもデザインは異なるが、仕組みや構造は同じだ。鼻の間にある丸い点ドットの部分で光量の検知と太陽光発電を行う。レンズ部分は液晶パネルが仕込まれており、太陽光で発電した電力で駆動し、検知した光量に応じて液晶の偏光面を連続的に可変させサングラスとして機能させる。

しかし、どこをどう観察してもバッテリーらしきものないし、充電するUSBポートらしきものも見当たらない。どうなっているのか同社に取材した。
同社によると、液晶パネルを駆動させる電力は太陽光パネルの発電量で十分なので、重くなるよ要因である二次電池は搭載せず、バッテリーレスで駆動しているとのこと。光量が強いときは液晶を駆動させ続ける必要があるが、そのシチュエーションでは光量が強いので発電に問題はなく、光量が弱い場合はそもそもサングラスは必要ない時なので、発電する必要もないとのことだ。
考えてみれば当たり前のことで、サングラスが必要な時には強い光が当たっているので、その発電量で賄うことができるとのことだ。

さて、本品の特徴をまとめると、レンズにフィルム液晶を使いソーラーパネルを電源としてレンズの濃さを変える。そして光センサーが周囲の明るさを感知してレンズ(液晶)の濃さを調整する。可視光線の透過率を5%~41%の範囲で0.1秒以内に自動調光するが、無段階で可変するので常に最適な透過率でサングラスの機能を果たす。これにより周囲の明るさが変わっても目が感じる見かけ上の明るさをほぼ一定に保つことができるので、例えば急にトンネルに入っても違和感がない。明るさの検知には紫外線ではなく、光量に反応するセンサーなので車の中でも調光する。これについては後述する。ちなみにUVカット率は99%以上で、さらに偏光機能付きなので釣りやボート遊びのような水辺での使用にも最適だ。

偏光とは?

偏光機能について説明すると、目は物に当たって反射した光を検知して網膜に像を結ぶ。カメラも同じ原理で写真を記録する。網膜の代わりになるのがイメージセンサーだ。余談だが一般的なスマホのセンサーのサイズは1/2.3インチ型で、いわゆるフルサイズカメラ(35mmサイズ)のセンサーと比較すると面積比で1/30程度しかない。APS-Cサイズでもフルサイズの1/2程度の面積しかない。面積が大きいほど光を多くとらえることができるので、暗いところでも明るく撮影ができ、明暗差の激しい場所でも白飛びや黒つぶれの少ない写真撮影ができる。
話を戻すが、光は当たったものにより屈折率(反射率)が変わる。光が水に入ると大半は反射してしまい、ヒトの目では反射した光、つまり水面しか見えない。よって水中に入った光をヒトの目では見ることができないので水の中の様子はわからない。ところが水鳥や海鳥が水中の魚をめがけて突進し、見事に魚をくわえて飛び立つ。これは目の仕組みにが違うからだ。一般的に鳥類の目はヒトの目よりも高度に進化しており、その一つの機能が偏光板を持っていることだ。これにより水面で反射した光(ヒトの目には水面が白く見えてしまう光)をカットすることができる。カットすると水面は見えず、水中で反射した光だけを見ることができるので、鳥は勘ではなく水中の魚がちゃんと見えているのだ。
液晶パネルはこの偏光板を利用して画像を映し出している。ヒトの目には偏光板がないので液晶パネルに偏光フィルターを取り付けてヒトに目に見えるようになっている。よって本品は液晶を利用する限り偏光フィルターは必須のものなので、サングラスでもあり同時に偏光グラスでもあるわけだ。
本品に付属する偏光確認シートを通常のカメラで撮影しても、人が釣り糸を垂らしているようにしか見えない。

しかし本品のレンズを通して撮影すると、釣り人が魚を釣り上げている様子が写る。これが偏光フィルターだ。作例は後述する。
そして前述した液晶で調光するメリットとして、応答性が良いこととUVカットガラスでも反応することが挙げられる。従来から光の強さに応じて色が付く光学サングラスは存在した。しかしこれは紫外線に反応する仕組みで、かつ反応性が悪い(色が変わるのが遅い)ので、直射日光に向かって運転していてトンネルに入っても暗いまま運転することになる。しかも最近の自動車の窓ガラスはUVカットガラスなので紫外線はカットされている。したがって紫外線に反応するサングラスではまぶしくても色が変わらないという事態に陥ってしまう。屋外であれば問題はないが、自動車の運転では困ったことになる。本品は純粋に光量をセンサーで検出するので紫外線の有無とは無関係だ。サングラスを通った後の光はちゃんとUVカットされているので、目にも安心ということだ。

スマホカメラのND/PLフィルターとして活用!

では本品をスマホカメラのレンズにかざして実験した。写真はノーマルの状態で、直に直射日光方向を撮影している。なお、目で直接太陽を見るのもダメだが、カメラのイメージセンサーも最悪の場合焼損してしまうので、あくまでも実験記事としてご覧いただき安易に真似はしないでいただきたい。
予想されたことだが、さすがに直射日光だと周辺が白飛びして空の様子はわからない。

同じ条件で本品のレンズをスマホカメラのレンズ前にかざして撮影したのがこの写真だ。この状態では液晶がNDフィルター(減光フィルター)のように働き、太陽光に向けても雲の様子や周囲の風景も再現可能だ。あくまでも簡易的な使用方法だが、調光が自動なので自動可変NDフィルターとしての使用が可能だ。屋外でのスマホ撮影時にはちょっとサングラスを外して、スマホにかけてあげよう。

続いて、親水公園で小川を撮影した。写真はノーマルの状態で写しても、水面の反射だけが写り水中の様子はわからない。これでは鳥は魚を捕れない。

次に本品をかざして撮影すると川底までが見渡せるので、魚は捕れそうだ。偏光方向を変えるにはサングラスを回転させればよいので、好みの像を結ぶまで回転させて調整するとよい。この場合は簡易的な偏光フィルター(PLフィルター)として機能する。一眼レフにはレンズの大きさから使用することは困難だが、スマホであれば特殊な撮影も可能だ。
本来はアスリート向けの製品を開発している同社なので、デザインも色もスポーツ向けのものが多い。それだけスタイリッシュであるので普段使いにも違和感がない。また水辺だけではなく山や森のような自然の中で使えば本来の防眩機能だけではなく、偏光により見え方が少し変わる。もしかしたら鳥や昆虫の見え方に近いのかもしれず、それにより面白い写真を撮ることも可能だ。安全な運転や屋外での活動とともに、撮影の楽しさも同時に享受できるハイテクサングラスだ。

※写真はすべて記者撮影

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

Twitter: jj6tje

Facebook: jj6tje