警察庁が動いた!元暴組員の銀行口座開設支援で社会復帰を後押しした日

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

元ヤクザというのは非常に生きづらく、ヤクザを辞めたとしても《元暴5年条項》という暴排条例政策のおかげで、ごく当たり前の生活ができないというのです。

この《元暴5年条項》というものは、暴力団と縁を切ったとしても、おおむねの5年間は暴力団関係者に区分けされ、現役組員と同じく銀行口座を開設することや自分名義で家は借りられない、携帯電話の契約はできない、クレジットカードをつくることはできないというもの。

働くために、元暴力団員歴を隠して履歴書をつくれば、虚偽記載になる可能性まであるわけです。今の企業体質というのは、社会復帰のハードルが高すぎるということなんですね。

しかし、この5年縛りの元暴力団員の口座開設不可を警察庁が柔軟に対応するよう、金融機関に要請したというニュースが飛び込んできました。なんのために、どのように、どう要請されたのか、なぜこのような動きを警察庁は見せたのか、このことについて、「暴力団博士」の異名を持つ龍谷大学犯罪学センター嘱託研究員(治療法学)、ノンフィクション作家の廣末登先生にお話を伺いました。

暴力組織と決別する元組員の社会復帰を後押し

丸野(以下、丸)「なぜ、今年の2月1日になって警察庁が元組員の貯金口座開設を支援するようになったのでしょうか?」

廣末先生「全国の都道府県の警察に指示、さらに同じ日に金融庁にも要請して、金融機関への周知の徹底をお願いしたようですね。再犯防止推進計画に基づき、再犯を防止することと暴力組織からの離脱で暴力団を弱体化させるというのが狙いのようです。例えば、元暴力団員の受け入れる協賛企業が増えてきている。それだけ、元暴力団員や元受刑者なんかの社会復帰を応援する機運が高まっているわけです」

丸「なかなか社会復帰というのは難しいと思いますので、応援にはいい機運の高まりですね」

廣末先生「そうですね。福岡県内で元組員の受け入れを認めている協賛企業は、昨年時点で400社に迫る勢いです。県警の社会復帰アドバイザーを先頭に、県警が一丸となって協賛企業を開拓した結果、受け入れ企業が増えています。実際、全国の協賛企業への就労者、その半分は福岡県です。実際に元暴力団員を受け入れた企業は約70社ほど。福岡県警は“社会復帰を促進する環境は、市民の安心・安全につながる”と思っているのでしょう。実際に、昨年の秋に、離脱者のアフターケアが必要であると、メッセージを出しています。今後、さらにこの制度が周知されることを願ってやみません」

福岡式の支援が全国へ広がることを望む

丸「いいこと尽くめの対策じゃないですか。暴力団から離脱する人も急増したと聞いているし、弱体化の一途をたどっているわけですね」

廣末先生「ええ。確かにこの福岡式の支援が全国的に拡大してくれることを望みます。2016年に導入されたこの制度なんですが、1人あたり最大72万円の雇用給付金がもらえます。さらに、雇った元組員が仕事で問題を起こした場合、お見舞金として最大200万円まで支給されます。非常にいい制度ですね

丸「なるほど」

廣末先生「でも、受け入れ先のほとんどは建設業などの力仕事の職種が多い。高齢化したり、身体的に重労働が出来ない元暴力団員もいますから、彼らが希望している職種とのマッチングが難しいなど、課題もあります。もう少し、協賛企業の職種の幅が拡がればと思いますね。社会復帰するための資金がない、労働経験が少ない、運転免許もないという元組員も一定数いますので、更に、協賛企業の輪が拡がって欲しいものです」

丸「他の都道府県はどうなっているんですか?」

廣末先生「長崎県では半年のあいだ、1ヵ月で最大10万円の給付金を支給しています

警察が口座開設に同行も……

丸「今回の金融機関への支援の申し出というのは?」

廣末先生「2017年12月閣議決定された再犯防止推進計画に基づき、関係する機関や団体と連携、元暴力団組員の社会復帰を推進しているわけです。暴力団離脱者が給与受け取りの銀行口座開設の申し込みを行ったところ、以前暴力団に所属していたことを理由に、口座開設を謝絶される事例があったわけですね

丸「それはなぜ?」

廣末先生「金融機関は口座開設申し込みがあったとき、警察庁のデータベースに加えて、銀行独自の《反社データベース》と照会し、そこにヒットした場合、反社登録があるものに関しては契約を断られることがあるわけです。どの人間と契約をするかは、銀行などの金融機関側の自由、いわゆる契約自由の原則がありますからね。しかし、この銀行口座がないと自分が就きたいと考えている職を選ぶことはできない。しかも、給与振り込みだけでなく、家賃の引き落とし、携帯電話なんかの契約ができないわけですね。それでは、社会復帰は程遠く、絶望しかありません。結果、再び犯罪の道を選択するという悪循環に陥る可能性も否めない。このようなことがないように、元暴力団員の預貯金口座開設に向けた支援をはじめたわけです」

丸「そこで警察庁が動いたと……」

廣末先生「そうです。口座開設の支援策を決定して、協賛企業に就職した元組員と面談。口座開設の要件は4つ。暴力団から離脱していること、警察又は都道府県暴追センター(暴力追放運動推進センター)の支援で協賛企業に就労している事実、警察の取り組みに離脱者と協賛企業が同意している、支援が妥当ではない事情がないことというものです」

丸「なるほど」

廣末先生「これは、拙著の『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました』のケースですが、暴力団と決別したと確認した後、警察官と複数回の面談した後、彼らが口座開設の申し込みに同行していました。そして、口座を不正利用しない旨の念書に署名捺印するという流れでした。協賛企業に就労した離脱者も、おそらく、同様のプロセスを経て口座が開設されるのではないかと推測します」

実際に口座が作れなかった元組員の本音

前述した協力雇用主の企業である某企業に在籍する元暴力団組員・Yさん(27歳/仮名)は、組織から足抜けしたあと、銀行に口座開設を行ったひとりです。

その銀行ではなんの問題もなく普通に口座を開設できたといいます。しかし、後日。彼の元に電話が入りました。

Yさん「通帳を返してくださいと言われました。“返してもらえないのであれば、口座を止めます。通帳を返してもらえなくても口座を止めることはできるんです”と突っぱねられました。いい歳をして、銀行口座すら持っていないと不審がられます。それが世間の実情なんです。仕方がないので、携帯電話は親名義、今の賃貸マンションは妻で契約、妻の口座から光熱費も引き落としてもらう感じですね」

丸「今回、警察庁が試みた金融機関の口座開設後押しについて、どう思われますか?

Yさん「警察が本腰でやってくれたことがいち早く浸透することを願います。未だに更生した暴力団離脱者のことを“どうせまだつながりがあるんでしょ?”と思っている金融機関も多い。口座を持たせれば、また犯罪に使われるのでは……と心配しているわけですから……」

廣末先生は最後にこう締めくくった。

組織とは縁が切れているという基準を示して、更生を温かく見守ってほしいんです。彼らは並々ならぬ努力をして、一般社会で生まれ変わろうと思っているんですから……。足抜けしようとしている組員に、暴力団組織は“辞めたとしても口座すらも作れないぞ”と脅して、組織離脱を防ぐパターンもあります。せっかく生まれ変わろうと意気込んでいるのに、元の木阿弥になりかねない。更生努力をしている彼らに寄り添ってずっと応援していきたいと考えています」と。

この素晴らしい警察庁の取り組みと後押し。あなたのそばに更生を誓った元組員がいたとすれば、あなたは彼らにどんな言葉をかけますか?

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』やその他有名週刊誌で執筆、『プレジデントオンライン』の待機中。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』のポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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