「ハーヴェイ・カイテルと一緒に仕事ができるのにノーという人はいない」 映画『ギャング・オブ・アメリカ』監督、レジェンド俳優の魅力を語る

  by ときたたかし  Tags :  

全米最大の犯罪組織を率い、アメリカの暗黒街を支配した男の人生を描くクライム・サスペンス・アクション大作『ギャング・オブ・アメリカ』が公開になります。禁酒法時代から戦後まで、アメリカの暗黒街を牛耳った伝説のギャング、マイヤー・ランスキーの凄惨な人生を、年老いたランスキー(ハーヴェイ・カイテル)に作家のストーン(サム・ワーシントン)がインタビューを行う形式で追い、各時代を往来しながら20世紀のアメリカ裏面史そのものを描き出します。

その日本公開を前に本作の監督・脚本を手掛けたエタン・ロッカウェイ監督にインタビュー。監督の父親であるロバート・ロッカウェイは、実際に生前のランスキーにインタビューを行っており、サム・ワーシントンが演じる作家ストーンのモデルでもあります。名優ハーヴェイ・カイテルとの仕事など、いくつかのお話をうかがいました。

■公式サイト:https://gang-of-america.com/ [リンク]

●マイヤー・ランスキーを演じるハーヴェイ・カイテルの存在感が凄まじいものがありましたが、一緒に事をされた感想はいかがですか?

素晴らしい俳優ということは間違いないです。アクターズ・スタジオ出身のスターであって、アル・パチーノなどとメソッド演技法を学んだ俳優です。素晴らしい映画に出演していますし、ある意味、メンターというかティーチャーといった存在であると思っています。彼は、マイヤー・ランスキーというキャラクターと似たところもあります。ユダヤ教のバックグラウンドを持ち、移民であり、タフなニューヨークの地域で育っている。そして海軍にも所属していたなど、とても強く、似ている印象があります。

実際のランスキーも非常にタフであり、移民でもあり、彼は裏社会へ行ってしまい、ハーヴェイの場合は俳優、アーティストとして成熟していくという違いはあるけれど、タフなところは共通していると思います。ハーヴェイのような優秀な俳優と一緒に仕事ができるというチャンスが訪れれば、ノーと言う人はいないでしょう。

●制作当初、本作を監督・映画化するにあたり、まず考えたことは何でしょうか?

ダークサイドな面という点はもちろん理解できるのですが、少年時代からどういった環境で育ってきたかが大きく起因するということはあると思いました。リサーチの段階から感じていたことは、人々は置かれる状況によって、何らかの影響を受けるということ。犯罪者やギャングスターになるタイプには2つあると思うのですが、1つは共感性がない人。サイコパスやソシオパスと呼ばれる人たちで、殺戮や殺人といった暴力性を好むタイプ。もう1つのタイプは選択肢がなく、その状況に陥るしかなかったタイプがあると思います。そして、人によって善と悪の感覚は違いますが、ランスキーの場合はその間、グレーの部分にいた人間だと思いました。

●お父様のロバート・ロッカウェイさんは、どういう印象を持たれていたのでしょうか?

父は80歳の彼に会ったわけですが、悪い人間というよりは年老いた人間、自分の祖父に会っているような感じがしたそうなんです。優し気な年老いた人間という印象を覚え、ギャングスター的な印象は抱かなかったそうです。ただ、同時代の仲間の話を聞いていくにつれて、アンダーワールドの世界の彼は、まったく逆と言っていいほどのイメージだったと思うんです。なので、視点をどういった形で持つかが重要だと思います。自分の場合は客観性をどういう風に持てるか、というところを意識していました。

●監督個人の話になりますが、今後映画監督として、どういうテーマで作品を撮りたいですか?

映画を撮り終えて完成して満足していますが、個人的にはSFやファンタジーに興味があるので、今後は挑戦していきたいと思います。自分はずっとホラー映画のファンで、最初の映画もホラー映画だったわけですが、ジャンルとしてとても面白く大好きなので、それをちゃんとやればいい映画になるという確信は持っています。今回の映画はとてもパーソナルなプロジェクトだったので、父のリサーチということも含めて、父へのオマージュという部分もあったと思います。なので、今後はそこから自分の新しい世界を作るような映画を意識してつくっていければと思っています。

●作品の日本公開を受け、日本の映画ファンには何を感じ取ってほしいでしょうか?

とてもエキサイティングだと思っています。日本には行ったことがないのですが、人々や文化、映画などに魅力を感じています。ある年老いていく人間がいて、その人生の終焉を迎えるにあたって、自身のモラル感とか、自身が歩んできた歴史とかを自問自答する状況が出てくる、それについて語っています。それについて自分自身が最終的にどう対処していくかが、肝になってくると思います。すべてのどの観客もそうだと思いますが、人間として抱える問題や関心事が描かれていると思います。そして描かれるキャラクターについても、日本であろうが、世界のどの観客だろうが、同じように関心を持ってもらえるテーマを持っていると思っています。

■ストーリー

1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーンは、伝説的マフィアであるマイヤー・ランスキーの伝記を書くことになる。出された条件は、『俺が生きているうちは、誰にも読ませるな』。そして、ロング・インタビューがはじまり、ランスキーは自らの人生を赤裸々に語りはじめる。それは、半世紀以上におよぶ、ギャングたちの壮絶な抗争の記録だった……。

Photographer Nir Arieli

映画『ギャング・オブ・アメリカ』は、2022年2月4日(金)より、全国ロードショー

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo