追憶の神器(レガリア)弐・異界(リュウグウ)よりの帰還

episode.19 追憶の神器(レガリア)
弐・異界(リュウグウ)よりの帰還

日神ジャスティオージ外伝~Secret of Birth~
(連載小説)

(イラスト・小林ユキト)※イメージイラストはアマテライザーを持ったテルヒコとユタカ

(小説版キャッチコピー)

「灼熱のなか真実が蘇るー!」

神代~弥生、平安、戦国、令和と繰り広げられる

魂ゆさぶる伝奇スペクタクル、

愛を巡り戦う戦士たちが紡ぐ群像劇(ドラマ)ー。

(あらすじ/邪馬台国の戦火を逃れ残った神秘の鏡、アマテライザーに導かれる記憶を失った青年テルヒコと彼を導く女神ユタカの壮大な歴史の波を駆ける大河アクション小説。台詞後ろ=( )キャラ名)

登場人物(テルヒコ/本作の主人公。記憶を失った青年。その正体は滅びた邪馬台国のかつての王子。)

(ユタカ/鏡を通してテルヒコを導く謎に包まれた女神。かつての卑弥呼の後継者。)

(石上雅也/魔界に魂を売りテルヒコと彼の祖父大善らと対立するライバル。九頭竜と契約し後に令和の世において冥王イブキとなる。)

画像・戦国時代、耳川の合戦にて初期創聖者三人。(テルヒコ・シマコ・サクヤ)

中央/テルヒコ
(記憶を失い戦国の世を彷徨う王子テルヒコの創聖した・スサノヲアームド形態。自ら戦う理由、愛する者たちの記憶一切を忘れており闇を討つその本能のまま修羅の如く闘い続ける。)

右側/シマコ
(邪馬台国時代のテルヒコの親友シマコこと浦島太郎が創聖した水神ワダツミ。テルヒコからかつて神器を渡されており海底の龍宮で特殊能力を身に着けた。)

左側/サクヤ
(神器継承者として宮崎を代々守護してきたコノハナサクヤヒメの後裔、姫神サクヤ。公私ともに使命に生きサクヤを名乗る。蔦のような重火器、カグツチを愛用するスナイパー。)

(※本作品はフィクションです。本小説に登場する人物および団体事件いっさいは実際に存在するいかなる人物および団体とも関係はありません。)

(※以下エピソード本文)

耳川の戦いが起こるその1か月前。

浦の島子とよばれていたその男(シマコ)は

耳川周辺にある古社、比木神社境内までやってきていた。

一時定住していた遠い丹波国から船で日向國に来て数年、シマコはこの地において

近隣の山に居を構え住み、落ち人さながら釣り人のような格好で暮らしていた。
(※合戦場周辺の地域に浦島太郎漂着伝説と、浦島を神として祀る神社がある。)

異界(竜宮)から帰還した彼の眼は、どこか虚ろであった。

千年もはるか古代、滅亡した愛する地。その空白を埋めるようにシマコが紛れ込んだこことは異なる世の果て。

数百年というときの中、神器(剣)により生き延びた彼の生命。

長い夢から覚めたその時、彼を知る親類縁者の影は無かった。

戦い変わりゆく日々を見つめ、日々からの逃避を図るため暮らす毎日。

自らの住居まで入り込んでくる血の香りに彼はほとほと嫌気がさしていた。

「神器の一つ草薙(くさなぎ)は、ここの神スサノヲの剣だ・・・。(謎の男)」

シマコは首を傾げ、一見その場違いな雰囲気の男にこう返した。

「・・・だれか知らねえがあんた、大友の宣教師か?(シマコ)」

高い鼻。
長いブロンドヘアーに髭面、白い肌にブルーの瞳。ポルトガル人か英諸国のどの国か・・・。

戦国の世において国内では見なかった容姿の人種。

シマコは男の着ている服装からして、おそらくここ最近郷内を騒がせている大友家の関係者だろうと考えた。

※大友宗蘭(おおともそうらん)はキリシタン大名だったため、異国の宣教師たちを積極的に受け入れていた。
(当時大友宗蘭は延岡は無鹿に居を置いた)

「まあ、・・・(一瞬下をうつむき含み笑いし)・・・そんなところだ。(謎の男)」

涼しげな鎮守の森の空気、ユーモラスな狛犬の顔。

この神社は古く日奉神社とも縁があるのちの秋月藩が奉じた神で、

出雲の大蛇退治伝説で有名な、スサノヲ・国譲り神話で有名なその子大国主(オオナムチ)、異国百済の王子など

出雲族すなわち国津神(クニツカミ)を祀る聖地であった。

「・・・・キミは釣り人かね、現地のモノというわけではなさそうだ。
・・・心ここにあらずといった目をしている。(謎の男)」

「・・・ここが居心地がいいのさ。ちょっとオイラも異国で派手に遊びすぎたからな・・・。(シマコ)」

「異国か。朝鮮か、それとも・・・(謎の男)」

「ここだと、面倒ごとに巻き込まれねえからな。
・・・思えば懐かしいよ。みんないなくなっちまった。
乙姫様に愛されて。遊んで暮らすうちにみんな死んじまったのさ・・・・。
それからは全く面白いことも、何もねえ。(シマコ)」

「それにしてもお宅もめずらしい。
神社で八百万の神の悪口か?宣教ならよそでやればいい。(シマコ)」

「たいしたことではない。恥ずかしい話なんだが・・
実は、その宣教もほうり出してここにはやってきている。(自虐的に笑う謎の男)」

「それほど惹かれる場所だ・・・それにここでは、君のいう通り騒がしいこともない。(謎の男)」

「だが、ここも近いうちに戦場(いくさば)になるぜ。(シマコ)」

「剣を振るうものは、剣によって滅ぶ。(謎の男)」
※聖書にある言葉

「矛盾してんなあ。戦好きな大友家が、本末転倒ってもんだ。(シマコ)」

「戦が、邪悪な悪魔の願いによるものだとしたら…?(謎の男)」

「?!(シマコ)」

「それを討ち祓う・・・退魔の剣というのもある。(謎の男)」

「この神社の神は、速須佐之男命(ハヤスサノヲノミコト)。彼は天照大神の弟だ。(謎の男)」

「神話において岩戸隠れの原因を作る乱暴者・・・拷問の末高天原を追放され、
出雲にて八岐大蛇を成敗した英雄の祖だ。(謎の男)」

その当時戦国の世において、織田信長をはじめとして武勇の神スサノヲ、八幡神などを祭る社に参拝し、社殿造営などに援助を惜しまない武将たちは多かった。

その理由の多くは武勇の戦勝祈願にあやかったものであった。

「オレもそんな話くらいは知っている。あの暴れん坊の弟だろう・・・。(シマコ)」

「日本で詩歌をはじめて詠んだアーティスト(芸術家)でもある。
・・・独自の感受性を持ち、時として豪胆に戦う素戔嗚(スサノオ)・・・。
だれも本質をとらえることができぬトリックスター(異端児)だ。(謎の男)」

「世界各地にそんな英雄伝は多い・・・。ギリシャのヘラクレスも。(謎の男)」

「なるほどね、スサノヲが好きなんだな。(シマコ)」

「魔を討つべく自ら鬼神となる。その罪もすべてを背負って世の犠牲となる・・・。
日本武尊も・・・・、その授かった強すぎる力故に苦悩し、時には誤解され、非業の死を遂げる。(謎の男)」

「虐げられた者から見れば彼は英雄(ヒーロー)であり、彼を疎む者からすれば、災いで暴風だ。(謎の男)」

「聖者(セイント)にして狂戦士(バーサーカー)・・・。
そこに惹かれているのかもな。(謎の男)」

「デウスを信ずる大友家が、こんな所に来ていいのかい?(シマコ)」

「イカれた大将だって聞いたが。(シマコ)」

「確かにクレイジーだ。(謎の男)」

この時期大友宗蘭率いる大友家による、神社仏閣の取り壊し、破壊は徹底的なものであった。

もともと大分(豊後)に本拠を持っていた大友家。宗蘭はこの地に土地勘ある者たちを総動員し

日向国の神社など、かつて聖地といわれた場所の数々を打ちこわし、
神像仏像の類は遺棄し、逆らう寺院は兵力を挙げ潰すという

平和な理想郷(キリシタンの王国)建設の手段としてはやりすぎともいえる侵攻を始めていた。

そもそもこの宗蘭(そうらん)という男、キリスト教に洗礼を受ける前から社寺に対する攻撃を行っていた。

当時の宣教師たちの日誌を見ても、比較的温和な性格が垣間見えると共に、生前かれの悪逆非道、

部下の妻を奪うなどの暴君ぶりを伝える逸話も数知れなかった。
(※後世の伝承において真偽不明なものもある)

「とうとう大将のせいで私も締め出されるようだな。これはまいったな、HAHAHA(ははは)・・・(謎の男)」

「好きにすればいいさ・・・。(シマコ)」

「オオトモ・・・私も以前からあの男の動きは見かねている。(謎の男)」

「この国に伝承される、三つの神器・・・。皇室に伝わる三種の神器(八咫鏡・草薙剣・八尺瓊勾玉)のプロトタイプ。
三神器の言い伝えをキミは知っているか。(謎の男)」

「・・・・!(シマコ)」

突如としてその宣教師らしき謎のブロンドの男から出た言葉に、シマコの目は完全に点となった。

「オオトモはその”レガリア(王権を象徴する神器)”をも滅ぼす気だ。(謎の男)」

「自ら聖地(日向)の文化を抹消する、それが大友の狙いだ。自分こそが日向国の大王に、神にふさわしいとでも思っているのだろう。(謎の男)」

「キミが持つ青銅剣も、古代王権を示す宝、隠されたレガリアの一つだ。
神器は世界各地にある。(謎の男)」

「あんた、本当に大友の宣教師なのか・・・。こいつ(剣)のことも。(シマコ)」

「お前たち・・・!(火野琴美)」
※火野琴美=卑弥呼の偽名

「私の可愛い部下に何の用だ・・・。
ここ(日向国)は私のテリトリーだ。(火野)」

突如として境内に、青年の前に、その女火野琴美が現れていた。

「・・・奴(オオトモ)の暴走を止めてほしい。伝えたいことはただそれだけだ。(謎の男)」

赤と黒の入り交じった不思議な色の靡く髪、

異界(竜宮)より帰還したシマコのまえにある日忽然と現れた、妙齢の女ー。

火野琴美(卑弥呼)がシマコの前に現れて、1年。

「チクショ~まいったぜ、俺はこうも・・・行く先々で好かれちまうんだなあ。(シマコ)」

「相変わらず憎めぬやつだ。(火野)」

「浦のシマコよ・・・・。久しいな・・・肉体の調子はどうだ。(火野)」

「何十年ぶりだから・・・実感わかねえや。(シマコ)」

「お前に一つ頼みがある。・・・身柄を隠し、大友と敵対する島津の傘下に下ってもらいたい。(火野)」

「俺が島津軍にか・・・。(シマコ)」

「それに・・・・今現在、この地にテルヒコが帰ってきている。(火野)」

「ほんとかよ・・・・・(シマコ)」

火野の言葉を聞いた瞬間(とき)、シマコの表情が変わっていた。

「・・・・・あいつが・・・。(シマコ)」

「この先も、はるか先も。血は流れ続ける・・・。(二人の前から去ってゆく謎の男)」

二人の前から去る男の歩いた道には、長く引きずるような血の跡が続いていた。

「あの男・・・・・・(シマコ)」

「(男の掌の痣)・・・あれは・・・(火野)」

「シマコよ、あの者は宣教師ではない。(火野)」

「?!(シマコ)」

「流れ続ける血の道、(火野)」

「ヴィア・ドロローサか。キリシタン大名、大友宗蘭・・・実にかなしい男よ。(火野)」

※ヴィア・ドロローサ=聖人が磔にされ十字架を背負い歩いた道。

去りゆく男を見つめる火野のまなざしは、どこかはるか遠い光景を視ているようにシマコには見えた。

「島津って言えば、たしか薩摩隼人の軍だよな・・・。(シマコ)」

「参加も一時的なものだ。時が来ればお前たちを戦線から離脱させる。(火野)」

「私が欲しいのは大友の向こう脛を断つ精鋭部隊・・・。御上(おんかみ)は相応の者を呼んである。
それが一時(いっとき)の水先案内をしてくれるだろう。(火野)」
※御上=リーダー

「はいよ、・・・。流石に女王の頼みとあらば断われねえよ。(シマコ)」

「今回来たのは、お前を日向の国司であった日下部家と逢わせるためだ。(火野)」

※国司=今でいう県知事のような立ち位置。政治、神社の信仰など各地を支配する実力者。

「日下部(くさかべ)・・・ちょっと待てよ、そりゃ、皇族(おうぞく)じゃないか。(シマコ)」

「古の日向を統べたきっての土豪だ。阿多族(天孫)サクヤヒメの末裔・・・そこに一人の姫君がいる。」

※阿多一族(薩摩隼人と同じ一族とされる)は宮崎・鹿児島を支配し当時は神官としてもコノハナサクヤヒメの子孫日下部家が古代日向国の中枢を担った。
丹波では、浦島子は日下部氏族の先祖といわれる。

「ついに、”この日”が来たのだ。(火野)」

「おいおい・・・ほんとかよ。(シマコ)」

「そして残念なことだが、テルヒコは、イブキの影を追っている。奴もまた滅んではいない。(火野)」

「魔王もこの地に来てるのか?!じゃあ姫様も・・・・(シマコ)」

「気をつけろ・・・今の大友は人ではない。(火野)」

「この先現れる二人と共にイブキの野望を砕き、魔軍の将となった大友宗蘭を討ち祓うのだ・・・!(火野)」

その言葉を聞き勢いよく走りだしたシマコを、火野は静かに送り出した。

「待ったかいがあったぜ、あのバカ・・・心配させやがって!(シマコ)」

「阿多族の姫君・・・。三つの神器・・・。いいねえ、なかなか俺の胸を熱くさせるじゃないか、ええ?!・・・・・!(シマコ)」

「・・・まってろよォオ~・・・いまいくぜ!(シマコ)」

落ち人のように山に隠れ暮らしていたシマコ、火野から下された密命を受けた彼の胸は高鳴っていた。

「いぃーゃっほォ~~~イ!(シマコ)」

彼は火野の告げた指定の場所、日向国の総社(中枢神社)といわれた都万宮神社を目指し喜々として馬を走らせた。

※都万宮神社(モデル=都万神社)はかつての在国司職、日下部家の神社で桜の神コノハナサクヤヒメを祭る。

(次回へつづく!)

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