<刑務所>受刑者高齢化で認知症急増中!受刑者が語るその「哀しい現実」とは?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

11月に認知症受刑者をテーマにしてドキュメンタリー作品が、《第41回地方の時代映像祭》でグランプリを受賞しました。その作品が、岡山放送が制作をした『忘れてはいけないこと~認知症受刑者が問いかけるもの~』。

この作品は、約400人の受刑者が収容されている岡山刑務所の高齢化問題を取材しているという内容。半数を超える受刑者が、無期懲役で、4人に1人という確率で65歳以上の高齢者になります。

さらに深刻になってくるのが、受刑者が発症した認知症。殺人などの罪で無期懲役になった80代受刑者は、自分の年齢すらわからずに、自分自身なぜこの刑務所に服役しているのがすら思い出すことができないといいます。

この作品は、高齢受刑者が抱える問題と共に刑務所が介護施設化することにより医療費負担が増額していること。また、人の尊厳にかかわってくる認知症問題を目の当たりにする中で、その受刑者の社会復帰と贖罪など、今まさに刑務所が抱えてしまっている問題を事細かに伝えています。

岡山放送のディレクター兼アナウンサーの岸下恵介氏が、昨年に果物の保護ネットを作る高齢受刑者養護工場の取材を機に4ヵ月の間徹底取材をし、刑務所長にも取材交渉を重ねたそうです。グランプリに選定した審査委員長は「自分たちが気づかない塀の中で進んでいる大きな変化を知り、警鐘を鳴らしてくれるドキュメンタリー番組」と評しました。

今回は、そんな認知症の受刑者の介護を刑務作業として行っていた鎌田良一氏(仮名/43歳)に、現在の刑務所内で問題視されている介護の実情を語ってもらいました。

認知症の受刑者数

丸野(以下。丸)「認知症が患者の受刑者がかなり多くて、もうすでに1万人近くになっていると聞いたことがありますね」

鎌田さん「僕の頃の2013年頃で、罹患状況は6,000万人近くだったと思います。これは厚生労働省の調査ですが、やはり加齢によってのことですね。施設内処遇にも介護職員の配置が行われましたから、彼らの指示に従って介護していました。刑事施設への介護職員の配置が進んだために、助かりましたね

丸「ご苦労されましたね

鎌田さん「高齢受刑者は可能な範囲で個別処遇を行っていますし、刑務作業もできない。移動や入浴等の場合は、他の受刑者と分けて別に行動、高齢受刑者のみの工場を設け、紙細工などの軽作業など刑務作業時間の短縮も行っていました。さらに、車いすやつえの生活補助具まで貸し出していましたよ。さすがは官ですよね」

丸「設備面や建物なんかの配慮もありますか?」

鎌田さん「高齢受刑者は転倒しやすいので、職員の介助が必要になっています。バリアフリーを推進して、全所は過ごしやすくなってます。一般の受刑者が使えないエアコンが整備されている独居房もありますし、過ごしやすいですよ

医療施設移送に関しては逃走のおそれがあるために余計に経費がかかる

丸「医療施設移送なんかもあるんですか?」

鎌田さん「それはありますね。ですが、逃走の恐れがあるために、治療や手術を行うときには保安要員や護送要員がついて回ります。逃げられるわけはないんですが……

丸「苦労することなどはありますか?」

鎌田さん「亡くなった奥さんや捨てられた家族の名前を叫んで泣かれることですね。それに食事も咀嚼や嚥下が難しい受刑者もいるので主食が柔らかくなっている軟食や刻んだ食事を食べさせないといけません。あとは、排便ですね。紙おむつは刑務所側から支給されたものなので、気を遣います。認知症トレーニングなる紙折りやゴムを使ったものもありますが、意味があるのかないのかわかりません」

老いが認知症につながる

丸「お話をお聞きしていると、はたして大丈夫なのかと疑問に思ってしまうのですが……」

鎌田さん「《認知症》というのは老いです。精神機能が減退・消失することなので、社会生活や日常生活を営めない状態という状態なんですね。記憶障害も起きて、新しい物事が記憶できず、昨日のこともさっきのことも思い出せなくなるわけです。さらに、失語(言葉の意味が理解できない)、失行(やることを忘れてしまう)、見当識障害(時刻や年月、季節、場所、人物)などが思い出せない。そんな人に罪を悔い改めろといっても仕方がない

丸「判断力の障害や感情表現の変化も出てくるようですよね」

鎌田さん「理解力や情報の咀嚼力も失ってしまいます。目の前にいる相手が誰かわからなくなる、話題の内容を失念する、応用が利かない、物事がスムーズに運ばない、感情表現が変化する、思いがけない感情の反応を示すなどが多くなりますね

認知症罹患者に受刑能力はあるのか?

丸「彼らに受刑能力はあるのですか?

鎌田さん「《自由刑の執行・停止規定》というのがありますが、恐らくないですね。心神喪失状態だし。検察官の指揮によって回復するまで刑の執行停止は当たり前です。移動や食事、排泄、更衣、入浴、洗面などの日常生活が営めない者は心神喪失者に当たると思います。でも、認知症だから……といって、心神喪失に当たるといえないんですよね」

丸「でも、刑事責任能力はないに等しいですよね」

鎌田さんは最後に筆者の質問を遮った。

鎌田さん「いや、今出してあげたらそっちの方が可哀想じゃないですか。どうやって生きていくんですか?

そのとき、人が償う罪の重さをひしひしと感じました。やられた方はもちろん最悪です。ですが、やった方の罪をどこに持っていけばいいのかと……。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』やその他有名週刊誌で執筆、『プレジデントオンライン』の待機中。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』のポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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