井浦新「目的地に無駄なく行くやり方ができない」 引く手あまたの人気俳優が明かす、不器用だけれど今を大切にする生き方

  by ときたたかし  Tags :  

映画を中心にドラマやナレーションなど幅広く活躍する井浦新さんが、現在公開中の劇場アニメ『神在月のこども』に出演しました。“この島国の根”と書かれる島根・出雲の“神在月”を扱い、出雲へ駆ける少女の旅を描くロードムービーの本作で、井浦さんは主人公カンナの父親・葉山典正役を好演しています。思春期の娘を持つ不器用な父親役や作品についての話のほか、50代を目前に俳優としての想いもうかがいました。

■公式サイト:https://kamiari-kodomo.jp/ [リンク]

■ストーリー(公式サイトより引用)

少女の名は、カンナ。
母を亡くし、大好きだった”走ること”と
向き合えなくなったこども。
そんな少女が、在る月、
絶望の淵に母の形見に触れたことで、
歯車が廻りはじめる。
現れたのは神の使いの、うさぎ。
出雲までの旅にカンナを誘う。
少女は問う
「本当に、お母さんに会えるの?」
白兎は答える
「ご縁が、あれば。」
行く手を阻むのは、鬼の子孫、夜叉。
行く先で出あうのは、大小様々な八百万の神々。
神無月と書き、全国から神々が姿を消す月を
神在月と呼び、神々を迎えてまつる神話の地。
島根・出雲、この島国の根と読む場所へ、
自分を信じて駆ける少女のものがたり。

●本作はロードムービーとしての側面もあるので、日本の原風景、その土地の描写も素晴らしいですよね。

主人公のカンナが立ち寄っていく場所は、すべて神話にゆかりがあるんです。出雲だけでなく諏訪にしても、古から意味のある場所であり、僕たちはその上に住まわしてもらっていると思うんです。個人的に諏訪も大事な場所だと思っていて、神話を紐解いていくと出雲とのつながりもある諏訪をちゃんと描いているので、観ていて感動しました。この作品ではカンナの成長と神話の物語、そして日本の原風景をこの作品ではしっかり描いているところが見どころだなと思っています。

●しかも映像が美しくて、見入ってしまいますよね。

風景の描写が素敵ですよね。どこか懐かしい感じのタッチですが、昔の描き方ではないんです。今の技術で緻密に、繊細に風景描写を描いていて、観ていて楽しいんです。目が喜ぶというか、そういう風景描写が素敵だなと思いました。

●葉山典正役役は主人公カンナの父親ですが、今回の作品は、どういう想いで参加されましたか?

この作品は、神話の世界を軸にし、カンナが走りながら、自分と向き合って成長していく物語でもあります。父と娘の親子の関係、思春期の娘を持っている父ならではの距離感がしっかり見えるように意識しました。そして、父と娘だけでの生活の葛藤、心のすれ違いがしっかりと描かれていれば、カンナが走り出した後のパートが豊かになるだろうと。そのためにしっかり演じようと思っていました。

●そこはとてもリアルでしたね。共感する人も少なくないかなと思いました。

思春期は、本当に言葉を選ばないといけないですよね。気軽にかけた言葉で傷つけてしまうかもしれない。そういうことを考えるとお父さんはかける言葉がなくなってしまうかもしれません。僕が演じた典正は常に温かく見守っているが、不器用なお父さんでもあるので、器用にカンナと接するタイプではないです。不器用さは世のお父さんと通じるものがあるのかなと思いますね。

●今回、不器用なお父さんを表現されましたが、井浦さんご自身は俳優、声優、ジャンルとしてもコメディからシリアスなものまで、俳優活動を約20年のキャリアでやられていますが、今後さらに伸ばしたいところなどありますか?

自分自身のことは、器用に仕事ができるタイプではないと思っているので、一本一本の作品を常に真剣勝負でやっています。たまたま20年以上続けさせてもらえていて、振り返ってみるといろいろな役をいただき、器用に見えているのかもしれません。自分では不器用だからこそ不器用な向き合い方しかできないので、もっと芝居が上手くなりたいなとずっと思っています。撮影によっては落ち込むこともあり、その繰り返しですね。

●50代の自分について考えることはありますか?

もちろん考えます。50代に何をしたいか考えることも、ビジョンを持つことも大事だと思います。ですが大事なのは今だと思うんですよね。今何をするかが、自ずと50代にも関係していくはずなんです。今の積み重ねが、いつの間にか未来の自分につながっていくと思います。

僕は不器用なほうなので、ビジョンを持ってちゃんと段取りして、目的地に無駄なく行くやり方ができないんです。最短距離を導き出せばスマートに行けると思いますが、僕はあんまり向いていないんです(笑)。けっこう泥臭い人生で、遠回りしがち、時間もかかる。ですが、その積み重ねが47歳の今の自分が立っている場所でもある。50代になった時にはこういうことをやっていたいなと夢はありますが、50代に向けて今限られた時間どうするか、そこに重きをおきますね。今やらないと、目標に向かっていけないような気がしています。

■タイトル:神在月のこども
■公開日:公開中
■コピーライト:(C) 2021 映画「神在月のこども」製作御縁会
■配給:イオンエンターテイメント

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo