「奈良の総生産10%底上げ」計画に思うこと

  by 飯島麻夫  Tags :  

< 薬師寺東塔 「凍れる音楽」(奈良市、西ノ京町 著者撮影/NikonD200)>

なんでも奈良を地盤とする地方銀行である南都銀行は奈良県の総生産を10年で一割増とする経営計画を持っているとか。一塊の地方銀行が「奈良県の総生産」を云々というのも変な気もするが、①地方銀行全体が本業で業界再編の危機にあること、と②行政が何もしないこと、できないでいることに業を煮やしている…おそらくはそんなところだろう。

確かにあれほど観光資源豊富でありながら奈良は観光に今ひとつ本気でないような印象を受ける。東大寺、奈良公園、興福寺、薬師寺あたりなら修学旅行の定番コースでもあり、大人数でも受け入れられるキャパシティはすでに持っていると思う。

<交通インフラ>
橿原神宮近辺や明日香、さらに吉野山、桜井他の山奥の寺々となるともうアクセスが容易ではない。せいぜい8×16kmに京都に比べ、奈良は広すぎるし田舎なのだ。一度奈良駅についてから「浄瑠璃寺に行こう!」と思いついたことがあるが、なんとバスが二時間に一本程度しかなくて結局諦めざるを得なかったこともある。

<宿泊先>
奈良駅から橿原神宮までだけでも電車で一時間はかかるので、最近は橿原神宮あたりで宿を探すことが多くなったが、ほとんど老舗のホテルしかヒットしない。つまり宿泊客を受け入れるキャパが増えていないということだ。

<食事>
京都に輪をかけて美味しいものがないのが奈良だ。奈良漬?素麺?鯖寿司?奈良らしい食べ物と言ってもそもそもロクなものがない。ちょっと奈良駅から郊外へ離れるとどこでもあるような全国チェーン展開している店しかないので、そこで食べてしまうことになるが、大いに旅情をそがれる。
夏の短い間にしか出ないスイカではダメで、なんとか奈良らしい食のスタイルを開発する必要がある。同じ海がない山の県でも長野県には美味しいものが沢山あるのに、なぜ奈良でできないの?という気もする。寺とタイアップして「お腹いっぱい食べられる精進料理」というのはいかが?きっと外国人には受ける。

結局田舎の地方自治体は観光でしか稼げないのが実のところ。わが長野県では行く先々の各市町村で涙ぐましいほど必死になって観光資源の開発・広報に取り組んでいる。奈良の場合観光資源そのものは他県にないユニークなものが腐るほどあるわけで、その気になりさえすれば10年で10%成長ぐらい訳ないことじゃないか?一地方銀行の心意気を買いたい。

「人の10倍考える」を信条に色々とやってます。 元銀行員で現在も金融系のIT開発等に携わるフリーランス。JICA国際協力ボランティア(パプアニューギニア)

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