残92分でも人生はやり直せる! 本国イタリアで大ヒットした映画『ワン・モア・ライフ!』ダニエーレ・ルケッティ監督インタビュー

  by ときたたかし  Tags :  

家族をかえりみず、楽しいことだけを追いかけてきた楽天家の主人公パオロが、初めて直面した人生最大のピンチは“死”。死と直面して大切にするべきものに気づいた男に呆れ、家族の再生に泣く、たった92分でも本気になれば自分すら変えられるテーマが胸を打つハートウォーミングな人生コメディ、映画『ワン・モア・ライフ!』が公開になります。

監督は『ローマ法王になる日まで』(15)のダニエーレ・ルケッティ監督。監督自身も友人に本を贈っていたというほどの原作の大ファンで、その原作者と監督の共同作業により、浮気性で自分勝手なパオロを主人公にしたコメディにチェンジ!計算ミスで延長された人生の92分をリアルタイムで進行させながら、恥ずかしい過去を見つめ直し、家族の愛を取り戻すまでをテンポよくユーモラスに描いて本国イタリアで大ヒットを記録しました。

今回、そのダニエーレ・ルケッティ監督にインタビュー。「イタリア人は罪深い」と辛口を言いながらも、すべてを優しく肯定する温かい目線が伝わるインタビューとなりました!

■公式サイト:https://one-more-life.jp/ [リンク]

■ストーリー

中年男パオロはスクーターで通勤途中、身勝手な運転が仇となり交通事故に遭ってしまう。死の瞬間、脳裏によぎったのは愛する妻と子供たちのこと……。ではなくて、恋人に告げられた深すぎる一言や、客待ちタクシーの列の謎など、取るに足らないことばかり。しかし、そんなことよりも、予想外に短い寿命に納得できないパオロは、天国の入口で「健康のためにスムージーを飲んでいたのに!」と猛抗議。すると、前代未聞の計算ミスが発覚し、92分間だけ寿命が延長され、地上に戻れることに!傷心のパオロは、タイムリミット寸前まで愛する家族と一緒に過ごそうとするが、家族はしらけきっている。来る者拒まずで火遊びを繰り返し、妻に家事と子育てを押し付けてきたしっぺ返しに気づいたパオロは、最期の時が迫る中、家族の絆を取り戻すと一念発起。92分一本勝負の人生やり直しが始まった!

●素晴らしいアイデアの物語ですが、監督も個人的に惹かれていたそうですね?

原作は多くのエピソードが描かれた本で、筋がないものなんですが、それぞれのエピソードがとてもユニークで、その個々のパラグラムから映画でも本を読むのと同じような効果が得られるか?というところに興味がありました。この本では非常に鋭いところを突いているのが特徴なんですけれど、読む人それぞれに好きなエピソードがあって、些細なものから重要なものまで扱っていて、この本はある意味“みんな病気”であるということを分からせてくれる本なんです。小さい事柄からいろんなことを学べる作品です。小さな事柄から大きなスケールの事柄へと移行することができる。それを映画の中でやってみたかったんですけれど、そこに非常に惹かれました。

●「私たちは原作に多くを付け加え、ある古い映画から着想を得た枠組みを作り出しました」とのことですが、古い映画の着想とは具体的に何でしょうか?

エルンスト・ルビッチの『天国は待ってくれる』を参考にしていますが、一つの作品からではなく多くのアメリカ映画や作品に影響されています。自分にとっては、ひとつは主人公が罪悪感を持たずに生きているというのが面白かったですし、それに主人公たちが自分たちの不完全さを許して生きることができるということもありますし、そして2度目の人生を生きることができる、この3つのポイントが自分にとっては面白いところでした。

●パオロ役のピエールフランチェスコ・ディリベルトさんのことを「物語の語り手に相応しい人材であるピフ(※彼の愛称)のような俳優」と絶賛されていましたね。

ピフは監督でもあるし、テレビの司会者でもあって、基本的には役者ではないんですが、その俳優ではないということが大きかったです。そういう意味では、世界の外から来た人間という意味で、そういうものを彼に期待していた。ある意味、アニメの主人公のような雰囲気を彼に持ち込んでほしかった。そういったトーンを求めていました。もう一つには、ピフ自身がパレルモの出身で、パレルモっていう街を選ぶ際にも非常に役に立ちましたし、パレルモの街を非常によく教えてくれて、パレルモは怠け者の街、甘い優しい街で、とても大きな街であって、死も内包する街である、その矛盾する側面を分からせてくれた人物です。

●国民的な方をパオロ役にしたことでもたらされた効果は、何でしょうか?

ピフ自身はこの映画の主人公と全然違い、彼自身は非常に真面目でモラリストなんですけれど、この映画の中ではキャラクターを完璧に演じることができて、しかもパレルモの人間であって、パレルモの人生を謳歌するようなタイプの人間をきっちりと映画の中に持ち込んでくれることができたことです。

●もしも自分が主人公と同じ目にあったら、どうしますか?

もちろんこの映画を作る際に、自分自身に対してした問いなんですが、自分が愛する人たちと会って、一緒に時間を過ごして、子どもたちにも会って、自分がいたんだよと伝えて、もしかすると自分がいないように感じていたかもしれないけれど、自分はちゃんといたんだということを知らせたかった。そして、君たちのことをずっと考えているよ、ということを伝えたかった。この映画のことは今でも考え続けているんですが、人に対して言ったことを自分に対しても言えるかということを考えていて、人に対して愛情とかについて注意することも大切だと思いますし、遊びということも非常に大事だと思うんです。

これはもう何年も前の話しなんですが、ロベルト・ベニーニ監督に会った時に「君はどうやって遊ぶんだい?」と聞かれた時に、「いや、自分で遊ぶなんてことはしないよ」と言ったんですが、その際にベニーニが「いやいや、人生で遊ぶってことは非常に大事なことなんだよ」って言ってくれまして。それが頭を離れないんですが、自分が唯一している遊びは映画を作ることなんです。非常にリスクを伴うことでもあり、映画を撮るってことはある意味では無意味なことをすることでもあるんですが、有益なことでもある。なにより仕事でもありますし、時間を無駄にするということがいかに大事か分からせてくれることでもありますし、それがこの映画の中で言いたかったことでもあります。

●今日はありがとうございました!日本の映画ファンに何を感じてほしいですか?

なによりも日本のお客様に感じてほしいのは、イタリア人というのは罪人であるということを知ってほしいです。罪人であるけれど、自分たちを許すことのできる罪人であるということです。この映画は自分たちの不完全さを許すことのできるという映画です。それを遊びというか楽しい表現で描いているんですが、メッセージとしては真面目なもので、自分たちが不完全であるということは許すべきである、許したほうがいいというメッセージを込めた映画です。

配給:アルバトロス・フィルム
(C) Copyright 2019 I.B.C. Movie

2021年3月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo