どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
食事をする際の割引など、お得にサービスを受けることができるのが、株主優待券ですが、ここ最近全国的に偽造の優待券が『メルカリ』や『Yahooオークション』などのネットに出品され、悪用されている事件が相次いでいます。
例えば、高級食材であるフグ料理をリーズナブルな価格で堪能することができる全国チェーン『玄品ふぐ』では、まさに寝耳に水の思わぬトラブルに巻き込まれたといいます。各地の複数店舗で、偽造品の株主優待券が使用されていたというのです。
近年急増し続ける偽造株主優待券、今回は偽造品をつくり、個人間の売買取引ができるネットオークションなどに流しているT氏(38歳)に話を聞き、ネット出品の裏側に迫ります!
食事サービス券の儲けは微々たるもの
丸野(以下、丸)「株主優待券の偽造品なんて作って儲かるものなんですか?」
T氏「一時期は、金券を使ったり、割引券を使ったりするとが恥ずかしいとされてたんやけど、最近はカードでお得にポイント貯めたり、割引アプリ使ったり、誰よりも得したいという気持ちが強くなってるわけよ。例えば、玄品ふぐの運営をやっている関門海という会社が発行している株主優待券、系列の店で食事代が4,000円分割引になるものやったわ。それが、2,000円~3,000円で手に入れば、ええやん。ウチも儲かるし、Win-Winやわな」
丸「どこで偽造株主優待券を売買しているのですか?」
T氏「メルカリとか個人同士でネット上で取引できるサイトやね。まぁ、わからんよ。出来としては、運営会社の関係者でも、ちゃんとブラックライトとかで確認しないと気がつかないくらい精巧なもんやったから。本物と偽物の違いといえば、よくあるのが、紙質とかナンバリング部分の凸凹とか、余白部分の大きさくらい。でも、こんな部分で見分けなんて素人目にはわからんて」
丸「でも、そんなポイントの見分け方がわかっちゃうと、関係者全員に広まっちゃいますよね」
T氏「偽造品を改訂されたら、ウチはまた改訂版の偽物を刷るよ。作業は中国でやらしているけど、修正なんて簡単やから。ルーペなんかでしっかり確認しないと、印刷がおかしいとはわからない」
丸「いくらくらい儲かるものなんですか?」
T氏「食事サービスの金券なんて、そんなに銭にはならん。銭になるのは、富裕層が使うゴルフ場の割引券、商品券なんかやね。いくつもの組織があるんちゃうかな、有価証券に値打ちがあるなんてのは、アジアでは日本くらいのものやから。集中して狙われるよ、ニセ札作るよりも簡単なんやから」
丸「やっぱりゴルフ場が狙われやすいのですか?」
T氏「使うのが富裕層が多いから。優待券をまじまじと確認していると、失礼になるでしょ? しかるべき対応を取るなんて言ってるけど、どうなんかね」
日本チケット商協同組合では十数種の偽造券を確認
T氏「全国にあるチケットショップっていうのは、約500店舗。それが加盟しているのが『日本チケット商協同組合』というところなんやけどね、まぁ確認されているだけで、20種類弱の偽造券が確認されてるらしい。食券、銭湯の優待券、電化製品の割引券、ゴルフ場の割引券etc……。まぁ金券ショップは、顔が指す(※顔バレする)から、ネットオークションサイトで売買するわけやけど……」
丸「有価証券偽造って立派な犯罪ですよね?」
T氏「こっちから言えば、ネットオークションとかメルカリなんかが悪いわけ。元々、株主優待券は出品可能じゃないものばかりやったのに、メルカリはそれの取引可能に許可を出してしまった。譲渡や転売禁止という記載がある優待券は出品禁止やけど、記載のないものやったら出品できてしまうからね」
丸「他にはどんな偽造券があるんですか?」
T氏「商工会議所や商工会、商店街、商店会なんかのプレミアムクーポン券や地域振興券、地域商品券、商品券、金券、ギフト券なんかがあるし、今このコロナ禍の中だと、プレミアム商品券は狙い目やね。中国本土でも、日本の商品券を送って、偽造品をせっせと作ってるよ。偽造防止の加工を大声で謳っているところもあるけど、中国の技術革新をナメたらダメ」
丸「どういうことですか?」
素人は本物の株主優待券を見たことがない
T氏「可視光線下で目視できる偽造防止加工のものやブラックライトで判別できるもの、ホログラム加工のもの、透明インク(メジュームインキ)による偽造防止加工のもの、ブルーやオレンジの蛍光発光インクを使った偽造防止加工のもの、透かし印刷加工のものなんて、再現できるからね、むこうでも」
丸「本当にバレないものなんですか?」
T氏「じゃあ、あんたはどっかの会社の株主になったことある?」
丸「いえ」
T氏「お札と違って見慣れていないものだから、バレにくいわけでしょ。ホログラムがどこにあるかとかわかる?」
丸「……わかりませんね」
T氏「ネットで買ったとしても知らないうちに利用してしまっている善意の第三者で、罪にも問われないし。株主優待券の入った郵便物は、直接中国からの発送するものと、ウチみたいな業者をワンバウンドして送るものの2種類。中国からの発送だと、不信に思われるし、ウチを経由するわけ」
T氏の話を聞いていてわかったのは、正直株主優待券でもプレミアム商品券でも、簡単に複写機でコピーされていたとしても、素人目には気がつくことはないということでした。
今後も増え続ける可能性のある偽造株主優待券。読者のみなさんも、細心の注意をもって取り扱わなければいけないことを、肝に銘じておいてください。
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※有価証券、優待券などの偽造は犯罪です。