『ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ』レビュー:少年のころのワクワク感を思い出す! 記念すべきレトロゲームガジェット

任天堂から発売された『ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ』は、レトロゲーマーにとってこの上なく魅力的なガジェットだ。本製品はその名の通り、任天堂の名作アクションゲーム『スーパーマリオブラザーズ』が遊べる『ゲーム&ウオッチ』。『スーパーマリオブラザーズ』とゲーム&ウオッチ、いずれもノスタルジーを漂わせる存在。

そんな2つがセットになる……この時点で筆者のようなレトロゲーマーは、心が躍らずにいられない!

見栄えは良好! ゲーム&ウオッチなのにカラー液晶

『ゲーム&ウオッチ』といえば、モノクロ液晶。そして、カクカク動く。これは、『ゲーム&ウオッチ』販売当時採用していた液晶が単色で、キャラクターやゲーム内のオブジェクトの位置が液晶に固定されている……という仕様から。だからこそ、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』に登場するMr.ゲーム&ウォッチも、モノクロでカクカク動くのだ。

では、本製品もモノクロでカクカク動くのか……というと、もちろんそんなことはない。本製品の液晶はカラー液晶が採用されている。

カラー液晶の発色は鮮やかで、動きもなめらか。サイズが小さく、タッチ機能もないが、感覚的にはスマートフォンの画面を見ているのと変わらない。個人的にはこの「サイズが小さい」というのが好感触。というのも『ニンテンドー クラシックミニ』以降、本製品に限らずレトロゲームをプレイ可能なガジェットが多数登場している。

ただそれらのガジェットは基本的にテレビへの接続が前提。そして、現代のテレビはファミコン時代のブラウン管テレビとは違い、画面が大きく解像度も高い。なので画像が鮮明過ぎて、違和感を覚えるのだ。

レトロゲームでは、ドットという小さな四角形を組み合わせてグラフィックを表現している。いわゆるドット絵というやつだ。このドット絵を描くとき、昔のグラフィッカーはブラウン管のにじみを利用して中間色の表現を行っていた。というのも昔のゲーム機は同時に発色可能な数が少ない。そこでたとえば、異なる色を市松模様のように交互に並べることで中間色を表現する。つまり、点描画と同じ技法だ。

離れた場所から点描画を観ると1枚の絵として認識できるが、接近すると全体像が消え、単なる点の集合体になってしまう。これと同じで、昔のドット絵を大画面・高解像度の画面で観ると、四角形の集合体であることがありありと分かる。これがなんとも辛い。しかし、本製品は画面が小さいため、画面がファミコン時代のイメージで再現される。筆者が小学生のころプレイしてあまりの楽しさに驚いた『スーパーマリオブラザーズ』はコレ! これなんだよ。

ボタンは『ニンテンドー クラシックミニ』とほぼ同サイズ!しかしプレイは快適

購入前、画面以外で筆者が懸念していたのが操作性。「快適にプレイできるインターフェースなのだろうか?」という点だ。たとえば筆者は『ニンテンドー クラシックミニ』のコントローラーについて「ゲームプレイはできるが、快適とはいえない」と評価している。もちろん、『ニンテンドー クラシックミニ』や本製品のようなガジェットは、過去を懐かしむことが主目的。ガチでゲームプレイするためのものではないのかもしれない。

けれども、ゲーマーとしてはやっぱり快適にプレイしたいのだ!

実際に本製品の操作性がどうだったかというと……快適だ。これにはビックリした。というのも、本製品のボタンサイズは、『ニンテンドー クラシックミニ』とほぼ同じサイズ。先に書いた通り、筆者は『ニンテンドー クラシックミニ』のコントローラーには満足していなかったので、快適にプレイできたことにビックリしたわけだ。

おそらく快適にプレイできる理由は、十字ボタンとABボタンの配置だろう。十字ボタンとABボタンの間に液晶画面があり、十分に位置が離れているため、窮屈さがない。ボタンの押し心地やゲーム側のレスポンスもよく、Bダッシュから足場ギリギリでジャンプ……というシーンでも快適にプレイできた。

ワープゾーンにマリオ無限大増殖! 心に蘇るあの時代

実際に収録されているのは『スーパーマリオブラザーズ』と『スーパーマリオブラザーズ2』、『ゲーム&ウオッチ』のお手玉ゲーム『ボール』の3作品。本製品に興味を抱く人には説明不要とは思うものの、念のため説明しておくと、『スーパーマリオブラザーズ』は1985年に任天堂が発売したファミコン向けアクションゲーム。

『スーパーマリオブラザーズ2』はその続編で、当初はファミコンの拡張デバイスであるディスクシステム向けに、1986年発売した。前作と比較して全体的に難易度がアップしており、マリオはジャンプが低く、ルイージはジャンプが高い反面滑りやすいという個体差が設けられている。

また、もうひとつの『ボール』は、『ゲーム&ウオッチ』の第一作として1980年に発売された、知る人にとっては懐かしの作品だ。

3作品のうちどれが最も心に残っているかは人によるだろう。筆者の場合は『スーパーマリオブラザーズ』だ。『スーパーマリオブラザーズ』は発売後、社会現象レベルのブームを巻き起こし、販売する店舗では売り切れが続出した。なので、「なかなか手に入らなかった」という思い出を持っている人もいるだろう。

幸いなことに筆者は、ブーム前に誕生日のプレゼントとして買ってもらえたため、入手にあたって苦労はしていない。けれども、買ったときのインパクトは鮮やかに覚えている。当時、『スーパーマリオブラザーズ』店頭のモニターで試遊可能になっており、筆者もそれをプレイ。マリオを軽快に動かし……そして、最初のクリボーで死んだ。

すぐ死んだのだが、この時点で「なんだこれは! スゴいゲームだぞ!」と思った。当時小学生だった筆者に「操作性」なんてボキャブラリーはなかったのだが、操作性がイイ。クリボーに殺されたけど、その前の時点でマリオを動かす行為が気持ちよかった。マリオが右に進むと、背景がどんどん変わっていくのも魅力的。そして、キャッチーなBGMも耳に残った。

本製品に収録された『スーパーマリオブラザーズ』をプレイすると、小学校のころの記憶が蘇ってくる。あのころはゲーム雑誌が大量に創刊されており、いずれの雑誌においても「裏技」が特集されていた。ゲーム内で特殊な操作をすると、本来のプレイでは発生しない現象が起きる。それが「裏技」。

今から思い返せば、「裏技」といっても、イースターエッグのように意図的に仕掛けられたものだけではなく、テストプレイ用の特殊操作が残ったケースや、バグが解消できずにそのまま残っていたケースも多かったろう。だが、当時のゲームキッズにそんなことは関係ない。ゲームの中に様々なワンダーが詰まっている! それがおもしろいのだ。

もちろん、『スーパーマリオブラザーズ』にもワンダーが詰まっている。そのひとつが、ワールドを一気に移動できるワープゾーンだ。当たり前だが同製品にもワープゾーンは存在している。<1-2>で地下世界の天井を進んだその先、ゴールの向こうだ。

また、マリオの残機数を一気に増やすマリオ無限増殖も、有名なワンダーだ。ノコノコを着地せず連続で踏むことで点数を連続アップし、マリオの残機を増やし続けるというテクニック。

『スーパーマリオブラザーズ』では<3-1>後半、ノコノコが2匹降りてくる階段で行うことができ、『スーパーマリオブラザーズ2』では冒頭の<1-1>スタート直後、ノコノコがブロックに囲まれている場所で行える。もちろん、本製品でも再現することができた。無限増殖を行ったのなんて何年ぶりだろう。

ちなみにマリオの無限増殖で残機を99体以上に増やすと、残機数表示が文字化けする。これは当時のメモリ管理の都合なので、現在のコンピューターであれば改善できるのだが、下の画像のようにしっかり当時のまま残っているのがうれしい。当時、筆者の周りでは文字化けした残機表示について、メモリの容量などわからない友達同士「こんな理由があるのでは?」などとあれこれ設定を妄想して楽しんだっけ。

なお、『ボール』については今回が初プレイとなるので、残念ながら『スーパーマリオブラザーズ』ほどはワクワクしなかった。ただ、お手玉に合わせて手を動かすといういかにも『ゲーム&ウオッチ』らしいシンプルなゲームなので、『スーパーマリオブラザーズ』の合間にカジュアルにプレイする分には楽しい。

ところで、『ゲーム&ウオッチ』という製品名が示す通り、本製品はウオッチと名がつくだけに時計でもある。これは重要なポイントだ。というのも、筆者はここにも思い出がある。筆者が幼稚園に通っていたころ、友達が親に「『ゲーム&ウオッチ』はゲームも遊べる時計なんだよ」とねだって買ってもらったことを自慢していた思い出だ。

今から思えば、あまりにも子どもらしい、拙い理屈なので、最初からその子の親も買ってあげる気だったのだろう。けど、当時の筆者も親にその言葉を伝えた記憶がある。2020年現在に本製品を手にしてみて、実際『ゲーム&ウオッチ』が時計代わりとして使えるかというと……正直スマートウォッチも、スマートフォンも持ち歩いている状況で、時計代わりに使うというのには無理があるかもしれない。

ただ、本作に収録されている時計モードは、『スーパーマリオブラザーズ』にちなんだ楽しい内容なので、一見の価値はある。

少年に帰ろう! パッケージの遊び心がステキ

本体だけでなく、本製品はパッケージまで遊び心に満ちている。『スーパーマリオブラザーズ』のステージをイメージしたカラフルな外箱は、一見するとフツーの作り。しかし、紙箱と透明なスリーブケースとの二重構造になっており、スリーブケースを外すと、モノクロの『ボール』の画面が出てくるという仕掛け。箱も含めて保存しておきたいと思わせる作りだ。

『スーパーマリオブラザーズ』は、今年で35周年。筆者も今年で4〇歳という年齢を迎える。これだけ歳を重ねると、新たなガジェットやゲームを買う際でも、心が躍るということはあまりない。けど本製品は、製品に込められた遊び心と懐かしさから、子どものころ、誕生日やクリスマスにゲームを買ってもらったときのようなワクワク感を覚えた。

本製品を見て懐かしさを覚えたゲーマーなら、『ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ』買って損はないハズだ。

ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ|任天堂:
https://www.nintendo.co.jp/hardware/gamewatch/index.html[リンク]

文/田中一広

ガジェット通信ゲーム班

ゲームのニュース、レビューを中心にお届けします。