「愛の不時着」から見る朝鮮半島の運命〜翻弄される朝鮮半島〜

 

2020年、年が明けて順調に滑り出したかのように見えた私たちの生活は一変しましたよね。連日猛威を振るった新型コロナウィルスの影響で、外出自粛期間が続き、ご自宅でゆっくり過ごされる方も増えましたよね。お家で何か観たい、、、とりあえずネットフリックスですよね。

 ネットフリックスにログインすると、「本日のTOP10」に必ず躍り出てくる、黒髪のきれいなお姉さんのが出てるシリーズ。。気にはなるけどタイトルが「愛の不時着」、、

 タイトルがちょっと重い、、

 どうしよう、、、

 不時着しちゃった愛についてのドラマを夜な夜な見続けられるのか、、

 次の日眠くならないのか、、

 そんな不安を抱えながら、、悩み続け、、

 結局一気に観る。

 人間っていうのはいくつになってもイケメンの誘惑には弱い。なんか前髪が変だけども、ヒョンビンさんは2020年もちゃんと素敵でした。

 内容としては、韓国の女性と北朝鮮の男性の恋の物語。さすが毎回TOP10。美男美女の悲恋、ありえない過去の偶然、今回は誰も記憶喪失にはならないけども、グイグイとポイントを押さえてくる、安定のザ韓流ドラマ。

 では、今回は、なぜあの綺麗なお姉さんと北のイケメン兵士は同じ韓国語を話すのに自由に恋愛ができないのか。なんとなく想像がついても、しっかりと理解するためにその歴史の経緯を見てみましょう。

 おそらく、朝鮮半島が、大韓民国(通称 韓国)と北朝鮮(通称 朝鮮民主主義人民共和国)が軍事境界線によって分断されていることは周知の事実ですよね。

 何でこんなことになったのか。なんで軍事境界線で二カ国に分断されたのだろう。歴史的経緯なしにはこの分断を理解できず、北朝鮮という国家に対してどう考えていいか悩むところでしょう。また、朝鮮半島の背後にある、米中ソという巨大な影が終始付きまとうことを決して忘れてはならないのです。

 日本政府は北朝鮮の略史を外務省の北朝鮮に関する基礎データとして下記のように記している。

 日本による統治(1910~1945)を経て,第2次大戦後,北緯38度以北をソ連が占領。
1948年北朝鮮「政府」樹立。同時期に朝鮮半島の南半分では大韓民国が成立。
 1945年に1910年から続いた当時の大日本帝国の統治から解放された朝鮮半島。しかし、その後も北はソ連、南は米国の占領下におかれることになります。北緯38°線による分断は、終戦後の冷戦構造の中で確定していたということを認識する必要があるでしょう。

 さらに、戦後わずか5年の時を経て、1950年6月、朝鮮戦争が勃発。この朝鮮戦争によって同じ民族で争うという切ない悲しい戦争の歴史を辿る朝鮮半島。この戦争により軍事境界線による分断が固定化されます。

 そもそもなぜ戦争になったのか。

 皆さまおなじみの世界史Aの教科書は下記のように定義しています。

「50年6月、北朝鮮軍が北緯38度線を超えて朝鮮半島南部まで進行すると、国連安全保障委員会はソ連代表が欠席のまま北朝鮮の行動を侵略行為とみなし、アメリカ軍を主体とする国連軍を派遣した。中華人民共和国は義勇軍を派遣し、ソ連は参戦こそしなかったが北朝鮮を援助した。戦いは一進一退を繰り返し、53年に休戦協定が結ばれ、停戦ラインは現在もそのまま維持されている」

 この世界史Aの説明は大変簡潔。でもちょっと待って。何で中国が義勇軍を派遣し、米主導の国連軍が人の半島で戦争をしていたのか。

 「冷たい戦争」という言葉を皆さまご存じでしょう。アメリカ合衆国とソビエト連邦の間では大戦末期から、大戦終結後を見据えた覇権争いが繰り広げられていましたよね。日本への原爆投下もその暗闘の一幕にすぎないかもしれない、という説はまたの機会にご説明するとして。

 冷戦とは米国率いる自由と民主主義を掲げる西側陣営と、ソ連を中心とした社会主義の東側陣営の対立。

 1948年に北朝鮮と韓国が成立するまで、ソ連と米国に占領されたのもそのためです。戦後米国に統治されていた日本に近い韓国は米国、当時共産党が内戦において勝利を収めつつあった中国と国境を接する北はソ連の影響下におかれます。

 ここで隣国中国について触れないわけにはいきません。大戦終了後、中国は毛沢東率いる共産党と蒋介石率いる国民党の対立により内戦状態に陥ります。日本の統治から解放されたら今度は内戦の渦に巻き込まれるのです。その内戦において勝利を収めた共産党は、1949年毛沢東を主席として中華人民共和国を建国。

 共産主義を掲げる毛沢東主席は革命家です。せっかく内戦に勝って中華人民共和国を樹立した。「この革命をアジア、そして世界中に広げるために続けなければ。」という野心と、彼らからすると、列強に抑圧され日本からの占領されたという長い屈辱の過去を振り返ると、米国が占領する韓国が存在すること自体が脅威だったことでしょうきっと。

 一方民主主義陣営の米国は、長い太平洋戦争の後やっと日本を抑え込めた。日本も東側陣営に飲み込まれることなく、西側陣営に組み込めた。自由と民主主義を掲げてしまっている身としては、ここで勃発してしまった戦争を主導しないわけにはいかない。日本をなんとか平和に非武装化できた米国。民主の盟主としての世界の信頼は欲しい。あわよくば、北朝鮮まで民主化したい。

 一方で革命を何とか推し進めて韓国まで手を広げたい中国。また、朝鮮戦争には軍を派兵していないソ連。

 結果的に朝鮮戦争は米ソの代理戦争だったと語られているが、これは米中の対立で合ったという見方も十分にできるでしょう。

 こう見ると、やっぱり中国を抜きにしては語れない東アジア。「新たな冷戦構造」と呼ばれる昨今の米中の対立は、果たして本当に新しいのか。貿易やハイテク製品、南シナ海問題などへと争点を変えたが、米中の対立は真新しいとは思えない。一時はチャイメリカと言われ蜜月を過ごした米中だが、今後は対立は悪化の一途を辿る可能性は十分にある。北朝鮮という国家が存在し続けてきたという事実を踏まえると、朝鮮戦争勃発前からあった冷戦構造がソ連が崩壊したからなくなったという見方だけではないことも留意しておいて損はないでしょう。

参考文献

21世紀研究会編 (2000) 『民族の世界地図』文春新書

(2016) 『高等学校 改訂版 世界史A』第一学習社

Chen Jian (1994) 『China’s Road to the Korean War: The Making of the Sino-American Confrontation 』Columbia University Press

mihoseto

社会人のための英語学習にプラスして知識を深めるためのコンテンツ配信を行っているSF SOLUTIONSの世界史に関するブログです。 社会人のみなさんが現代を生きる上で、知っていたら役に立ちそうな歴史のネタをわかりやすく書いています。

ウェブサイト: Instagram:@s_f_solutions

Twitter: @SFSOLUTIONSJPN