どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
世の中には、刑務所生活を追った書籍や雑誌などが出ていますよね。しかし、かなり詳細な部分まで網羅しているというものは、あまり見かけません。刑務所体験談の多くは、受刑者の生活やルール、ムショメシ、刑務官の厳しさについてがほとんどです。
そこでこの《シリーズ・細かすぎる刑務所の話》では、普段語られることの少ない刑務所の隅々までお話したいと思います。
今回は「刑務所の年間行事」についてレクチャーいたします。
■シリーズ・細かすぎる刑務所の話 記事一覧
第1回 https://getnews.jp/archives/2568172
第2回 https://getnews.jp/archives/2570149
第3回 https://getnews.jp/archives/2592497
第4回 https://getnews.jp/archives/2592520
第5回 https://getnews.jp/archives/2605768
刑務所の年間行事やレクリエーションは多岐に渡る
刑務所というのは精神衛生上、健康的でなければならないと法律的にも決まっています。最低限の受刑者の人権が守られているというわけですね。
窮屈な刑務所生活だからこそ、時にはパーッとはしゃぎたいときもあるのでしょう。罪を犯した人間とはいえ、適度なガス抜きは必要だと認められているわけです。
そこで刑務所側は、終わりの見えない受刑者生活の中に年間行事やレクリエーション大会を挟んで、明日へ向かう希望を持たせるわけなんですよ。
では、一体どのような年間行事があるのでしょうか?
4月:お花見大会を「観桜会」と呼ぶ
刑務所ではお花見大会のことを「観桜会(かんおうかい)」と言います。お花見といっても、咲き誇るほどの本数はなく、グランドに2、3本あるだけの桜の前でブルーシートを敷いて、お菓子を食べるといったものです。しかし、カラオケセットが用意されているというのですから、非常に贅沢ではあります。
工場ごとに分かれて、桜餅や草餅が配られ、それをコーヒーで流し込みます。自分の好きな曲を熱唱する者、雑談で盛り上がる者など皆一応に楽しむということ。彼らにとって貴重な「甘シャリ」は至福の時間を演出してくれます。
5、6、10月:バレーボール大会・サッカー大会・野球大会
工場別対抗のバレーボール大会やサッカー大会、野球大会などの球技大会は非常に盛り上がります。試合を行う工場だけが1日40分組み込まれている運動時間に行うため、すべての試合が終了するまでには、実に1週間以上かかるそう。
裏では、刑務官同士や受刑者同士で握る(勝敗に金品や物品を賭けること)こともあるらしく、担当する工場の刑務官は、受刑者たちに「絶対に勝つように!」と命令を下します。すべての工場を破り、優勝した工場は、担当さん(刑務官)を全員で胴上げするという光景もあるみたいですね。
9~10月:大運動会
年間行事の中で最も盛り上がるのが、工場対抗の大運動会です。受刑者たちは、本番2、3週間前から応援合戦やリレーなどとことん練習するそう。
運動会当日は刑務作業を午前中で終了し、グランドに出て全員参加。工場別対抗リレーが一番の盛り上がりをみせます。毎年恒例で受刑者の中からアナウンスをする司会進行役を決めるのですが、しゃべりがうまい受刑者が担当する年は大変沸きます。
ちなみにこの行事でも特食(お菓子など)が配られて、ポテトチップスやアルフォート、ブルボンロールバームなどを食べることができます。飲み物は、炭酸飲料やスポーツドリンクが多いのだそう。意外と贅沢です。
11月:歌手やタレントの慰問
毎年に1回~2回歌手や漫才師などのタレントが慰問がやってきます。刑務所の規模や受刑者の傾向によってまちまちですが、大物演歌歌手(ヤクザ幹部とのつながりがあったりする)がやってくることもあります。
人気なのは、「受刑者のアイドル」としてテレビやメディアに取り上げられているPaix2(ペペ)という女性歌手デュオ。彼女たちの「プリズンコンサート」を受刑者は心待ちにしているそうです。
講堂で行われる慰問は、工場別に入場し、並べられた椅子に腰かけます。その後目をつぶり、演者が登場するのを待ちます。慰問へ出席することは強制参加で、拒否はできません。私語禁止で講堂は静まり返っています。演者に話しかけられても、なにか言葉を返すことはできません。ただ、許されているのは「拍手」のみ。手拍子は禁止です。
12月:クリスマス会
クリスマスの日には、夕食に小さなケーキやカップケーキが出るそうです。
またクリスチャンや希望者は、クリスマス会を開いてもらえます。講堂に、教会の牧師の説教と女性歌手のクリスマスソングを聞くことができます。
1月:お正月
受刑者が指折り数えて待ちわびているのが、お正月になります。特に待ち遠しいお正月には、普段は粗食で過ごす受刑者が太ってしまうという豪華なご馳走が! 12月30日から三が日が過ぎるまでの5日間は、毎日祝日扱いのお菓子の支給。
大みそかは、割り込そばやどん兵衛などカップの年越しそばが出て、元日の朝になれば、折り詰めのおせち料理が出ます。
内容は非常に豪華で、例えばトンカツ、チャーシュー、クリームコロッケ、蟹グラタン、チキンソテー、エビの塩焼き、さわら西京漬け、卵焼き、数の子、煮物、鯛練り、小女子とくるみの佃煮、紅白なます、れんこんきんぴら、しゅうまい、黒豆、なます、佃煮、栗きんとん、昆布巻、ホタテ、鮭切り身焼き、水ようかんなどのおせちからはじまり、トンテキ、鰻、中華丼などの料理が出ます。さらに、いつもの麦飯が銀シャリに変更され、毎朝にはお雑煮ができます。
映画の上映やテレビを自由に観ることができるので、三が日が過ぎるまでゆっくりとした時間を過ごします。
これら以外にも地方によってさまざまな年間行事があるそうです。次回もあまり知ることのない“刑務所の真実”をお伝えしたいと思います。
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