ちょうちん×夜道=妄想!? 『谷中妄想カフェ』の魅力

  by misaki  Tags :  

“ちょうちんもって ちょっとそこまで”

暖かくやわらかな光に照らされて、町も建物も木も人も、なんだかいつもと違う顔。
レモン風味のキャンディが、それまで見えなかったものを見せてくれる。

『谷中妄想カフェ』は夏の間だけ開催され、今年で2年目になるイベントです。
企画運営は、一般社団法人『谷中のおかって』。

この『谷中妄想カフェ』、冒頭のキャッチコピーのとおり、ちょうちんを片手に谷中の町をお散歩するというものです。
お散歩には、ナビゲーターの方がついています。

人気の喫茶店、カヤバ珈琲でナビゲーター・他の参加者の方と合流し、出発。
折しもこの日は満月輝くブルームーン。
夜道の散歩には絶好のタイミング。

 

ナビゲーターと一緒にお散歩というと、旅行のガイドさんのようにあれこれとおしゃべりをしてくれそうに思われるかもしれません。けれど、そんなことはありません。一緒に耳を澄まし、一緒に思いついた妄想を語り合ってくれます。

ナビゲーターはボランティアの方の協力もあり、何人もいます。複数回参加すると、毎回違ったナビゲーターに当たるかもしれません。同じお散歩は絶対にないといえます。ルートの誘導や安全の配慮は必須ですが、それ以外はナビゲーターが個性を発揮できる部分のようでした。

 

夜の谷中の町は、「東京の谷中」ではなく、ただ「谷中」であるように感じました。
たくさんのお寺に、張り巡らされた狭い路地。
道の真ん中に立つ大きな木。木が邪魔だから切るのではなく、そこに木があるから私がよける。
秋の近づく高く広い空に浮かぶ月。車の音さえ聴こえません。

 

谷中の町には、昔ながらの街並みや建造物が多く残されています。関東大震災や第二次世界大戦を経た中でも、決定的なダメージがなかったためと言われています。天王寺をはじめとするお寺がいたるところにあり、狭い路地には猫がたくさん。

 

そう、ここは「東京」ではなく、「谷中」。
そうした、“まち”としての確固たるアイデンティティを感じられました。

町ってよく見ると、かなりヘンです。
「なんでこれがここに?」
「なんでこれはこうなっているの?」
そんなことがたくさん。

ちょうちんの灯りに照らされると、大きな岩が脈打つ心臓みたいに見えたり。
住宅の玄関の作りや照明が一軒一軒違っていたり。

画一的に切り分けられた形や空間に、いかに自分がどっぷり浸かっているのか。
そのことを忌むわけではないけれど、痛烈に思い知りました。
同時に、東京にもこんな場所があるんだ、と小さな感動を覚えました。

私は参加する前、お散歩中にも写真を撮ろうと思っていたのですが、それはすぐやめました。
シャッターの音やフラッシュは、この時間を無粋で虚しくするだろう。(正式な取材なら話は別、です)
浮かび上がる景色に目を凝らし、粋な妄想に耳を傾ける。自分が感じたことも脊髄反射で口にする。

あれは夢か幻か、最後は狐火に導かれて、感応寺でお茶会。
ぶち抜きの夜空を眺めながら、余韻に浸りました。

帰宅後に開いた、ナビゲーターからのお手紙。

「色や空気や音…それらに気が付いちゃったあなた!!もしかしたら、あなたからももうこれまでとは違う何かが芽生えてるかもしれませんよ…!!」

とありました。
うん、根拠もないけど、そう感じる。

……妄想でしょうか?

 

(『谷中妄想カフェ』は9月8日まで開催されています!)

 

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