大阪のたこ焼き屋が作った『劇団くれおーる』がアツアツで面白い

  by 増田浩紀  Tags :  

たこ焼き屋が劇団を旗揚げ!?

くれおーる』といえば、
大阪道頓堀の一等地にあるたこ焼き屋として、関西近隣では結構な知名度を誇るのではないでしょうか。
そのくれおーるが、この程劇団を旗揚げしました。
曰く、「飲食店は慢性的な人材不足で、団員に働いてもらうことで若い働き手の確保ができる」との事。
これは非常に珍しい取り組みで、7月に行われた旗揚げ公演は、各種メディアで話題になりました。

芝居は食えない

私も実は高校時代はどっぷり演劇に浸かって、高校3年間を丸々舞台に費やしたといっても過言ではない程です。
今は同じ『芝居』ではあるものの、『狂言』という少し昔のお芝居の役者として色々な舞台に立たせていただいていますが、
今でもしばしば小劇場に足を運んで観劇を楽しんでいます。
そんな事もあって、周りには演劇関係者も多いのですが、
やはり基本的には小劇場演劇は『仕事』としては成り立っていないのが現状です。
大半の役者は他に仕事をしながら舞台に立っています。

それは会場費などの経費、チケット金額、公演回数などによる総合的な採算性の問題もあるのですが、
それ以上に大きいのが『時間』の問題です。
演劇の稽古は、公演の2-3ヵ月前には始まります。
大体週一回程度からでしょうか。
そして本番前にもなると、稽古はほとんど毎日になります。
社会人劇団はその辺りをうまくやりくりしてはいますが、
やはり1つの舞台を作り上げるには、膨大な時間が必要なのです。
中には、役者に専念したいがために正社員の仕事を辞める者もしばしばいるのです。
あるいは、学校卒業時に就職をせず、フリーターの道を選ぶ者もいます。

飲食店が劇団を主宰する意義

そこで飲食店が劇団を立ち上げ、
劇団員を雇用しつつレッスンのサポートもおこない、
稽古を考慮してシフトを組んであげる。
これは多くの役者が抱える、
「本番前の稽古の時に仕事の調整がつかない」
「休みをもらうのが心苦しい」
といった悩みを解決する大いなる福音となるのではないでしょうか。
逆に飲食店に取っても、
近年困難さの増す雇用の確保と、役者による集客というメリットを享受する事ができる、
win-winの関係を築ける、画期的な試みです。

前代未聞 3章立て 2週間ごとの公演

そして旗揚げ公演から上演されるのは、
上記の様な安定した運営基盤をフルに活かした、3章立て公演。
しかもこれを、
第一章 7/23、30
第二章 8/13、27
第三章 9/10、24
と各日2回公演、役者にとっては2週間ごとに本番があるという、
何とも野心的な試みです。

もちろん新規の方でも途中の章から見る事が出来るよう、
冒頭にダイジェストを盛り込むなど、十分に配慮されています。
劇団レトルト内閣の座付である三名刺繡氏が脚本を担当していますが、
今回は若い熱気あふれる役者と、大阪の中心にある繁華街という立地を十分に踏まえた、
エンタメに振り切った脚本も楽しい。

今なら9月の第三章のチケットが販売されているので、
ぜひ第三章からでもご覧になる事をおススメします!

※劇団くれおーる
https://www.theatre-creoru.com/
株式会社くれおーるが主宰する劇団。
在阪企業と舞台芸術家、芸能プロダクションがコラボする関西初の劇団プロジェクトとして注目を集める。
くれおーるの店舗が並ぶ、大阪・なんばの中心地「道頓堀ZAZA」を拠点に活動。

増田浩紀

大蔵流茂山千五郎家狂言師。 放浪芸の実演、探訪などもライフワークとし、茂山千五郎家ファンクラブ会報にてコーナーを連載中。 2017年にはNHK連続テレビ小説「わろてんか」にも三曲万歳の実演で出演。

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