マンガ『将棋めし』で再現された「ハンバーグおかわり事件」とは?

2月26日にKADOKAWAの無料マンガ掲載サイトComicWalkerにおいて、マンガ『将棋めし』の第21話(作品では『第21食』と表現されている)が無料公開された。

https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF01000035010000_68/

前代未聞、将棋×めしマンガ! 将棋棋士・峠なゆた六段は宝山玉座(ほうざんぎょくざ)に挑戦し、フルセットで最終局を迎える。そんななか、峠なゆたが選んだ食事とは!?

(※ComicWalkerサイト内『あらすじ・作品紹介』より)


https://twitter.com/matsumon23/status/1081217856396681217
(※『第21食』が掲載されたコミックフラッパー2019年2月号発売時の作者松本渚氏によるツイート)

このマンガ『将棋めし』は、実際に対局中に出前で注文できるメニューが登場することや、実際のタイトル戦の対局場、タイトル戦でしか登場しないメニューが登場するなど、こと将棋界の話題においてはリアルに描かれていることでファンの間から親しまれている。
今回公開された『第21食』では主人公である『峠なゆた』が自身のタイトル防衛戦中に、なんと「ハンバーグをおかわり」するという新手を投入するのだ。

しかし、この「ハンバーグおかわり」新手、将棋ファンの間ではすでによく知られた事件なのであった。過去にすでにとある棋士が指した『新手』なのである。

そう、将棋×食事の話題では事欠かない『丸山忠久九段』によって。

丸山九段は健啖家として知られており、「唐揚げ定食唐揚げ3個追加定跡」や「冷やし中華大盛りチャーシュー6枚追加新手」など、これまでの将棋界の食事注文に新風を巻き起こしてきた人物でもある。大事なタイトル戦のここぞという場面で新手をぶつけてきたのだ。

事件は2016年11月8日に山形県天童市で行われた第29期竜王戦第3局2日目の昼食休憩で起こった。丸山九段は挑戦者としてタイトル保持者の渡辺竜王にここまで1勝1敗のタイとして第3局にのぞんでいた。

竜王戦中継plus : 2日目昼食休憩
http://kifulog.shogi.or.jp/ryuou/2016/11/post-7583.html


https://twitter.com/shogipremium/status/795838022101004288
(※『将棋プレミアム』公式の対局当日のツイートより)

2日目昼食休憩で丸山九段が取った食事注文は『鶏そば』に『ハンバーグとライス』。見てるだけでもお腹いっぱいになりそうなダブルでの食事注文だったのだが、ここで挑戦者の丸山九段はさらに「ハンバーグのおかわり」という新手を放ったのであった。

しかし、ハンバーグは「おかわり!」と言ってすぐに焼き上がるものではない。対局者の休憩時間も限られている。実はこのハンバーグのおかわりは、「同じものを頼んでいた記者のものを持って行ったことで対応できた」ことが対局場の控室からニコニコ生放送で電話出演した佐藤康光九段によって明らかにされている。

丸山九段はさらにこの日の午後3時のおやつ注文でもチョコレートケーキ、生キャラメルチョコレート、アイスティー、カロリーメイト(飲料タイプ)3本を補充。
この食事量が功を奏したのかどうかは定かではないが、午後7時47分にまで及んだ本局を147手という手数で丸山九段が見事に制し、シリーズ成績を2勝1敗としている。

冗談みたいなエピソードが本当に起きているのが将棋界の恐ろしいところであり、面白いところでもある。

画像:『足成』
http://www.ashinari.com/2012/08/21-367575.php

文春オンライン「第1期“書く将棋”新人王戦」観戦記者賞を受賞しました。

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