「心配ないさー!」どころか心配大ありな感じになってきた。
先日公開された実写版予告編が反響を呼んだディズニー映画『ライオン・キング』の名曲といえば『ハクナ・マタタ』(原題『Hakuna Matata』)。日本語訳はいくつか出回っているが、劇団四季のミュージカルで採用されている「心配ないさー!」が最も有名だろう。この「ハクナ・マタタ」を巡って一悶着が起こっている。
ディズニーが権利を持っている「ハクナ・マタタ」の商標登録について、登録撤回を要請する署名運動が始まったのだ。
「ハクナ・マタタ」は、ケニア、タンザニア、ウガンダ、コンゴ民主共和国など、東アフリカの広い地域で使われているスワヒリ語で「問題ない、心配ない」を意味する言葉。ディズニーは1994年のアニメ版『ライオン・キング』公開に合わせてこの言葉を商標出願し、2001年に米国特許商標庁によって衣服への使用が承認された。
当時は、この商標登録について特に騒がれることはなかったようだが、来年夏公開予定の実写版が注目を集めるにつれ、アフリカ諸国のメディアや権利活動家たちから異議を唱える声が上がり始めた。
ネット署名サイト『change.org』で商標の削除を呼びかけたのは、ジンバブエのShelton Mpalaさん。彼は「ディズニーが発明していないものに商標登録など許されない。ディズニーが子供の記憶に残る娯楽作品を提供していることには敬意を表するが、『ハクナ・マタタ』の商標登録は純粋に金儲けのためであり、スワヒリの精神だけでなくアフリカ全体に対する侮辱だ」と訴える。これまでに署名した人は16万人を超えた。
この署名運動を知ったアフリカの人たちは
「どうして言語の一部として使われている単語を商標登録などできようか」
「スワヒリ語では普通『ハクナ・マタタ』と言うことはないのが面白い」
「『ハクナ・マタタ』という言葉は『ライオン・キング』より20年以上も前に作られてケニアでとても人気だった歌から来てるのを知らんのか。博物館に展示するためにアフリカの芸術作品を盗んだ植民者のようなものだ。絶対に許せない!」
「絶対に許すな。ケニアに来てカンガ(※東アフリカで衣類や風呂敷などに用いられる色鮮やかな布)のバッグに目を付けた日本人が、カンガを日本のものとして宣伝したのと同じことだ」
などと意見を書き込んでいる。
カンガとやらについての認識にはやや誤解があるような気もするが、アフリカの人たちは、長い間虐げられてきた歴史があるためか、先進国による“文化の盗用”には非常に敏感なようだ。先のMpalaさん自身もスワヒリ語話者ではないそうだが、この商標はファッションを装ったアフリカ搾取の一例にすぎないとの思いから署名運動を始めたという。もし彼らアフリカの権利活動家が、日本には半裸にライオンの被り物で「心配ないさー!」と雄叫びをあげて笑いを取っている芸人がいることを知ったらと思うと、他人事ながらちょっと心配してしまう。
画像とソース引用:『change.org』及び『Twitter』より
https://www.change.org/p/the-walt-disney-company-get-disney-to-reverse-their-trademark-of-hakuna-matata[リンク]
https://twitter.com/BBCAfrica/status/1074704184321196034[リンク]