【歌舞伎町のサウナで“ホームレスアイドル”】せのしすたぁまおの“アイドル上京ものがたり”【オタクに野菜や調味料をリクエスト】

  by 大坪ケムタ  Tags :  

地方から東京に移り住んで、アイドルとして活動する女の子たちの東京やふるさとに対する思いや日常をうかがう「アイドル上京ものがたり」。今回は福井県坂井市出身せのしすたぁ・まおさんの登場です。

まおとゆーたんの二人組、せのしすたぁは福井県のローカルアイドル。しかしその肩書以上に「アウェイ最強」とも呼ばれる、他グループのファンでも一度見たら忘れられない圧倒的な“煽り”で知られるまおさん。時には観客のフロアに飛び込み、360度のファンに向けて歌を叩き込むようなステージは、激しくもハッピーな気分にさせられる唯一無二のもの。

また、まおさんはせのしすたぁの母体である福井県坂井市のショッピングセンター・アルプラザ アミの“お買物アイドル”アミ~ガス、大阪を中心に活動する最高じぇねれーしょんの2組にも所属し、福井と東京・大阪を股にかけて活動しています。

そんな彼女は東京にいる時は“ホームレスアイドル”?アイドルになって得たのは楽しいことだけではなかった彼女。しかしその経験を通して変わっていった福井への思いとは。

『人が嫌がることはしない』っていうのがわかんないんですよ

--まおさんは福井県出身ですけど、具体的にどこまで公表してるんですっけ。

まお  坂井市丸岡町、まで言ってます。

--ずいぶん狭い地域まで言ってますね。ファンから家とか特定されるんじゃない?

まお  そうですね、本名も言うし、家族関係も言うし(笑)。でも丸岡町ってかなり広いんですよ。それにそこまで特定されてもいやだと思わないんですよ。できるだけ、1ミリでも多く自分のこと知ってほしいんですよ。だから言いたくなっちゃう。

--知ってほしいから住所まで言う(笑)。

まお  自分の心の中は知られることは難しいですけど、そういう住所だったり本名だったりっていうのはもうわかりやすい答えがあるじゃないですか。だからもう、全然言います!

--でも自宅の住所とか言うと家族にも迷惑かかるから!前にNGT48中井りかさんが家でSHOWROOM配信中にファンが外で大声出したなんて事件もありましたけど。

まお  怖いですよね。でもうちは「いまから外でイエッタイガー言いに行くわー」みたいな感じでやったら、それすげえ面白いじゃん!って思っちゃうけど(笑)。

--その坂井市ってのはけっこう田舎ですか?

まお  まあまあ田舎です。7歳までは永平寺の近くに住んでました。永平寺知ってます?

--お寺は詳しくないですけど、かなり古い、由緒あるお寺ですよね?教科書に出てくるような。(永平寺:總持寺と並ぶ日本曹洞宗の大本山。国宝の普勧坐禅儀を所蔵)

まお  日本で一番修行僧が大変なお寺らしいんです。そこは本当に田舎でしたね、右も左も田んぼと山、みたいな。車がないとスーパーにも行けないし。近くに無人の野菜売り場とかがあって。

--100円チャリンと入れて野菜持ってく、みたいな。

まお  そうそう。

--じゃあ子供の頃はけっこう野生児な感じでした?

まお  遊ぶのも田んぼか山で、覚えてるのが歯が抜ける時ってあるじゃないですか。7歳くらいの時、田んぼでオタマジャクシとってる時にポロッと抜けました。田んぼに落ちたのを拾って持って帰りましたね。

--それくらい田んぼとは身近だったと。

まお  最初その辺に住んでて、親が離婚してから坂井市に住むようになったんです。

--坂井市は永平寺に比べたら都会ですか?アミ~ガスがいるアミもある街ですが。

まお  さすがに街ですけど、まあ田舎ですね。JRの駅はあるけど、ほぼ無人みたいな。家から駅まで歩いて行ける距離じゃないし、ほとんど使ったことないです。

--でもアイドルはいるっていう(笑)。街の規模がわかりづらいなあ。

--じゃあ小学校とかそんな大きくはない感じですか。

まお  全校生徒は150人もいなかったです。わたしのクラスは25人でした。

--どんな小学生でしたか。

まお  ま~、勉強はキライでした。宿題も出さないし。運動神経はよかったんで、体育とか体育祭はすっげー活躍してた系で。今もちょっと変わってるって言われるけど、当時はもっと変わってたんですよね。

--ただの運動バカってだけじゃない。

まお  周りから浮いちゃうタイプ。とにかく空気を読まないんですよ。「人が嫌がることはしない」っていうのがわかんないんですよ。これしたら嫌がるだろう、っていうのが。

--自分が周りから嫌がられてるというのもわからない。

まお  そうですね。で、小5のときに、クラスのリーダー的悪い女子とケンカしたんですよ。絶対みんなはその人の下にいる子で、私は歯向かっちゃって。そしたら親がモンスターペアレント系で、ケンカした後に親が出てきて、家に呼び出されて「死ね」って言われたんですよ。

--小学生に死ねって!

まお  それは今でも思い出しますね。夢とかにも出ます。

--普通の友達もなかなか作るの難しい感じでした?

まお  できないです。友達もいなかった。でも友達がいないってことも認識がなかったんですよ。特に欲しいとも思わなかった。それに男の子とは仲良かったんで。小学校の男子とか基本おバカじゃないですか。ネチネチしてないから仲良かったですね。

--女子はリーダーの派閥があるから仲良くならない感じだ。ただ、人数少ないから小中と周りもそのまま上がる感じですよね?

まお  中学でクラスは増えたんですけど、3年間友達はいなかったです。変に社交的だから関わっていこうとするんですけど、そこで嫌われてるなって気づくっていう。あとクラスの強気な子から『○○ちゃんはアンタといたくないから』って言われたり。半分イジメられてる状況でしたね。だからほとんど学校行かなかったです。

--厳しいなあ。

まお  でも男子とはずっと仲良かったですね。

--それも気に食わないんだろうね。

まお  たぶん。当時はインターネットが流行りだしたから、mixiにモバゲー、メイプルストーリーやってて、特にメイプルストーリーでクラスの男子、先輩の男子とかと仲よくしてたんです。たまに教室行っても「昨日あれヤバかったじゃん」みたいな感じで、男子とずっとしゃべってて。

--学校行かなくても会話は出来る。

まお  そうなんです。だから寂しいって感じはなかったです。でも先生にも反抗するし、すごい問題児ではありましたね。でも連れ回す友達はいないからヤンキーにもなれない(笑)。

--じゃあ基本家にいる。

まお  そう、家にいてネットするか、アニメ見てるか。バラエティとかも見なかったし、アイドルもいっさい興味なかったです。ただアニメは見ててもアキバに行ってみたいとかぜんぜんなかったなあ。

田舎って結局逃げる場所がないんですよね

--それで高校に入って、最初のアイドルグループ・アミ~ガスに入りますよね。

まお  高2のときに入りました。その時にもアイドルとか芸能は興味なかったんですけど。

--じゃあなぜアミ~ガスに入ろうと思ったんですか。

まお  小学校が一緒だった女の子がアミ~ガスに入ったんですよ。で、当時の初期メンバーの顔見たら「あ、わたし全員勝てるな」と思ったんですよ。

--わはは、自身満々!

まお  その時は部活でも学校でも居場所がなくて、でもここやったらセンターなれるやん?って思って、ひまつぶしで入りました。でも入ったら入ったで、すごい大変で。

--歌とかダンスとか覚えること多いですからね。

まお  それと最初5人だったんですけど、2人と2人が派閥に分かれてたんですよ。それでわたしは基本ひとりで。その間で「まあまあ」ってやっていくのもつらくなって、それで森永さん(アミ~ガス・せのしすたぁのプロデューサーであり、ほとんどの作詞作曲を手がける)と仲良くなった。

--やっぱ女社会だとうまくいかないんですね(笑)。

まお  今はいいんですけどね!みんな年下なんでうまくやってます。

--辞めようとは思わなかったんですか。

まお  それは思わなかったです。あんまり力は入ってなくても、やったらやったで一生懸命になるタイプだから、そこでは頑張ってやってました。それに学校行ってた時に比べたら、悩まなくなりましたね。人間関係はあいかわらず上手くはないんだけど。

--アイドルだと歌とダンスもやらなくちゃいけないですけど、それは上手く出来ました?

まお  私ダンスめちゃくちゃ下手なんですよ。だからめちゃくちゃ練習しましたね。せのしすたぁでは本当に練習しないんですけど、アミ~ガスはちゃんとしてます。

--せのしすたぁは振り付け少ないですからね。歌は最初から歌えました?

まお  歌はメンバーの中でもけっこう上手かったんですよ。変な癖はあるけど、音感はいいと言われていて。ただ声はぜんぜん違います!

--今はけっこうなハスキーボイスですけども。

まお  いやあ、もうめちゃくちゃいい声でしたよ!ハスキーはハスキーだけど、今ほどはひどくなかったですね。今は私生活に支障が出てますもん。お店で注文すると『え?』って聞き直されるから、絶対指差すんですよ。電話越しで『まおです』って言ったら『まほさんですか?』とかはしょっちゅう。

--アミ~ガスでお客さんも含めたアイドル文化って触れたと思うんですけど、最初の頃どう思ってました?

まお  なんか当時はファンはいたけどカメコ(カメラ小僧)ばっかで。言ったら気持ち悪い現場だったと思います。

--ははは!はっきり言うなあ。

まお  ファンの人には申し訳ないけど。なんかライブを楽しむというよりは、自分がいい写真撮りたいから来てるような、わたしたちもただのモデルみたいになってて。

--タダで撮れるから来る、っていう。

まお  そう。だから、なんか私の好きな現場ではなかったですね。やっと東京に出始めて、お客さんが自分のライブを楽しんでくれてるんだってわかったんですよ。それで東京っていいなって思いました。

--お、やっと東京の話が出始めました。せのしすたぁもまおさんは2012年からスタートしてますけど、2013年3月までの旧メンバー期とそれ以降のゆーたん・みか(2013年~17年所属)が加入してからの現メンバー期に大きく分かれますよね。

まお  最初のころはあんまり楽しくなかったですね。いちおう福井県外でやるためのグループとしてアミ~ガスの中から選抜して作られたんですけど、他に呼ばれても浮いちゃうんですよ。それにメンバーも『外でやりたくない』って言うし、なんのためのグループかわかんなかったんですよ。だからせので福井の外でやりたいとか、東京行きたいとかぜんぜんなかったです。

--正直ここまでアイドル楽しそうな話がぜんぜん出てきてないんですが、それでなぜ続けてたんですか?

まお  森永さんと事務所の社長に、嫌だった人生を救ってもらったって思ってるんですよ。ちょっと細かくは話せないんですけど、親が離婚してから家庭環境があんまりよくなくて。それを人にずっと言えなかったんですけど、高2の時に森永さんに言ったら、いろいろ動いて助けてくれて。それから森永さんとの関係は切りたくないと思いましたね。

--信頼できる大人に会えた、という。

まお  そうですね。

--ぶっちゃけ家出しようとか思わなかった?

まお  でも友達もいないし、田舎やから漫画喫茶とかもないし、お金もないし。田舎って結局逃げる場所がないんですよね。

当時のことって薬飲んでたからまったく記憶がないんですよ

--じゃあ本当に森永さんや社長に報いなきゃっていうのはあるけど、アイドルとしてむちゃくちゃ売れようとか、そういう感じではない。

まお  そうですね。その時は一生懸命やってたし、アイドルってものに自分はなれて嬉しいって思ってたけど、「売れるって何?」って思ってて。絶対AKBにはなれないじゃないですか。

--現実味はないですよね。

まお  ただ、その頃から地下アイドルが流行りはじめて、ゆーたんとみかの3人でやるようになって、まず東京で売れはじめたんですよ。人気だったBiSが解散して、そういうノリが好きな人が増えて。それでやっと「東京ってええやん!」って思いました。お客さんもノリいいし。全然地元よりいいって。

--ライブも増えていきましたしね。フェスみたいな大きいイベントもだし、バンドとかの対バンも。

まお  最初に大きかったのは下北シェルターでやったNATURE DANGER GANG、ハバナイ(Have a nice day!)、younGSoundsとのライブでしたね。自分が楽しいと思ってるライブを楽しんでくれてるのが嬉しくって。そこからは「こっちでやったほうがいいじゃん」って。で、東京っていうものにも、憧れっていうよりは、興味が湧いたって感じですね。

--なるほど。せのしすたぁに入って性格変わりました?

まお  変わりましたね。21歳までは人の気持ちもわからないし、自分だけで精一杯でした。前のメンバーの時代から鬱病になっちゃってたんですよね。当時のメンバーとの関係がけっこうストレスで、辞めちゃってからも結構病気が残っちゃって。当時のことって薬飲んでたからまったく記憶がないんですよ。その頃に会った人は、いまだに会っても「はじめまして」って言っちゃう。だからその頃ケムタさんにも取材されてたりするけど、その時のことは覚えてないんですよ。あとで本見て「こんな事話してたんだ」みたいな。

--ツイッターでもネタにしてたりしますけど、薬で体型も変わってましたもんね。

まお  最初、社長に勧められた病院に行って処方した薬飲んだら太っちゃって。その後主治医を変えたら、その人が中学時代にカウンセリングしてくれた先生だったんですよ。だから全部知ってるんですね。そこで薬も変えて良くなっていって。

--正直アイドル辞めた方がよかったんじゃないかと思うけども。

まお  その選択もあったけど辞めなかったですね。

--それは森永さんたちへの恩もあって?

まお  そうですね。でも森永さんもわたしもギリギリでしたよ。わたしが高速道路の走行中にドア開けて、片足伸ばして外出ようとするけど、シートベルトしてて行けない、みたいな。そんなんで何回も車傷つけました。フロントガラスをバキバキに割ったり。

--ギリギリどころじゃないですね。

まお  そんな感じで気分コロコロ変わっては暴れてると、森永さんも嫌になるじゃないですか。森永さんもわたしを首絞めて、自分もその後死のうって思ったこともあるって。結構ヤバいところまで行きましたよ。

--アッパーなステージの裏はそんな感じだったんですね……。

まお  ずっと周りから認めてもらってないと思ってて。自分出せないし、自分のこと全員嫌ってると思ってたし、私も嫌いだったから。

--それが攻撃的なステージとして奇跡的に昇華されてたのかもしれないですね。精神的には全員敵だ、みたいな。

まお  そんな感じでした。だからもう周りも「病む」とか「鬱」とか簡単に言うなって!って思いますもん(笑)。他のアイドルに比べたら私一番苦労してるって自信ありますね。

--そんな自信はいらないけども(笑)。

まお  結局22歳くらいで変わりました。みかが辞める前くらいですね、やっとひとりでも大丈夫になったのは。鬱病がよくなってから、やっと私って人に救われて生きてきたんだって気づいたんですね。しかもゆーたんとみかは、私のわがままとか気の強いところを我慢して、我慢しまくってやってたんだってことまで気がつけるまで良くなって。

最初の一人暮らしはファンの人に調味料や野菜差し入れしてもらってました

まお  それで去年、一度東京で一人暮らしがしたいと思ったんです。自分の記憶もはっきりしてきて、わたしもひとりでやれるんだぞって姿を見せたかったって気持ちはありましたね。

--なるほど、精神的にひとりでやれるぞ、と。

まお  それで森永さんに相談して、「とりあえず1か月住んでみて、おれが大丈夫って思ったらやっていいよ」って言われて。

--それでお試しに一ヶ月都内に住んでみたと。

まお  まず出張用とかのウィークリーマンションで一ヶ月住むことにしたんです。でも行って驚いたんですけど、ぜんぜん清掃されてなかったんですよ!前の人の使い方がすごく汚くて、もうゴミ屋敷。水まわりとかもうほぼカビっぽくて。

--ひー!

まお  毛がいっぱい落ちてて。で、それですぐ業者の人呼んで、それで初日は漫喫に泊まりましたね。1日目がこれで、大丈夫か東京!?って(笑)。

--一人前の新生活を夢見て来たのに(笑)。

まお  そう!しかも部屋がきれいになっても今度はベッドが壊れてて、ひでえ!って。

--いくら住むのが短期間とはいえ、これはないだろうって

まお  びっくりしました。でも心は折れなかった!

--じゃあ部屋綺麗にしてもらって、東京に一人暮らしして大変なことありました?

まお  何も持ってこずに来たんで、最初はひたすら100均に通って必要なものを買い揃えたんですよ。でもお金もだんだん減っていって。でも自炊したいって気持ちもあったから、野菜買って、調味料買って。でもちょっと足りないから、ファンの人に「調味料くれ!」って。

--ははは!

まお  何が欲しい?って言われて、野菜リクエストして買ってきてもらったりとか。

--差し入れで野菜持ってくるアイドルとファンの関係ってのもすごいね(笑)。

まお  あとカップラーメンとか。でも生きるために、食事を削るしかないっていって。もったいないから食べないって生活をしてたら体重も減ってガリガリになっちゃって。そしたら体力もなくなって。ずっと風邪ひいてました。

--ご飯は食べなきゃダメですよ!

まお  それでライブのほかにカリガリ(秋葉原のカレーショップ)でバイトしたりして、生活費に充てて。森永さんが心配して、毎日連絡来たけど、全然大丈夫じゃないけど「大丈夫だよ」つって。ここで踏ん張んなきゃ、って絶対弱音は吐かなかった。貯金すぐなくなりましたけど。

--お試しでぜんぶ無くなりましたか。

まお  なんとか一ヶ月住んで、森永さんから東京に住む許可も出たんですけど、そのタイミングで最高じぇねれーしょんのメンバーになることになったんですよ。

--栗原ゆうさんプロデュースのアイドルユニットですよね。

まお  でも最じぇねって活動の中心が大阪で、大阪行くことも多くなるから、わたし東京住めないじゃん!ってなって。

--福井と東京と大阪、拠点が3つになった。ちょっと東京で家賃払ってアパート借りて住むのは効率悪いですよね、それ。

まお  そうなんです。だから福井にいる時は家で、大阪の時は栗原さんのお店(ライブカフェ&バー・エミュリボン)の寮みたいなのがあるんでそこに泊めてもらって、あと東京ではサウナ暮らしっていう。だから東京ではホームレスアイドルですよ!

歌舞伎町深夜のサウナはヤバい女しかいないです

--ホームレスアイドル(笑)。サウナ暮らしって言ってますけど、最初は仕方ないから泊まるって感じでした?

まお  最初はそうだったんですけど、わたしホテルで1人でいるほうが不安なんですよ。誰かがいてくれたり、誰かがざわざわしているほうが居心地がいいんで。いまは家みたいな。

--そんなに馴染んだんですね(笑)

まお  自然に「ただいま~」みたいな感じで。ちょっとお金があるときはカプセルに入るんですけど、大部屋で雑魚寝もウェーイって気分になります。

--東京というか新宿や渋谷あたりで安く泊まるって、サウナか漫画喫茶になっちゃいますよね。

まお  漫喫はちょっと厳しいですね。つらかったりする。

--漫喫だと何がつらい?

まお  布団がないのが厳しい。そこのサウナはちゃんと毛布もあるし、空調管理もしっかりしてるから寒かったりしないんですよね。

--東京には結構連泊でいますよね。1週間パックみたいのあるんですか?

まお  ありますあります。歌舞伎町のサウナなんですけど。

--具体的な場所は書かない方がいいだろうけども。

まお  でも新宿の歌舞伎町ってツイッターとか配信でも言ってるんで。

--言ってるんだ(笑)。まあ女性用のとこだったら、わざわざファンが来ることもないか。

まお  いまのとこは危ない目にも遭ってないですね。

--みんな疲れて来るから揉め事とかはないのかな。血気盛んな人はサウナ来ないだろうし。

まお  みんなも自分の幕を貼ってる感じですね。

--なるほど、人とかかわりたくないムード出してる感じで。

まお  そうですね。ただ、いつも泊まるのは女性用なんですけど、もうヤバイ女しかいないんですよね、基本的に。

--歌舞伎町深夜のサウナ話、聞きたいなあ。

まお  全身タトゥーの女もいるし、めちゃくちゃ耳たぶの皮膚が見えないくらいのピアス開いてるやつとか、そこらじゅうにピアス開けてるやつ。あとプリンになってる髪がもう栄養の行き届いてないやつ。毎回同じロッカーを使ってるキャバ嬢ぽいやつとか。

--歌舞伎町っぽい!そういう世界なんだなあ。

まお  見た目からしてヤバイ、すっげえメンヘラとかいますよ。ずっと下向いてるやつとか。でも意外とおばちゃんとかもいて、「この人何やってるんだろう?」みたいなのと、あとは観光客みたいな。

--まあ、一週間連泊してるまおさんも周りから見れば謎だと思うけど(笑)。

まお  絶対謎だと思われてますね。

--普通のOLとかいないでしょ、やっぱり。

まお  いないです。前に一度観光客の人が風呂場らへんで倒れたことがあって。なんか私も気失うときあるから「やばい!」って思って、とっさにいろいろ対応して、救急車呼んだことあるんです。

--救急車呼ぶとこまで?

まお  はい。店員がもう全然テンパっちゃってるから、わたしが「タオル巻いてください!」とか指示して。倒れた人の友達に「救急車が来たらあなたが行かなきゃいけないから、服着替えてこっち来てください」って言ったり。

--はははは!お店もアイドルに何やらせてるんだ(笑)。

まお  私がめちゃくちゃ仕切って、人を助けたんです。

--すごいなあ。5年くらい歌舞伎町のサウナ中心に生活したら、『夜回り先生』みたいな感じで『夜回りアイドル』とか出版とか映画化の話来ると思いますよ(笑)。

まお  あと配信のSHOWROOMってあるじゃないですか。あれやってる時、サウナの中だと迷惑だから、歌舞伎町の道で座ってやってたんですよ。そしたら外国人に「イクラ?」って聞かれたんですよ(笑)。

--ははは!しかも配信中に!

まお  インドかネパール系の人だったかな。本当、放送中に言われて。2回その人に聞かれたんですよ。1回目は「イクラ?」って言われて。「え、ヤバいんだけど!」みたいな放送してたら、また「イクラ?」って。めっちゃ買いたがるやんって(笑)。

福井でせのしすたぁナメてる奴らをギャフンと言わせたい

--じゃあ今は福井と東京と大阪を行ったり来たりしてるわけですね。

まお  もう慣れましたね。だいたい深夜バスですけど、それでしんどいってことはあんまないですね。それで一泊できるし。

--今も東京に対する「住みたい」っていうのはまだありますか?

まお  そりゃあ住みたいです。

--それは一人前になった自分を試したいという気持ちですか。

まお  それもあるけど……。

--あんまり東京に対する憧れはないって言ってましたよね。アキバとか原宿行きたい、みたいな。

まお  あー、それはないですね。ちょこちょこ来てたのもあって、東京の汚いとこ見てた気がして。ロフト(ライブハウス)界隈で酔いつぶれる男とか、路上でゲボ吐いてる人とか。

--せのしすたぁのライブはお客の飲酒率高いからなあ(笑)。

まお  だから芸能人にも興味がなかったし、今もないし。憧れてる芸能人もいないから、華やかなところに行きたいっていうのはなかったですね。汚い、住みにくいっていうのはわかってたけど、絶対に人と会える場所だってことだけはわかってたから、それだけですよね。

--人と会うには東京だ、と。

まお  人とのつきあいが大事だなって今は本当に思ってるんで。東京にいたら、絶対いろんな人に出会えるっていうのがいままでの経験で思ったし、知り合い増やしたいと思ったし。

--知り合いを作りたいって気持ちになったんですね。昔は知り合いいらない、だったのが。その変化は何なんでしょう。

まお  認めてくれる人がひとりでも多ければ、私が気持ちよくなれるから。

--なるほど。

まお  鬱の時はずっと周りが認めてくれない、って思ってたんですけど、自分が住みやすい、気持ちいい環境にするには、自分からまず行動しなきゃってやっと思ったんですね。

--うんうん。

まお  そこに気づけたんですよね。私が変わんなきゃ!って思いました。

--ちなみに、いま福井自体は好きですか。

まお  今は好きになりました。昔は好きじゃなかったです。だって、いい思い出もないし。東京は遠いし、大阪もまあまあ遠いし、行きにくい。でも、東京に住んで、福井に帰ってきたときに、めちゃくちゃいいじゃん空気!って思ったんですよ。空気も自然も、ほんとに静かだし。ああ~、いいとこだな!って思いました。

--まおさんの人間的な環境がよくなったからっていうのもあるのかもしれないですね。自分自身も、関わる人たちも。

まお  あ、もちろんそうですね。

--今は福井の状況もいいわけでしょ、アミ~ガスの方も。

まお  そうです。いまメンバー9人いて、その中に私とゆーたんもいるんですけど、メンバーは結構可愛い子がいて。撮影も禁止にして、最近はいいオタクがつき気味。

--いいオタクが(笑)。

まお  接触も極力させないんですよ。ほんとに森永さんの曲が好きだとか、頑張ってる女の子がいいとか、そんな感じの人が中心で、重たいオタクは少ないですね。ガチ恋もたぶんいないと思う。

--地方だとそのくらいがいいんでしょうね。濃すぎないくらいが。

まお  家族対象に、子供の憧れのお姉さんになれるような意識でやってます。

--まおさんはアミ~ガスではお姉さんしてますか。

まお  むちゃくちゃお姉さんしてますよ!せのでは子供やけど、アミ~ガスでは一番大人ですね。結構厳しいっすよ。全然ダメだったら、名指しで注意もするし、曲バーンと止めて「なめんなよ!?」って。めちゃくちゃ怖いですよ、わたし。

--鬼リーダーだ。

まお  鬼ですよ。他のアイドルにも厳しいけど、自分にも厳しいし、自分のグループにも厳しい。それでもついてきてくれます。「まおさんが好きだ」って言ってくれるから。本当いい子が集まってます。

--そんな大事な場に福井がなってるのはいいですね。では最後に、地元でやり残したことってあります?福井であとこれをやっておきたい、みたいな。

まお  福井であとこれをやっておきたい……そうだ!ぜんっぜん福井のテレビ局に取り上げてもらってないんですよ。めちゃくちゃ知ってるはずなのに、まったく取り上げられなくて。しかもすっげえナメてるんですよ。なんかテレビ局とかのフェスとか、地元のご当地アイドルとして呼んでくれてもいいじゃないですか。

--そうですね。

まお  福井のシンガーソングライター呼んで、福井のお笑い芸人呼んで、アイドルは仮面女子さんなんですよ。なめんなよ!

--わざわざ東京から仮面女子呼ばれたかー。

まお  そこで福井のアイドルなんで呼ばんのや!?って。だから福井のテレビ局に『うわあ、もうちょっと早く気付けばよかった!』と思われたい。『福井のアイドルとか(笑)』って気取ってるやつおるんすよ。そういうのをギャフンと言わせたい!それもなんなら東京で売れてから『出てください』って言わせたい。それがまだ福井でやりたいこと!

以上のインタビューをまおさんにお願いしたのが今年の夏前。こちらが手をつけるのが遅くなり掲載が夏を越えて申し訳ない……と思っていたら、まおさんが東京で一人暮らしをはじめました!

せのしすたぁ公式ブログ:まおさん!一人暮らし!
https://ameblo.jp/senosister/entry-12404132170.html

ツイッターでもハッシュタグ「#まおらいふ」で一人暮らしの日々がつぶやかれてます。まおの上京ものがたり、ここから本当のはじまりです。

せのしすたぁ まお 公式ツイッター https://twitter.com/seno_mao
せのしすたぁ公式ツイッター https://twitter.com/senosister_info
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最高じぇねれーしょん公式ツイッター https://twitter.com/saigene_info

◆撮影協力:秋葉原カリガリ
東京都千代田区外神田3-6-9 沖村ビル1F
http://caligari.jp/
*まおさんも店員として働くことも!入る日は彼女のツイッターで告知されます。

大坪ケムタ

1972年佐賀県生まれ。アイドル・芸能・アダルト・食・プロレスなど、主に黒いTシャツを着た太った中年が好きそうなジャンルをよろず請け負うフリーライター。著作にゆるめるモ!田家大知Pとの共著「ゼロからでも始められるアイドル運営」(コア新書)、「SKE48裏ヒストリー ファン公式教本」(白夜書房)など。最近は渋谷ロフト9等のトークイベント丁稚も。

ウェブサイト: http://otb.hatenablog.jp/

Twitter: kemta