現政権や松本竜氏、マスコミを批判させてもらいました。素人考察ですが、気休めにでもどうぞ。
みなさんご存知のとおり、無能だなんだと酷く叩かれた松本氏ですが、部下には評判がよく実績もあり、高い実務能力を期待されて復興大臣に選ばれました。今は目立たない「チームの責任は自分がもつ」「(国に)もっと甘えてこい」という発言からも、親分肌の人柄がうかがえます。
しかし、本人も言うとおり粗野なオヤジでもあり、被災者の前に立つようなデリケートな立場には向きません。屁理屈で上下関係を押しつけたり、「九州人だから東北の地理は分からない」「B型だから短絡的」とくだらない冗談を飛ばしました。実際は被災地には詳しく、血液型診断も信じているとは思えませんが。
個人的には麻生太郎元首相が連想される、偽悪的な人物です。当時の麻生氏へのマスコミや世論の反応を考えれば、松本氏は目立たないポジションで働けばもっと役に立ったはずですが、現政権にはそういうフォローをする能力は無いのでしょうか。上手く扱えないなら、ですます調で喋れる人くらいは最初から用意してもらいたいですね。
会談全体を見なければ程度の判断は難しいですが、マスコミや私たち“世論”が批判するべきなのは、松本氏の“相手を自分より下に位置づけて自分を優位に立たせる”姿勢そのものでしょう。県知事と復興大臣、自治体と政府が対等な信頼関係をつくるための場で、権力闘争に通じる理屈、君は無能だから私に従え、という関係をつくろうとしたことが問題なのです。
テレビなどでは「(知事本人を除く)被災者に失礼」という批判が多く見られましたが、基本的には的外れでしょう。あれは県知事と復興大臣の会談ですから、問題視された発言は“県知事への”言葉であって、“(知事以外の)被災者や世間への”言葉ではありません。そういう反応を避けることこそ、政治的な有能さですが。
また、ほとんどこの件に触れていなかったマスコミは、東北放送が注目されてから一斉に報道をはじめました。どこも同じ動画で似たような報道をしていましたが、カメラを持って取材したのは東北放送だけだったのでしょうか。
“オフレコ”発言の取り上げ方も気になりました。言うまでもないはずですが、恫喝だと考えたのなら、もっと派手に批判するべきです。叱責とは違って“オフレコ”発言では復興相や県知事などは自然に笑っていたので、個人的にはブラックジョークだろうと思いますが。それにしても、冗談なんか言ってる場合じゃないという批判や、不適切な発言だが悪気は無いだろうという擁護はあってもいいはずです。すべてのマスコミで取り上げるべきとは言いませんが、どちらもほとんど目につかなかった理由は気になるところです。
松本氏の辞任という結果は、マスコミや私たちが一斉に非難し、被災者が不信感を煽られ、国会が追求のために空回りする状況では、正しい行動だったと思います。松本氏の無能さを責めるのは簡単だし、実際にそればかり溢れましたが、マスコミや私たちも少し対応の仕方を変えれば、もっとマシな結果になるのではないでしょうか。そんなわけで、誰の得にもならない足の引っ張り合い、“今までどおりの日本”の悪い部分が強く感じられたニュースでした。
追記
既に同じような論点を述べている方々がいらっしゃいました。当記事よりもしっかり整理された、見識の深いご意見だと思います。リンクは掲載しませんが、ご覧になることをお勧めします。
nikkei BP net〈日経BPネット〉
「社会党の麻生太郎」こと松本竜氏の辞任劇:田原総一郎氏
内田樹の研究室
暴言と知性について:内田樹氏