琥珀さんの拳の重さを……黒い高級車の衝撃を感じろ! 4DX版『HiGH&LOW THE MOVIE』のバイブスがヤバイ

  by 藤本 洋輔  Tags :  

EXILE HIROが総合プロデュースする一大エンターテインメントプロジェクト『HiGH&LOW』は、誕生から約3年の間、ドラマ、コミック・アニメ、音楽アルバム、ライブなど様々な形態で展開してきた。

なかでも映画シリーズは、『HiGH&LOW THE MOVIE』、『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』、『HiGH&LOW THE MOVIE 2/FINAL MISSON』、スピンオフ『HiGH&LOW THE RED RAIN』など、現在もその世界を広げ続けている。EXILEや三代目 J Soul BrothersらEXILE RIBEのメンバーや若手俳優らをメインキャストに、山王連合会、鬼邪高校らチームが割拠するSWORD地区での抗争、彼らの排除をもくろむ九龍グループとの対決を描いてきた同シリーズに、LDH(EXILEらの所属事務所)、俳優、特撮、アクションなど、様々なジャンルのファンが魅了されている。

映画『HiGH&LOW』シリーズは、アクションやキャラクター性、物語といった内容だけでなく、上映形態も特徴的。シリーズを連続鑑賞する“イッキミ上映”、声だしやサイリウムの使用も可能な“応援上映”、ライブと映画を同時に楽しむコラボイベントなどでファンを楽しませてきた。

そして、そんなハイローの可能性をさらに拡張する4DX(フォーディーエックス)での劇場公開が8月24日からスタートする。海外のビッグバジェット作品を中心に展開する4DX上映で、ハイローはどんな進化を遂げるのか? Huluのドラマ版からシリーズを追い続けてきたライターが、2週間の限定公開を前に『HiGH&LOW THE MOVIE 4DX』を体験してきた。

思いのほか4DX向きだった『HiGH&LOW』

まずは4DX上映がどんなものなのか、簡単な説明が必要だろう。韓国のCJ 4DPLEX社による4DX(フォーディーエックス)は、映画の映像・音声に合わせて、劇中の環境を体感できるシステム。シートが前後上下左右へ動き、背中への衝撃、振動、耳や首筋へのエアー、足元に何かが触れるような感覚などを感じられるほか、風、水、霧、雨、嵐、雪、香り、煙、フラッシュ、バブルなどの物理的な効果を楽しむことが出来る。

ゆえに、『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』といった、SFやアクション、ホラーなど特殊効果を多用する作品が選ばれることが多い。邦画としては破格のスケールのアクションで注目された『HiGH&LOW』シリーズだが、登場する多くの演出は肉弾アクションのはず。正直、大丈夫なの?

映画のオープニングを体験するだけでも、そんな心配が杞憂であることがわかる。トラックが商店街に突っ込み、山王連合会のヤマト(鈴木伸之)が「街がめちゃくちゃだろうが!」と名台詞を吐くに至るまでの一連の流れは4DX演出がなくとも衝撃的だが、その後にSWORD地区のロゴが「ガキーン!」「シャキーン」という効果音とともに組みあがるたびにシートが振動。立木文彦が各チームを紹介する激アツナレーションも相まって、ただでさえテンションを爆アゲしてくる主題歌「EXILE TRIBE / HIGHER GROUND feat. Dimitri Vegas & Like Mike」の高揚感を増幅する。さらに、各チームがバイクで登場する際のバイブレーションも加わるので、臨場感がますます増していくのである。この時点で、あなたの心の中にいるEXILE SHOKICHIが「バイブスがヤバイ」と声を上げるはずだ。

『HiGH&LOW THE MOVIE』Best Action Scenes Special Trailer(YouTube)
https://youtu.be/5uwxJW_rm-0

さて、『HiGH&LOW』の醍醐味と言えば、大内貴仁アクション監督(『亜人』など)率いるスタントチームや、身体能力抜群の若手俳優らによる、身体を張った肉弾アクションだろう。4DX上映では、キャラクターが受けるダメージを物理的に再現することで、ハイロー世界のバイオレンスな部分を体感させてくれる。モブキャラを含め、誰かが殴られたり蹴られたりするたびに、シートから「ボコッ!ボコッ!」と突起が飛び出し、人が吹き飛ぶシーンではシートの傾きが三半規管を刺激し、ガチ喧嘩に参加しているような感覚を与えてくれるのである。

こういった4DX演出によって、ICE(ELLY)に一撃でのされる関ちゃん(一ノ瀬ワタル)や、九十九(青柳翔)にシメられるキリンジ(小野塚勇人)、セイラ(大屋夏南)に落とされるSHIMURA(樽美酒研二)の気持ちが痛いほど伝わってきた。いや、もちろん実際には「痛い」と感じるほどの物理的な刺激を受けるわけではないが。そのほかにも、スモーキー(窪田正孝)と劉(早乙女太一)の対決では、思いもよらない効果で“青龍刀の恐怖”を感じさせてくれる。とにかく細かな部分にまで演出が施されていて驚かされる。4DXによる臨場感の強化は、『HiGH&LOW』がいかにアクションで人間の感情を語る作品であるかを、あらためて明確にしてくれるのである。カメラが目まぐるしく動き回る500人 VS 50人の大乱闘や、ラスボス琥珀(AKIRA)VSコブラ(岩田剛典)・ヤマト・九十九の決戦シーンがどんなものになるか……もはや言うまでもない。

4DXで明らかになる“こだわり”のヤバさ

アクションシーンの影に隠れがちだが、久保茂昭監督がPV制作で培った美意識あふれる画づくりも『HiGH&LOW』の大きな魅力。4DX効果はバイオレンスシーンだけでなく、映像と音楽の力をさらに補強してくれるのである。

例えば、劇中屈指の美しさで知られる達磨一家の集合シーン。鮮やかな赤い法被と傘の間を縫って日向紀久(林遣都)が登場するこの場面では、4DXの“雨”効果がひんやりとした空気を感じさせてくれる。RUDE BOYSの本拠地・無名街が焼かれるシーンでは、炎の中から立ち上がるスモーキー(窪田正孝)が感じた熱を、“熱風”効果で表現。ほかにも“雪”や“潮風”などの様々な状況を。使用していないのは“香り”くらい。思いのほか『THE MOVIE』には様々なロケーション・シチュエーションが登場していたのだ。

また、人物が建物に入る場面や、移動シーンでも微妙にシートの角度が変化。基本的にカメラワークにあわせて座席を動かし、細かな場面での視線の変化を再現しているのである。セットや衣装だけでなく、製作陣がいかに細かな部分にまでこだわっていたかが明らかになった。

PKCZ feat. AFROJACK, CRAZYBOY, ANARCHY, SWAY, MIGHTY CROWN (MASTA SIMON & SAMI-T) / MIGHTY WARRIORS(YouTube)
https://youtu.be/uvpPX50ElpE

そして、他のあらゆる映画と一線を画すのが、ICE率いるMIGHTY MIGHTY WARRIORSのライブである。「音楽とファッションの力で自分たちの理想郷を作る」ことを標榜するチーム・MIGHTY MIGHTY WARRIORSは、クラブFUNK JUNGLEで夜な夜なパーティーを繰り広げるので、当然ながら劇中にも何度かライブシーンが登場。ICE役のELLY、バーニー役の白濱亜嵐、9役のANARCHY、パール役の野替愁平(SWAY)ら“本職”のアーティストによる「MIGHTY WARRIORS」「FUNK JUNGLE」のパフォーマンスでは、ベース音に合わせた突起物の隆起による刺激により、身体を振動させる。ライブハウスでじっくり音楽を聴くタイプの方も、強制的にノセられるはずだ。

グ・ジェウォン(CJ 4DPLEXクリエイティブ・ディレクター)インタビュー

4DXの担当者は、何を目指し、どこにこだわって4DX演出を施したのか。CJ 4DPLEXクリエイティブ・ディレクター グ・ジェウォン氏のインタビューをご紹介しよう。

――今回の4DX演出に、『HiGH&LOW THE MOVIE』の製作陣はどのように関わっているのでしょうか?

最初に、松竹のプロデューサー1名、宣伝担当者1名、セールス担当1人ほか、6名様による4DX演出試写で確認していただきました。その場にいらっしゃった全員が大満足で、「4DXのモーションと映画が自然と和み、アクションに迫力が加わった感じで、とても良かった」、「緊迫した場面で4DXにより、より緊張感が増して良かった」、「音楽とアクションが多い映画だけあって、4DXには最適だった」など、4DX公開への大きな期待感を抱くコメントをいただきました。LDHさんやキャストのみなさんはスケジュール上、試写に参加できなかったとのことでしたが、4DX版公開後にご鑑賞いただけるように機会を設けられたら、と思ってます。

――衝撃や座席の角度の変化といったさまざまな4DX演出は、どなたがどうやって決めているのでしょうか?

定期的に日本の観客を対象にした満足度調査や、大作映画上映後の劇場による現場のフィードバックなどを通じ、4DXは「より楽しい鑑賞・体験の経験」を感じられるように改善されています。韓国の本社とハリウッドに4DXスタジオがあり、約30人のプロデューサーによって、蓄積されたノウハウを活かして、特定のシークエンスのデータベースシステムを構築しています。

――琥珀やコブラ、黒い高級車など、場面やキャラクターごとに衝撃の大きさや種類が異なっていたのに驚きました。どんな基準で演出を決めているのでしょうか?

それぞれのキャラクターの役割、各キャラクターが乗っている車両の種類と特性、劇中の流れを考慮して演出をしました。特に、琥珀の最後の戦い(3対1で戦うシーン)は、映画のクライマックスであるだけに、インパクトあるアクションとして仕上げるための演出を加えました。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』4DX演出では、各キャラクターを分析し、それぞれ異なる個性を表現したことが大好評だったので、『HiGH&LOW THE MOVIE』でも同様に、各キャラクターの個性を表現するようにしました。また、キャラクターによって、バイク、大型トラック、スクーターなど、様々な乗り物を操る点で、それぞれの特徴を分析し、固有のリズムや動きにあわせて動きの程度を把握し、乗り物の特徴を明らかにするような演出を加えました。現在絶賛上映中の映画『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』4DXでもバイクチェイシングが大好評ですが、『ミッション:インポッシブル』シリーズ、『ワイルド・スピード』シリーズなど、4DXデータベースに蓄積された様々なシーンを介して、さらにディテールにこだわった演出ができたと思います。

――車の事故シーンなど、一部の“4DX演出がない”シーンも気になりました。あえて4DX演出を施さない場面もあるのでしょうか?

車の事故が出てくるシーンは、あるがままの状況、そのままの情報伝達をすることが重要だと判断し、動きは最小限にし、最後の部分だけモーションを加えることで、劇的な流れと緊張感を与えるようにしました。これ以外のシーンはネタバレになるため、実際に4DXの劇場で楽しんでいただきたいです。

――ライブシーンでは、何を意識して4DX演出を加えられたのでしょうか?

4DXは2016年から、日本でも大きな反響をいただいた映画『BIGBANG MADE』や、台湾のロックバンドMAYDAY (五月天)などのグローバルなミュージシャンのコンサート映画を介して、音楽/ライブシーンに関連する独自のノウハウを持っています。アニメーション映画『リメンバー・ミー』の4DXでも“リズミカルモーション”で反響を起こしたことがあります。『HiGH&LOW THE MOVIE』では、特にTHE MIGHTY WARRIORSのライブシーンで観客が映画の中の現場にいるかのようなリズム感を満喫できるように、臨場感、リズム感を最大限に活かしたモーション演出に気を配りました。秋には、映画『ボヘミアン・ラプソディ』もグローバルに4DX上映を計画中なので、4DXが音楽ジャンルの映画にもマッチすることを証明できればと思います。

――4DX版が完成するまで、本編をどのくらい観返しましたか?

ハイライトのアクションシーンや、4DX演出の多いシーンだけではなく、作品がもつ全体の世界観や流れを把握すべく、数え切れないほど何度も観ました。

――4DX演出を加えるにあたり、最も苦労したシーンを教えてください。

クラブでのシーンや、最後のバトルシーンです。クラブでのシーンでは、リズムだけを作り出すのではなく、起承転結の流れを自然にするような強度やバランスをとることで苦労しました。また、最後のバトルシーンでは、スローなど、様々なバトルの描写が表現されると同時に、カメラの動きも複雑なシーンなうえ、これらの多様な要素が絶えることがなかったので、モーションチェアのような4DX演出においても考える部分が多かったです。しかし、年間でトータル100本超えの映画を4DXにて演出し、その作業を通じて蓄積されたデータベースをもとに、細かいシーンでもディティールを逃さず、最高の体験を与えるために工夫しました。

ハイローマニアにおススメ 4DXのディープな楽しみ方

ここまでに紹介した4DX効果は、『HiGH&LOW』の初心者でも楽しめる非常にわかりやすいもの。最後に、シリーズを鑑賞済みの上級者むけの楽しみ方を提案しよう。グ・ジェウォン氏の言葉どおり、『HiGH&LOW THE MOVIE 4DX』では、キャラクターや状況によって、打撃・衝撃の大きさや種類が細かく調整されている。これはもちろん、現実世界と同じ感覚を再現したものではないが、劇中での相対的な“衝撃の大きさ”をシミュレーションすることは可能だ。

例えば、筆者が体感したところでは、“琥珀さん(バーサーカー)による全力パンチ”と、“黒い高級車が龍也(井浦新)をはねる衝撃”は大体おなじくらい。これを想定しながら鑑賞すると、「琥珀のパンチに耐えられる九十九が、車にはねられても死ななかったのは必然」「九十九は結構本気でキリンジを殴っていた」「無名街は燃えやすい」といったことが、これまで以上に実感できるようになる。

HiGH&LOW Special Trailer ♯14 「琥珀」(YouTube)
https://youtu.be/SQEmSDtoLx4

4DXで映画を観た後に、他作品と比べてイメージを広げることも可能だ。例えば、『アベンジャーズ』シリーズに登場する超人キャプテン・アメリカは、パンチでサンドバッグを吹き飛ばすほどの膂力の持ち主だ。『HiGH&LOW』の琥珀さんのパンチ力を“乗用車に轢かれた衝撃程度”と仮定すると、「この二人の強さが同じくらいなのではないか?」と、妄想を働かせることもできるのである。速さ、重さ、時間から、具体的な衝撃度を数値化することも可能だろう。このように、すでに『HiGH&LOW』を鑑賞済みの方にとっても、新たなキャラクター情報を得ることが出来る、それが『HiGH&LOW THE MOVIE 4DX』なのである。4DX演出が、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』などのデータをもとに組み立てられていることからも、あながち間違った考え方でもないのでは?

現在のところ、『HiGH&LOW THE MOVIE』以降のハイローシリーズの4DX上映の実施は未定。しかし、『HiGH&LOW THE RED RAIN』で雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)が放つウェイブパンチはどのくらいの衝撃なのか?『HiGH&LOW THE MOVIE 3/FINAL MISSION』でコブラが受けた生コン拷問は、どのくらい苦しいのか? など、想像するだけでもバイブスが高まるではないか。

ダン、テッツ、チハルを主人公とした最新作『DTC -湯けむり純情編- from HiGH&LOW』が9月28日から限定公開されるほか、山田裕貴が演じる村山良樹のチーム・鬼邪高校のスピンオフ作品公開も発表され、まだまだ広がる『HiGH&LOW』ユニバース。もちろん、ハイローの物語は永遠ではないし、いつかは終わりを迎えるだろう。しかし、4DXなどの技術の進歩が広げる楽しみ方の可能性は、MUGENだ。

4DX版『HiGH&LOW THE MOVIE』は8月24日(金)より公開。

4DX版『HiGH&LOW THE MOVIE』
上映期間:2018年8月24日(金)~9月6日(木)
入場料金:各劇場ホームページなどでご確認ください
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大阪生まれ京都育ち。映画館→アニメ映画制作会社→レンタルビデオショップ→WEB編集・ライター。アクション映画が専門分野。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。TRASH-UP!!( http://www.trash-up.com/ )などで主にアクション作品を紹介しています。ほか、SPICE( http://spice.eplus.jp/spicers/45/articles )でも。 執筆・などのご依頼は [email protected]

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