人間なら誰もが避けて通れない「死」を巡るマスメディアの報道のあり方について一石を投じるチャートが公開された。
I made this animation to show the avg share of cause of death from @CDCgov vs. avg share of @Google search trends and headlines from @guardian & @nytimes. The data was collected by Owen Shen et al. in a great post: https://t.co/UwprBpOtwN
Source code: https://t.co/o4Jq6MA6oc pic.twitter.com/BpLBRPyDEM
— Aaron Penne (@aaronpenne) 2018年4月17日
Same charts, but side by side in a static image for easier comparison. Drug overdoses is the category between suicide and homicide. pic.twitter.com/kpyMtgASKD
— Aaron Penne (@aaronpenne) 2018年4月17日
情報処理技術者のアーロン・ペンネさんが作成した上のチャートは
左:米国疾病予防管理センター(CDC)が発表しているアメリカ人の死亡原因
中:主要な死因のうち、インターネットユーザーが検索しているものの割合を『Google トレンド』で調べたもの
右:主要な死因のうち、英米を代表する大手新聞『ガーディアン』と『ニューヨーク・タイムズ』の見出しに現れたものの割合
の3つのグラフを比較したものだということだ。それぞれの要点を見てみよう。
実際の死因
上から、多い順に心臓病、がん、呼吸器疾患、交通事故、脳卒中・脳梗塞、アルツハイマー病、糖尿病、肺炎・インフルエンザ、腎臓病、自殺となっている。さらにその下に、グラフでは文字を書き込めないほど小さくなっているが、敗血症、肝臓病、殺人、テロリズムなどが続いている。
『Google』で検索されているもの
がんに比べ心臓疾患について検索する人が極端に少ない。理由としては、心臓疾患による死は突然死が多いのに対し、がんはある程度長期間に渡って患う人が多いためと推測できる。また、自殺、薬物中毒、殺人、テロリズムについて調べる人が多くなっている。アメリカでは近年、特に若い世代の自殺者が増え続けていて問題になっている。身体の異状を感じて病名を調べたり、自殺を考えたり止めさせようとしている人の多さが数字に現れているのだろう。
メディアの見出しに現れたもの
実際の死因では0.01%にも満たないテロリズムと、1%にも満たない殺人で半分以上を占める。逆に、身近でより多く発生している交通事故やアルツハイマーが見出しになる機会は少ない。数は多くても肺炎やアルツハイマーのような“家庭的”な死には報道価値がないということか。
多少なりとも本人が納得した上で死を迎える病気や自殺よりも、不本意に巻き込まれて亡くなる殺人やテロを恐れてしまう大衆心理は理解できる。しかし、国民病を差し置いて、件数にするとごく僅かな殺人やテロ事件をこれほど大きく扱うマスメディアの報道姿勢は客観・公正と言えるだろうか。
これはアメリカの話だが、日本も同じようなものだろう。いや、別の意味でもっと酷いかもしれない。テレビは騒がしい都会で起こった殺人事件よりも、のどかな田舎町で起こった殺人事件を派手に伝える。さして接点のない近隣住民から評判を聞き出したり、過去の卒業アルバムを探し出してきてまで起訴前の被疑者と被害者の個人情報を白日のもとに晒そうとする。
また、銃規制を巡る報道についてもフェアでないという見方もある。例えば、アメリカでは毎年3万人余りが銃撃によって死亡しているが、そのうち2万人ほどは銃を使った自殺が死亡原因となっている。残りのおよそ1万人のうち、約6割は拳銃が使われた事件であり、ライフルを使った襲撃で亡くなった人は300人にも満たない。しかしマスメディアは、ラスベガスとフロリダで発生した銃乱射事件の報道を見ても分かる通り、アサルトライフルの危険性ばかり強調する。
読者の興味・関心に応えているつもりが、実際にはめったに起こらない不合理な危険を殊更に大きく取り上げていたずらに不安を煽る結果になっていないか、改めてマスメディアの報道姿勢を考えてみたいところだ。
画像とソース引用:『Twitter』および『reddit』より[リンク]