被災10 事業者が福島県に“新たなお土産品”をつくる 「福の小みやげプロジェクト」取材レポート

  by 古川 智規  Tags :  

「福の小みやげプロジェクト」は、東日本大震災で大きな被害を受け避難を余儀なくされた相双地方12市町村の10事業者が、震災から7年を迎えるにあたり、互いに協力して新しい福島県の象徴として“新たなお土産品”を作り上げるプロジェクト。
そのお披露目イベントと今回のプロジェクトに参加する事業者の生産の現場を巡るプレスツアーを取材した。

福島市で行われた報道関係者向け発表イベントでは、各商品の概要が説明された。
食やクラフトなど合計6品が紹介され、いずれも3月1日からFukushimartで店舗販売される。

本プロジェクトは観光客が欲しい、買いたいと思うお土産品、もらう側は福島を身近に感じてもらえるお土産品、渡す側も商品の背景を伝えたくなる、渡してよかったと思えるお土産品をコンセプトに商品開発を行ったという。商品の詳細は街頭ホームページでご確認いただきたい。

※参考
福の小みやげ
http://fukunokomiyage.jp/ [リンク]

スモークいわな

やってきたのは「いわなの郷」。
いわなの養殖がおこなわれている当地では、新鮮ないわな料理が味わえるほか、釣り堀(冬季は休業)もあり、清流を楽しむことができる。

静水であるレストハウス前の池は凍結している寒さの中で養殖場に案内された。

もっとも大きないわなはおよそ5-6年物。その大きさたるや、ニシキゴイを思わせる堂々たる威厳すら感じさせる。

ここまで大きくなると採卵用のようだが、一貫した養殖は逆に安心して食べることができる魚であることの証明ともいえる。

スモークいわなは小ぶりなものを使用しており、食べやすい。
小骨もあるが、丸ごと頭も尻尾も食べられるいわゆる「尾頭付き」だ。
味は程よい煙さとドライソーセージの魚版といった感じで、きりっとした辛口の日本酒にきっと合うだろう。

取材中で残念ながら飲酒に至ることはできなかったが、お土産として手に入れたので自分なりに熟成(酒が飲める環境まで保存しておくだけだが)させて、酒のさかなとして楽しみな一品だ。

豆皿セット

次にやってきたのは大堀相馬焼の窯元「いかりや窯」。相馬とはいえ、相馬地区は立ち入ることができないため、県内各地に避難した窯元がその地で再スタートした。いかりや窯は福島県白河市にある。
最大の特徴はガラスのような自然に入るヒビと、二重構造になっているために可能な外側の穴だ。
そして意匠として特に有名なのは走り駒。縁起が良いデザインだ。

この豆皿は受注生産ながら、5つの窯元の共同制作となっており、各地に避難した窯元と避難地の人たちと考えたコラボデザインとなっている。

絵付け作業を見せてもらった。ものの10分ほどで縁起の良い走り駒が描かれ、報道関係者は感嘆しきりであった。

走り駒はもともと福島県北東部(現在の相馬市あたり)中村藩の当主であった相馬氏の家紋の一つである繋ぎ馬からとられたといわれる。
この繋ぎ馬も現在までその伝統が受け継がれている相馬野馬追から来たという説もある。それほど長い歴史と縁起を持つ焼き物だけに手ごろな値段で手に入れることができるのはお土産としてもぴったりだろう。

福島県は47都道府県の中で3番目に広い面積を持つ県であるが、逆に人口は21位(平成27年国勢調査)と面積の割には少ない。名産品や特産品はないわけではないが人口が少なく圧倒的な都市がないために知名度が低く、また広い面積のため名産品が広範囲に散らばり交通アクセスが決して良いとは言えない場所へは観光がしにくいのが現実である。
今回訪れた場所も鉄道やバスで気軽に行けるような場所ではないが、自家用車やオートバイでドライブ・ツーリングがてらに寄り道して見ていただきたい。
また今後「小みやげ」が県内どこででも買えるようになれば、震災だけではなく歴史と伝統も同時に感じ取ることができる素敵なアイテムとなることだろう。

※写真はすべて記者撮影

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