日本美口協会が昨年12月22日に、口腔内環境改善の必要性と最新動向に関する講演会を開催したので取材した。
同協会は医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手と企業で構成され、「汚口」を「美口」に変える「美口活(びくちかつ)」を習慣化し、より多くの方が生涯にわたりおいしい食事を楽しみ、健康に暮らしていくことができる「美口大国」を目指し活動している。
今回の講習会は第1回目として、企業への啓蒙活動の一環として同協会に参画しているアークレイ株式会社の社員を対象に行われた。
登壇した同協会代表理事の坂本紗有見歯科医師の内容をそのまま掲載するので、口腔衛生に関心のある方もそうでない方も、長文ではあるが意外な発見があるのでお読みいただければ幸いである。
■講演会内容(2017年12月22日京都市において)
みなさんこんばんは。東京からまいりました、銀座並木通りさゆみ矯正歯科クリニックの坂本紗有見でございます。では本題です。美口協会ということのことを社員の皆様方はどのように普段見てるのかなーと思うのですが、日本人の口は汚れている。それを美しい口にしていきましょうというものなのですけれども、そもそも汚い口、汚口(おくち)とはなんでしょう。汚い口ってみなさんなんとなくどんな感じかわかりますか?これ、汚い口って言える方いますか?
「虫歯がある」
ピンポンです。
「歯周病」
歯周病、そうですね。
結構みなさん歯が汚いとか歯が抜けているとか、口が臭いとかあるんですけど、汚い口の中に日本人のすごく意識の低いものが、私は歯並びを直す歯並び屋なので、歯並びっていうのはすごく見逃しているというか全然気づいていない。八重歯かわいいとか、そんなところがあるのですが、歯並びが悪いっていうのも、これから国際社会ですね、みなさんももう海外にたくさん事業部があると思いますし、2020年にはオリンピックが開かれますけれども、歯並びが悪い人が口臭があって歯もなくっても恥ずかしいでしょうっていうところですね。あと、歯と口腔粘膜がベろが汚れているのも口の中の黴菌が繁殖する、こんなイメージです。
で、その原因の 歯を正しく磨けていない、虫歯になるもの歯周病になるのも歯を正しく磨けていない、口呼吸、口で呼吸することによって口の中が乾いて、口の中の細菌が増えていく。口呼吸ですね。口呼吸はいろんな疾患を起こします。あと歯ぎしり食いしばりで歯が欠けたとか、根っこが折れたとか、神経が死んだとか、やっぱりお口の中が崩れていきますよね。で、べろの小さい舌小帯。べろの後ろ側にひもがついていますね。みんなぴってベろあげたらそのぴーってところがその穴があるところに舌小帯ってありますけど、それが短いとべろが縮んで動かなくなって、唾液が出にくくなったり、喋れなくなったり食べるときによく噛めなくなったり、飲み込む時に正しく飲み込めなくなって口の中がどんどん汚れていく…っていうのもあります。
で、ベろ(舌)の位置が悪いっていうのは、普段皆さん今べろってどこにありますか?べろ、舌の歯にあるひと!―…上あごについているひと!―…すごいさすがアークレイさん!ベろの位置すごく大事なのでね、またこれは、折を見てお伝えできればなーと思います。
そういうことで口腔内環境ってただ歯だけではなくて、全て、筋肉もそうですしそういうものが整っていないと美口にはならない。せっかく歯並び歯並びって書きましたけど、全て整っていなければ美口になっていかないということですね。
さて、体への影響 。今日西田先生(記者注:糖尿病専門医 西田亙氏)もお話くださいますけれども、どんな影響か。早産、低体重児、糖尿病、心疾患、母子感染、誤嚥性肺炎、リウマチなどの炎症疾患。で、これ見て自分に関係ないな、特に男性の方。“早産?おれ関係ねえし。母子感染、関係ない”と思うかもしないんですけど、実は口腔内の菌には、男女でも母子でも。そういう愛を語るところ、そういう菌の移しあい、交換っこができる。ですので、みなさん新しいボーイフレンド、奥さま、彼女、自分のお子さんが結婚というとき、必ず歯医者に行ってそれぞれの菌が交換っこしないようにお口の中をきれいにしていただきたいと思うんですね。ですので、女性のものだけではなく、相手の方もちゃんと口腔ケアしてくださいということですね。もちろん全身疾患にも繋がっていきます。ただ自分には関係ないということはひとつもないということです。
で、先ほどから同じようなことの繰り返しになりますけれども、汚いお口、汚口から美口への、美口を作る4つのポイントです ね。食後の歯磨き、急いですることはないです。30分くらいは自分の唾液に持っている抗菌作用とか免疫作用で菌をある程度干渉していって、また洗い流す時間ありますので、何がなんでも昔のように食後すぐ3分間磨きましょうっていう必要はないと思いますけれども、できれば30分以内くらいに磨ければ。30分後くらいから磨いたとしても全然問題ない。ただ磨かない時間が18時間くらいあくと、どんどん歯が溶けていくので、その時間内で上手に調節していただければあんまり負担なく、歯磨きって気軽にしていただけるんじゃないかと思います。
あと口腔内の環境チェック。美口習慣を身につける定期的な歯科検診。これらをどのように皆さんが繋いでいくか。なかなか検診っていうのは自分は健康だから行かない。西田先生がいつも講演なさっておっしゃっているように、あんまり検診っていう言葉が良くないかもしれないので、美口習慣というものを、これから我々美口協会が国民に向けて、また歯科医療従事者に向けて、地域の方たちに向けて、アナウンスしていければなと思っております。
今すぐストップですね。噛まずに流し込む。日本の人はすごく忙しい。昼休みもゆっくり食べることはないでしょうし、噛めないもの、噛まなくてもいいもの、も、食べやすいものが世の中に流れてくるので、噛まないで流し込む。要するに噛まないっていうことは唾液が出ない、お口が汚れていくということですね。先ほどもお伝えした通り口呼吸ですね。我々歯科医院医師など口呼吸(こうこきゅう)ていう表現をしますけども、口呼吸は黴菌ぜんぶ口から。鼻も詰まる、のども悪くなる、体にも口の中の細菌がどんどん流れこむ。やはり口呼吸(こうこきゅう)は、ストップ。鼻で息しましょうということですね。煙草に関してはみなさん私がお伝えしなくても、ご存じの通りだと思うんです。あと糖質の摂り過ぎですね。糖質の摂りすぎは虫歯になるだけでなく、全身の血液をまわりますので、糖尿病だとか血液習慣とかそういうものに関係してくる、糖質は摂りすぎないように。あと食べるときの姿勢が悪い。お酒の飲みすぎ。食べるときの姿勢っていうのはみなさんあまり気づいてないと思うんですけれども、実はこれ、和食と洋食。和食メインで生活してる方。(出席者の)半分くらいですね、洋食メイン。実はこれ、何が違うかっていうと、栄養とかのことは伊達先生(記者注:管理栄養士 伊達友美氏)にお話しいただきますけど、お茶碗を持って食べるか食べないか。で、プレート食。いわゆるフォークとナイフで食べるときどういう風な姿勢で食べているかちょっと手でやってみていただくとわかると思うんですけど、日本の文化はお茶碗を持ちますから、必ずお茶碗をもってこう運ぶ。常に姿勢は変わらないですね。だけど、プレート食は下を向きます。下を向いたまま噛むので奥歯で噛まなくなるんです。唾液もでにくくなります。で、どちらかというとカロリー的なものも栄養的なものも偏るような食事になるので、やはりさっきの姿勢っていうのは唾液を出す、きちんと奥歯で噛むということを考えて、ベろできちんと飲み込む姿勢は正しく座っていないと食べれないので、やはり出来れば和食、または洋食も和食のようにお箸で食べて頂ければ、姿勢が保てるんじゃないかなと思います。そういう今、お店もありますよね。洋食をお箸で食べる。お箸の文化ってすごく大事だなと思っています。
これはいくつか身につける5つの ポイントですね。先ほどからくりかえしている歯科検診。左右のバランスの噛む、唾液を出す。で、ベろ(舌)のエクササイズ。これは結構深いものがあるんですけど、簡単に出来るものとして、みなさんもご存じかもしれないんですけれども、福岡のリウマチ専門の今井かずあき先生という方、いろんなメディアに出ながら皆さんに伝えている「あいうべ体操」となります。これは『あいうべ』と激しく30回やりますよ。あ、い、う、べは死ぬほど、ベろが切れるくらい出してほしいです。顎が痛くなると思います。これを一日30回やっていただくと、口腔内の筋肉が鍛えられるので知らないうちに唇を閉じるチカラがつきます。そこで口を閉じればどういう利益があるかというのは先ほどお伝えしたように、ですのでぜひ皆さんやってみてください。ちょっと皆さんでやりますか。どうでしょう。必ず声をだしてください。
全員『あ、い、う、べ~』
ベろ短い人、出ない人はベろちょっときってください。口腔外科行って。その方がよく食べれますし、愛を育むときにも良い勉強になります。みなさん自分のベろよく見てください。これは今日の一番大事な話かもしれないですね。
まああと唾液ですね。先ほど免疫が入って期待があります、抗菌作用がありますとお伝えしましたけど、非常に唾液って大事です。で、唾液がでる環境作りですね。相手も大事です。もちろん口を閉じることも大事です。奥歯でしっかり噛むことも大事。飲み込む時にベろをのどの方にきちっと上あごにつけてのみこめる一連のその動作が出来ることが大事です。ですので唾液、命の唾液。なのでみなさんどんどん唾液出してください。
で、ここからちょっと歯医者さんぽい話になりますけど、定期健診。いわゆる数カ月にいちど歯医者さんでお口のメンテナンスされている方どれくらいいらっしゃいますか?少ないですね。会社の方で特別に見てくれていないんですね~。衛生士さんがやれるもの、いろいろな器具を使ってきれいにしてくれますけど、その衛生士さんの技術はすごく差があります。また、こういうもの力入れていない歯医者さんがほとんどです。要するに削って詰める。それが歯医者さんのイメージが悪いから誰も行かなくなるということです。それをバックアップするのが日本美口協会です。
どんなに自分で磨いてもきれいにならないですからね。白い歯だからわからないと思いますけれど、実際隠れているプラーク、歯糞はすごい。
そのためにおうちで使う歯ブラシだとかデンタルフロス、そういうものをいいものを選択したら良いかなあと思います。体のすべての健康を守るものに100円とか90円の歯ブラシを使っちゃダメですね。もう大人ですから、ペットボトル3本分我慢して3カ月分もつような2000円ぐらいの歯ブラシ、使われてるかと思います。今日も吉田さん、同じ歯ブラシ載っていますけれども、どこにお金をかけるか、大人であれば社会的に活躍している方であれば、特にこういうものにお金をかけて頂けたらなと思います。こういう環境で、患者さんの美しい口作りに取り組んでおります。皆様ももうすぐクリスマスです。楽しいクリスマスをきれいなお口でお過ごしください。ご清聴ありがとうございました。穏やかな良き新年をお迎えください。
口の中の環境が全身に作用するというのは記者にも経験がある。総合病院で心臓のカテーテル手術を受ける前に歯科医の紹介状を渡されて検診してきてくださいと言われたことがある。血管しかも動脈から心臓をいじるのでばい菌が入りやすい口腔環境は術前術後にとって重要だという意味であったのだろう。
特に急いで治療をしなければならない虫歯はなかったが、講習で坂本歯科医師が語ったように、プラークや歯石をきれいに取り除いて心臓手術に挑んだ経験がある。記者の場合は循環器内科医や歯科医師がきちんと説明してくれたので「心臓なのに何で歯医者なんだよ?」という疑問は抱かずに済んだ。一見何の関係もない消化器の入り口である歯の周りは出血しやすい血管だらけなので傷つけば、そこから循環器へ入ってしまう可能性は高い。消化器では影響がなくても循環器では深刻な疾病にかかわるというケースは多いようだ。実際に血管造影剤を流し込んでわかったが、血液に入り込んだものはものの3秒ほどで全身を駆け巡る。造影剤を血管に入れると、全身が頭から足に渡ってサッと熱くなるので流れているのがよくわかる。もし深刻な菌が口から血管に入り込んだら、あの造影剤のようにあっという間に全身を駆け巡るのだろうと思うとぞっとした。
その意味で、坂本歯科医師の語った「美口」という理論は医療従事者であれば常識なのかもしれないが、一般に向けての認知はまだまだ薄いように思われる。
単純に口のにおいや歯の見え方だけの問題ではなく、体全体の問題として気にかけてみてはいかがだろうか。
同協会では今後、一般向けの啓蒙活動を拡大していくとのことだった。
※写真はすべて記者撮影