日本人にとって煎茶は、あまりにも日常生活に馴染みすぎているためか“適当に”淹れることが多くなりがち。でも煎茶のポテンシャルはそんなもんじゃない!
そんな熱い想いで立ち上がりタッグを組んだのが、老舗茶農家(創業1888年!)のカネ十農園とシャープ発ベンチャーTEKION LAB(テキオンラボ)と洋酒の輸入販売を手がけるバカルディ・ジャパン。……カネ十農園はわかるけど、シャープって……お茶メーカーの『お茶プレッソ』か何かでしょうか? しかも、洋酒???
謎を解き明かすべく、今回のプロジェクト「氷点下抽出で振る舞う煎茶GIN『茶饗-SAKYO-』」を掲載しているクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」主催の試飲会イベントに行ってきました。
『茶饗―SAKYO―』セット
低温だから引き出せる高級茶葉の旨味成分「テアニン」
本プロジェクトのプレゼンに登壇したカネ十農園五代目園主 渡辺知泰さんは、当然ながらお茶の達人。お茶の木を植えるところから製品開発、販売まで手がけるため、煎茶のことを知り尽くしています。
カネ十農園五代目園主 渡辺知泰さん
「煎茶には、苦味成分のカフェイン、渋味成分のカテキン、そして旨味成分のアミノ酸の一種であるテアニンが含まれています」と渡辺さん。「旨味成分のテアニンは、低い水温でも浸けておけば浸けておくだけ溶け出します」とまずは旨味アピール。
そして、お茶を淹れる適温と言われる80〜85℃では「全成分が抽出されやすい」とグラフを使いながら説明します。
煎茶から旨味(テアニン)を最大限に引き出すには80℃→低温がグッド
ただ、その状態で長時間浸けてしまうと苦味や渋味が強くなってしまうため、「蒸らしは30〜40秒」にとどめておくのが良いとのこと。
煎茶GINは、『茶饗―SAKYO―』セットによっておいしく作れるといいます。その理由は「低温抽出」にあり。
美味しい煎茶と適温の関係
「通常のお茶のようにまず80〜85℃のお湯で30〜40秒間茶葉を蒸らしてください。カフェインやカテキン以上にテアニンが一気に溶け出します。そのようにして香りが立ったところで、レシピ通りのスターオブボンベイ(GIN)と冷水を入れて水温を下げ、さらに『保冷バッグ』にボトルごと入れることで-2℃を保ったまま旨味成分のテアニンのみを、茶葉を劣化させることなく抽出し続けることができるのです」(渡辺さん)
シャープ発ベンチャーTEKION LAB代表 西橋雅子さんは、「液晶技術から生まれたこの蓄冷材は、ひんぱんに停電が起こる途上国向け冷蔵庫へと応用されました。国内向けにも何かできないだろうか? と思ったのが社内ベンチャーのはじまりでした」と経緯を説明します。
「例えばクラフトビールなら13℃、サラダなら10℃、日本酒なら-2〜55℃、といった具合に食べ物にはおいしくいただける適温があります。それをいかに長くキープできるか。わたしたちは、氷が長時間同じ温度を保つ状態が溶けている間(固体から液体に変化している間)であるということに着目しました。そこで、狙った温度で溶ける氷を開発。こうしてできあがったのが、適温をキープし続ける全く新しい蓄冷材なのです」(西橋さん)
TEKION LAB代表西橋雅子さん。ワープロ書院やザウルスなどの開発メンバーでもある
今回、茶饗プロジェクトでカネ十農園とコラボしたのは「わたしたちが掲げているのは『適温で幸せを届けたい』という理念で、“おいしい”には適温があるということをもっと広く知ってもらいたいから」と西橋さん。「この保冷バッグがあれば、パーティーなどでテーブルにボトルを置きっぱなしでも-2℃を保ちおいしさをキープしますから、おもてなしにもピッタリ。日本人が昔から親しんでいる煎茶を、もっといろいろな場面で味わっていただければというご提案をさせていただきました」。
最後にバカルディ・ジャパンから、茶饗に含まれるスター・オブ・ボンベイについての説明がありました。
スター・オブ・ボンベイは、バカルディ・ジャパンで取り扱うボンベイジンの中でも最高クラスのものだとか。「スタンダードタイプとプレミアムタイプでは10種類のボタニカル素材を使っていますが、さらにベルガモットとアンブレットシードという2種類を追加した12種類を、ヴェイパー・インフュージョン製法によって作り上げています。煎茶は繊細な味わいのボタニカル素材。スター・オブ・ボンベイのように雑味のないクリアな味わいのジンなら相性がよく、それぞれの良さを引き出したカクテルをお楽しみいただけます」。
スター・オブ・ボンベイの原材料
素材がさらに2種類追加されている。素材の味を損なわないよう手摘みしているとのこと
ストレートでもトニックウォーターで割っても
いよいよ試飲タイムです。
カネ十農園専属バーテンダーの松本貴志さん自ら振る舞う
グラスに注がれる煎茶GIN
まず供されたのは煎茶GINをトニックウォーターで割ったもの。炭酸の紅茶飲料を飲んだことはありましたが、いわゆる“炭酸緑茶”ははじめて。細身のワイングラスに注がれた淡く透明感ある抹茶色の飲み物は見るからにおいしそう。
煎茶GINトニックウォーター割り
グラスを手にして顔に近づけると、煎茶特有の深い香りが鼻の奥まで漂ってきます。筆者はジンを単体で飲んだことがないのでどれがスター・オブ・ボンベイの味なのかは判別つかなかったのですが、トニックウォーターの爽やかさと煎茶のふくよかな旨味が口の中で混ざり合い「これをパーティーなどで出されたらうれしいだろうな」と感じました。適温のおかげで、見た目も美しいですし。
続いて、煎茶GINのストレートタイプが目の前に置かれました。こちらは少し幅広のワイングラス。より香りを楽しめます。肝心の味ですが、実にまろやか。カクテルを飲んでいるというより、しっかり点てられた濃いめのお茶をいただいているような、そんな感覚を覚えました。
煎茶GINストレート
渡辺さんは、「どんなにおいしいお茶を買ってきても、おいしい淹れかたがわからなければもったいない。このプロジェクトで、“おいしいお茶”への気づきを得ていただければ。そして、煎茶GINとしてだけでなく、普段の淹れかたにもちょっとだけ気をつけていただければ、と思い、このような提案をさせていただきました」と茶饗への意気込みをお話くださいました。
西橋さんは、「今回コラボでご提案した『TEKION LAB保冷バッグ』であれば、外気温が25℃ぐらいで2時間は適温を保てます。しかも、冷凍庫に入れれば100回程度まで繰り返し使用可能。缶チューハイなどアルミ缶飲料を入れていただければ普段使いもできますよ」と別の使い方もこっそりレクチャー。セットもいいけど、この保冷バッグだけでも欲しくなってしまいました(笑)。
ティーバーテンダーの松本貴志さんは、蔦屋書店内にあるランチバー「Anjin(アンジン)」でバーテンダーを務めていましたが、突如「盆栽職人になりたい」と辞職。その腕に惚れ込んでいた渡辺さんから「お茶の木を植えているうちなら、ほら、似たようなことができるよ!」とスカウトされ、カネ十農園の専属バーテンダーになったそうです。
基本的な煎茶GINの作り方はMakuakeのプロジェクトページ掲載の動画を見ていただくこととして、「-2℃になる時間を見極めること(保冷バッグに入れてから約3時間後)、(温度が上がってしまったら)8時間以内に飲みきること」がよりおいしく飲むためのコツだとか。漬けるために注ぐ水がキンキンに冷えたものであれば、「もっと早く飲みはじめることができますよ」と教えてくださいました。
沸騰したてのお湯を湯呑みなどに一回移すごとに10℃下げられる。これを覚えておけば適温の80〜85℃に調整しやすい
煎茶の入ったボトルに適温の湯を注いだ後、葉が開き旨味成分のテアニンが出てくるまで30秒ほど蒸らす
保冷バッグに入れて一気に適温まで下げる
特別な技術入らずで極上の“おもてなしカクテル”が作れる煎茶GIN「茶饗―SAKYO―」セット。適温で、いつものお茶をもっとおいしくいただいてみるのはいかがでしょうか。
セットに含まれるカネ十煎茶。茎・葉・粉など余すところなく使用しており、茶農家が主に自分たちで飲むために作っている貴重な煎茶
こちらもセットに含まれるもの。特殊な製茶法でカフェインを極力抜いたうえ、柚子とレモングラスを配合した。ちなみにどちらのお茶も通販で常時、伊勢丹などのデパートではイベント時に購入できるとのこと
(写真はすべて筆者撮影)