今や放送局ではなくても個人で動画や音声を自由に配信できる世の中になった。
インターネットの発達とともに、スマートフォン等の手軽なデバイスを誰でも持つことができるようになったことも一因と言える。
若い女性に人気のインスタグラムでも動画配信ができるので挑戦している方は多いのではないだろうか。
今回、記者はツイキャスを利用して音声配信(ラジオ放送)する際に使用するマイクを中心に安く高性能な周辺機器を集めてみたのでレビューする。
基本的にはスマホ1つあれば、ツイキャスはできる。動画の配信はスマホ搭載のカメラの性能に左右されるので、ここでは取り上げないがなるべく明るいレンズを持ったスマホがいいのは言うまでもない。
スマホをテーブルの上において配信しても全く問題はないが、ツイキャスの良いところは双方向コミュニケーション。次から次へと届くテキストメッセージをいかに効率よく見るのか、そのためにスマホの設置場所には気を配りたい。まずは、そのためのホルダー。
他に必要なものは、長時間の配信に必修の電源。これはモバイルバッテリーのことだ。最近のスマホは高性能でパソコンと大差ないこともできる反面、あっという間にバッテリーが切れてしまう。これをいかに補うのかが重要となる。
そして最後は、音質の良い音声を配信するためにはやはり外部マイクを使用するのがベストだろうと考え、2種類のマイクを選定した。
すべての周辺機器は、通販で安価に購入できる優れた品質のものという条件で、今回はAUKEYを選択した。中国製の製品だがその品質も含めてレビューする。
ホルダーは普段の撮影にも使用できるものを!
配信中のイメージとしては写真のような感じだろうか。
自宅でなくてもふらっと思い立ったときに配信できるのも魅力だが、あまり大掛かりなものを普段から持ち歩くわけにもいかない。
つまり、ツイキャス等の配信にかかわらず普段使いができるデバイスでないと持ち歩く意味がない。
写真の三脚のようなスマホホルダーは、AUKEYから発売されているCP-T01(1299円)だ。
雲台はボールロック式で、フリー回転するので好みの角度で固定することができる。
水準器もついているので、ツイキャス配信でなくても写真撮影には便利だ。
ホルダーのネジ穴は写真撮影用の垂直方向にも、ツイキャス配信のように水平方向にも空いているので、様々なシチュエーションで使用可能だ。
外出先で気軽にワイヤレス配信
最近はBluetooth対応のワイヤレスイヤホンが安価で売られているが、これを使えばスマホ本体は極端な話、カバンの中でもポケットの中でも音声配信はできる。
同社のEP-B37(2599円)は、Bluetooth4.1に対応したワイヤレスイヤホンマイクだ。
イヤホンとしての音質は、個人の好みや音源にもよるが低音しっかりのポップス向きと思われる。また、マグネット内蔵式で使用しないときは首の前でつなげておけば落とす心配はないし、密着度がかなり高いので耳の中の気圧が変わったかと思うほどピッタリと耳にフィットする。
もちろん、通話にも対応している他、2台とペアリングでき同時スタンバイが可能なのでスマホ2台持ちの方には便利だろう。
電源の接/断、バッテリーの低下警告、デバイスとの接続時には英語で音声が流れるのが記者としては新鮮だった。多くの安価なデバイスはビープ音のみという物が多い中で、英語アナウンスは気持ちが良かった。
実際の配信音声については、最後の動画で確認いただきたい。
見たこともない表示がスマホに現れた!
モバイルバッテリーはいくら高性能なものを選んでも、選びすぎることはない。
最近のスマホは高性能なCPUを搭載している関係上、かなり高度な処理を高速で行うことができるが、その反面バッテリーの消費は桁違い。これは現状では性能とのトレード・オフの関係にあるので仕方がないだろう。1アンペア程度の従来のACアダプターでは充電しながら使用してもバッテリーは減ってしまうほどだ。つまり、充電が追いついていない証拠だ。
同社のPB-T10(3999円)は、記者も初体験のちょっとびっくりのモバイルバッテリーだ。
出力USBポートは2つ。充電用の入力ポートはマイクロUSBが1つと、iPhone用のライトニングコネクターが1つの2系統の入力がある。iPhone専用のACアダプターしか持っていない場合でも安心して本機に充電できる。
オマケ機能かどうかは別として、LEDライトを搭載しているのでちょっとした際に必要なライトとして使用可能だ。
バッテリーの容量は20000mAhで2台でも1泊でも十分な容量だ。
実際に充電してみた。グリーンのポートは出力5V2.4Aとなっていたが、オレンジのポートはクイックチャージ3.0対応となっていてなんだかよくわからない。
ところが、スマホ(2015年製のAndroid6.01)の通知に「高速充電中」なる文字が現れたのでびっくり。
これまでそんな表示は見たことがないし、自分のスマホが対応していることさえ知らなかったので、まさに初見だ。
調べてみると、スマホが搭載しているチップによってバージョンが1-3あるいは4まであるらしい。記者のスマホはバージョン2に対応していた。
早速、通過電力量計を接続して電流と電圧を調べてみると、電流は0.42Aとがっかりの結果だったのだが、電圧が9.02Vを指していた。USBは5Vが基本だが、9Vの電圧をかけて大丈夫なんだろうか。さらに調べてみた。
クイックチャージテクノロジーとは、自動的に高い電圧をかけてスマホ側で4.2Vに降圧して多くの電流を取り出して急速充電をするというものだった。
若干難しい話になるがぜひ知っておいていただきたい。現在主流のリチウムイオンバッテリーは高性能な代わりに充電制御が難しく、下手をすると発火したり破裂したりすることは、御存知の通り。通常は、急速充電をするためにはUSBの定格である電圧を5Vにして多くの電流を流すことによって行う。しかし、前述の通り、充電制御が働いているのでいくら電源側で多くの電流を流しても、スマホ側の充電回路で抵抗を接続してしまい、せっかく入ってきた電流を制限してしまう。その結果制限された電力は抵抗器で熱となって捨てられてしまうわけだ。充電時にスマホが熱くなる時があるが、それは何らかの理由でスマホが電流を制限している証拠なのだ。
そこで、クイックチャージテクノロジーは高い電圧をかけて電流はそんなに多く流さずに、スマホに入った時点で電圧を落として多くの電流を取り出すというものである。
計算すれば簡単なことで、例えば5V2Aで入力するのと、10V1Aで入力するのは電力としては同じことだ。家庭の電灯線は一般的には100Vだが、電柱までは6600V、柱上変圧器で200Vに降圧してから家庭に引き込まれ、100Vや200Vで使用するのと基本的には同じ。電力は高圧で送電したほうが効率がいいのだ。(厳密には交流と直流で若干異なりますが考え方としてはそういうことです)
ちなみに、通常のUSBポートに接続すると、5V0.24Aで充電制御が働いてしまった。誤差がまったくなくきっちり5.00Vの電圧がかかってることが驚きだった。それだけモバイルバッテリーの制御回路が高性能なのだろう。スマホの負荷が軽くなればもっと多くの電流を流すと思われるが、ツイキャス放送中であれば高負荷なのでおそらく無理であろう。
クイックチャージ対応ポートで9.02V0.42Aの電力は計算上はスマホ内部で0.902Aで充電しているので確かにバッテリーの充電表示が上がるのは早かった。
自宅ではプロ仕様のボーカルマイクで!
自宅で頻繁に気軽にツイキャスライブを行っている方も多いだろう。
歌ってみた、踊ってみた、演奏してみた系統の放送にはやはり高性能のマイクを使いたい。
できれば歌手がスタジオで収録するボーカルマイクやラジオ放送局のスタジオでアナウンサーが使用する業務用のマイクを使いたい。
しかし、専門店に行ってそんなマイク一式をそろえると、それだけでスマホが数台が一括払いで買えてしまうだろう。
そこで、同社が発売しているGD-G1(3499円)の登場だ。
業務用マイクを買いに行けば、売っているのはマイク本体だけ。コネクターやケーブル、基台は全て別にそろえるのが普通だが、これはその全てがセットになってこの値段である。にわかには信じられないが、本当の話だ。
マイク接続のコネクターは業務用の標準であるキャノンコネクター。規格は古いし重い金属製だが、一度接続するとリリースボタンを押さなければ外れることはない信頼性抜群のコネクターだ。放送局のマイクでもテレビカメラの音声ラインでもキャノンコネクターが当たり前だ。
マイクを取り付けるホルダーも外部の振動や衝撃が伝わらないプロ仕様。
写真のように上から垂らしてもいいし、下から突き出させても良い。
マイクホルダーもアームも付属しているので、部屋の環境によって自由に取り付ければ良いだろう。
使用しないときには、屈折アームなのでたたんでおくと良い。
マイクの前についているポップガード(ポップフィルター)も付属品だ。これはナイロン製だが金属製のプロ用を購入するとそれだけでこのマイク一式が買えてしまう。
これは、唇から出る物理的な音をカットするもので、歌ったりしゃべったりすれば避けようのない唾が飛ぶような発音の際に生ずる破裂音や息がマイクにかかって生ずるノイズをカットする目的で設置される。
ツイキャス程度に大げさなと思うかもしれないが、心理的な産物として「プロっぽい」感情を味わうことができるというものがある。
実際の音声放送はどうなったのかというのは、動画をご覧いただきたい。
条件としては、外出先で満足な通信速度が得られないという状況を想定してツイキャスのライブモードを「ラジオ(電波弱)」とした。
そして実際に記者がしゃべり、同じニュース原稿の一部を読んでみた。
放送は3回行い、それぞれスマホ内臓のマイク、EP-B37、GD-G1を使用した。
それを後でMP4ファルとしてダウンロードした上で、YouTubeにそのままアップロードして編集した。
■ツイキャス時に使用するマイクレビュー
https://youtu.be/rXvy_ekmX3s
短い時間なので、大きな違いはわからないかもしれないが長時間の放送や、周辺の環境によっては違いが一段とはっきりするだろう。
EP-B37は外での気軽なライブ配信には、手ぶらで両手があくので動画配信に向くかもしれないし、GD-G1は自宅での本格的な音声配信に良いかもしれない。
EP-B37は通常は通話に使用するイヤホンマイクや音楽を聴くイヤホンとして使用するので、普段使いとして重宝する。
GD-G1は、動画の音声をお聞きいただければわかるが、エアコンやPCのファン音が全くしないという性能を発揮した。これは単一指向性のコンデンサーマイクとしては、さすがプロ仕様のボーカルマイクといったところだ。FM放送の受信音声に似ているとも感じた。
AUKEYはメーカー直販のみの取り扱いで、広報担当に記者が問い合わせたところでは日本での販売チャネルは現在Amazonのみということだった。また、20カ国以上で販売している国際商品のため、電子機器には日本語を含む多言語のマニュアルと2年間の国際保証書が付いていたので安心して使用できるだろう。
個人でのライブ配信の際は参考にしていただきたい。
※写真・動画はすべて記者撮影・収録