怪しいネットワークビジネスを追え! ~10

  by mexicona  Tags :  

この連載では、ネットビジネスを商材として全国各地でネットワークビジネス(マルチ商法)を展開しているNtBカレッジ(仮名)を追いかけておりますが、NtBカレッジでは2016年の9月に公式サイトのリニューアルを行う動きを見せています(リリースでは10月1日表記)。この点に関して、また新たな疑問点が幾つか見えて来ましたので今回はそれを中心に取り上げていきます。
   
 
 
■怪しいサイトのリニューアル

まず注目しておきたいのが、サイトのトップページに”コンテンツ カリキュラムの全体像”という図表が加わったことです。以前は「ウルトラフリーを目指す」であるとか意味不明な文言ばかりが強調させれて、具体性が見えてこないサイトでしたが、今回のリニューアルで『スタートアップセミナー』や『ビジネスコミュニケーション』『自己診断プログラム』と言ったカテゴリーがまとめられて、なんの知識もない人が見れば”一見きちんとしたコンテンツが提供されているように見えてしまう”ようになったという点です。
 
しかし書いている内容を検証していくと、かなりいかがわしい事がわかります。例えば、カリキュラムの中に”Facebookを使ったブランディング”といった内容がありますが、実際にNtBカレッジの運営がFacebookを使いこなしているのかというと、代表のS氏の投稿や勧誘などを目的とした会員の投稿などは幾つか見つけることができるのですが、NtBカレッジ自体に関しては、その公式アカウントすら見つけ出すことができません。この連載でも度々触れてきたとおりNtBカレッジがFacebookなどを使ったブランディング能力などを持ち合わせているのか?という、根本化的な能力に対する疑問が浮かび上がります。
 
また肝心のビジネスの説明に関しても不審な点が指摘できます。例えば物販ビジネスの”STAGE1″として『ブルーオーシャン物販』として”集客されたメディアで、差益や回転率を見極めるリサーチ方法”という説明のもと、『メルカリ無在庫転売』『中国輸入転売』『放置メソッド転売』といったものが記載されています。

このブルーオーシャン物販というのは、おそらくマーケティングで言うところの『ブルーオーシャン戦略』から来ていると思われます。マーケティングで言う”ブルーオーシャン”というのは競争のない未開発の市場のことを指しますが、NtBカレッジの公式サイトでは『ブルーオーシャン物販』はどうも別の意味で使っているように思えます。
ご存知の方も多いと思いますが、中国などから個人輸入を行ってそれを販売しているのは何も珍しい手法でもありませんし、現時点でもかなり多くの方が取り組んでいます。本屋に行けば、そういった内容を解説する本も数多く売られています。つまり既に個人輸入転売ビジネスはブルーオーシャンとは言い難い市場だと指摘できるでしょう。またNtBカレッジが抱えている数千人の会員のうち一体何人が物販に取り組むのかわかりませんが、スクールとして教えている以上、同様のカリキュラムを受けた会員間で競争も発生するでしょう。当然、新規入会があれば、そこからさらに競合が増えることになるわけです。

※この『ブルー・オーシャン戦略』は10年以上前に出た本です。
 
 
ちなみに”STAGE2″には「既存メディアでの転売」ということで”独自商品の販売により、ライバルの少ない環境で高利益を確保する方法”の説明のもと『 古物市場仕入れ ・ヨーロッパ仕入れ』『オリジナルブランド開発』『自社ECサイト』いう説明を書いています。実際にどの程度のコンテンツを提供しているのかは不明ですが、一般的な常識からするとこの”STAGE2″のほうが、独自商品などでライバルの居ない環境を目指すことになりますので、どちらかと言うとブルーオーシャンであるような気がします。

※公式サイトのイメージを元に独自に作成

実はNtBカレッジが8月頃に使用していた会員向けの資料にも『ブルーオーシャン物販』というカリキュラムの説明がありました。ただしそこでは『ブルーオーシャン物販』の方に『古物市場仕入れ』『ヨーロッパ仕入れ』『オリジナルブランド開発』というのが記載されており、現在の公式サイトでブルーオーシャン物販として説明している『メルカリ無在庫転売』などの話は別の分類になっています。

※2ヶ月ほど前に使われていた会員向けの資料では、何故か『ブルーオーシャン物販』の位置づけが逆になっています。 
 
 
普通は考えにくい話ですが公式サイトの方に誤植があったという話かもしれません。しかし一ヶ月以上放置されています。そもそもNtBカレッジは、マーケティングをはじめとしたビシネスに関する知識を人に教える立場てあるはずなのですが、こうした適当な話が多すぎます。どうもNtBカレッジは、一般的なマーケティング戦略などの意味も十分に理解せずに、ただそれらしい言葉を適当に見繕って使っているだけのように思えます。
 

 
■メルカリで無在庫転売?

何よりも疑問なのが『メルカリ無在庫転売』という点です。ご存知の方も多いと思いますが、メルカリでは”手元にない商品を予約・取り寄せで販売する行為”が禁止事項として挙げられています。しかしNtBカレッジは公式サイトに提供しいるコンテンツとして堂々と表記しているわけです。
実は以前からNtBカレッジのセミナーや勧誘時の説明でもメルカリの無在庫転売で稼ぐという話はよくあり、よく問題視されていたのですが今回公式サイトに堂々と載せている形になっています。
 
念のためメルカリを運営しているメルカリ事務局に対して、メルカリでの無在庫転売は成立するのか、またNtBカレッジに対して何か許可を与えているのかを問い合わせて、ご回答をいただきました。

ご指摘頂いたとおり、利用規約にて「手元にない商品を予約・取り寄せで販売する行為」は禁止しております。
また当該団体に特別な許可を出した事実はありません。

 
またNtBカレッジが行っているようにマルチ商法の商材として“メルカリで稼げる方法を教える”というものが許されるのか?という問に対しては以下のような回答をいたたきました。

利用規約における禁止行為に該当致します。
「弊社の事前の書面による許可なく、弊社のサービス外のところで、商業目的で、弊社が提供するあらゆるサービス、コンテンツ、情報、システム、機能、プログラム等の全部又は一部を利用すること」

つまり無在庫販売はもちろんですが、「メルカリで稼ぐ方法」というコンテンツでマルチ商法に使うこと自体が禁止されているわけです。ちなみに、この連載でも紹介しましたが「ヤフオクで稼げる方法」ということももまた、マルチ商法の商材に使うことをは禁止されています。
今更ながらにNtBカレッジが「稼げる」と言って指導しているビジネスモデルのいい加減さが浮き彫りになった形です。メルカリ事務局によるとこうしたNtBカレッジに対しては毅然とした対応を取られるようで

なお、弊社からの当該団体に対して、警告等行わせていただく所存です。

とのことでした。今後NtBカレッジの対応が気になるところです。
 
 
 
■知らぬ間に変わっている社名
 
NtBカレッジは発足当初、事業者名としてNtBカレッジ合同会社の名前がありました。
ところが2016年の9月にあった公式サイトのリニューアルで”特定商取引法について”というページに記載されている事業者名がNtBカレッジ株式会社に変更され、同時に住所もこれまでの千葉県千葉市から東京都新宿区西新宿のアイランドタワーに変わっています。

しかし一般向けのアナウンスはもちろん、NtBカレッジの公式ツイッターやS氏のフェイスブックなどにも、この運営会社変更した事に関しては一切報告が無いようです。住所も事業者も変更になっているのに一切アナウンスしていないのは奇妙に思えます。
一般的には合同会社から株式会社への更新は社会的信用度が増すと捉えることができますので、特に会員ビジネスの場合などは広く告知するものだと思いますが、何故かS氏を含めてなるだけ隠そうとしているようにも見えてしまいます。

このNtBカレッジ株式会社ですが、登記簿情報を調べてみますと2016年の8月8日にS氏が代表取締役となって資本金100万円で設立されていることがわかります。千葉県に本店を置くNtBカレッジ合同会社は資本金150万円でしたので、運営会社の資本金の額も異なっています。
また代表取締役のS氏の住所には、以前この連載でも取り上げた千葉市若葉区にある株式会社AC 千葉があった住所になっています。この会社はS氏が代表取締役を勤めており2015年8月末で業務の終了しているはずですが、この住所には未だS氏関係の何かが残っているのかもしれません。

念のためNtBカレッジ合同会社の登記簿情報を確認すると、この会社の閉鎖は確認できませんでした。これはどういうことかというと、合同会社から株式会社に組織変更して移行したわけではなく、似たような名前の別会社を立ち上げてそちらを運営会社として世間一般に公表している形です。
 
不審に思って、10月1日に改正されたNtBカレッジの概要書面を調べてみると、運営会社は千葉県のNtBカレッジ合同会社のままになっています。公式サイトでの表記とは明らかに違います。1ヶ月以上この概要書面を使用している状態や、NtBカレッジ株式会社の登記や公式サイトでの公開時期を考えると単なるミスとは考えにくく、どうも運営会社の実態を世間にわからないようにさせる目的がある可能性が指摘できるでしょう。
 
 
 
■怪しい概要書面
 
また2016年10月1日に改定された概要書面には、『取扱商品・役務/種類』にも変更がありました。この連載でも再販などの問題を含めて不審な点を指摘していたのですが、『入会金』という役務の中に含まれていた『会員のための福利厚生サービス』が外れました。
新たに『月謝』という役務の中に『自己診断プログラム』というものが加わっています。これは性格診断の一つらしいのですが、まず入会すると最初に2時間程度かけて、この診断を受けて自分にあったビジネスプランを作るというものだそうです。入会最初に行うものだとすると、どちらかと言うと『入会金』の方に入るのが相当だと思うのですが、例によってどうもコンテンツを適当に列挙する形になっている思えます。

ただネットワークビジネスなどを展開する企業が提供するこうした自己診断プログラムは、少し注意をしておかなくてはなりません。仮に根拠がいい加減な診断であっても「隠された自分の能力はこれだ」や「本当の自分の特性はこれだ」などと言われてしまうと、診断を受けた人はそれが間違っているとは中々言えない構造になっています。そうした中で「診断によるとこうだから」と言って特定の商品を進められる根拠として使われたり、「あなたは勧誘に向いているのだから」と言って成果のあがらない勧誘活動をさせることにつながっていったりする危険性があります。
また、これもNtBカレッジだけがどうであるのかとは別問題になってくるのですが、診断の結果が会員に対して何をやらせるのかというものと密接に関係している場合、マルチ企業が好む結果になるような診断にされているかもしれないという指摘もあります。例えば、もしセミナー会場の盛り上がりが欠けていると思えば「ムードメーカーら向いている」としてサクラ行為などの参加へ誘導したり、セミナー講師になってくれる人が欲しいと考えれば、診断結果を「人を導くのに向いている」と出やすく調整するかもしれません。フェイスブックなどで内情を暴露されるのを恐れると「フェイスブックは向いていない」と言う話を出してくることも可能です。

もちろんあからさまな結果の提示ばかりではなくて、例えば運営側の思惑で特定の結果の適合率を15%水増しするといった風にすると、外からではまずわかりません。こうした危険性がありますので、直接的な利害関係に結びついてくるオリジナルコンテンツの診断というのは、少し警戒しておいた方が良いのかもしれません。

実際、過去には性格診断や心理テストや占いといったものを入り口としたマルチ商法の勧誘が行われているケースが多くありました。性格判断や心理テストと言うと何か面白そうな話に思えて、知人からの誘いに軽く応じてしまうと気がつくとマルチ商法の勧誘セミナーになっていたという形です。
現在では連鎖販売取引は、その勧誘に先立って特定負担を伴う取引についての契約の勧誘をする目的であることを説明しなくてはならないとされていますので、そうした行為は難しくなっているように思われる人も多いかもしれませんが、この連載でも指摘してきたとおりNtBカレッジなどは、事前に十分な説明を行わないままセミナーなどに勧誘していく事例が数多くありますので注意が必要なのです。

この自己判断プログラムですが、どうもNtBカレッジは何年か前に、生年月日からその人の素質がわかるという素質判断を元にマルチ商法の勧誘を行っていた方の手法を真似ているように思われます。実際に8月ごろに開催していたNtBカレッジのセミナーにおいては、この素質を判断するという手法を大きく掲げていました。こうしたセミナーでは登録商標である素質判断の名称を掲げていましたので何か関係があったのかもしれませんが、結局NtBカレッジは「自己診断プログラム」を、オリジナルのものとして提供すると主張する結果になっています。しかしオリジナルのものとなると、そのプログラムの根拠は一体何であるのかといった問題が出てきます。残念ながら概要書面には「エニアグラムを基にしている」等の一見それらしい記載はあるのですが、具体的に消費者が価値を判断するために有効だと思われる情報は見当たりません。性能や指導者の資質に関する客観的事実が提示されていないということは、法的な問題点として指摘できるでしょう。

この他にも継続しているコンテンツや一部整理された内容などを見ても、この連載で指摘しているとおり、コンテンツの内容に関して客観的な価値判断を行うことが難しい記述が並んでいるのは変わっていません。
 
 
 
■不思議な修正
今回の概要書面の改定で不思議なのが色の変更です。連鎖販売取引を規制している特定商取引法では概要書面の重要な部分を赤枠の中に赤字で記載しなくてはならないとしています。
しかし今回の改定では赤字からピンク系の色に変更しています。ピンク系の色も赤字であると強弁できなくもないのですが、改定前は赤字で作成していたものを、あえてわざわざ問題視される可能性が出る方向に変更する意図がわかりません。もしかすると連鎖販売取引を規制している特定商取引法の知識もない人が、ただなんとなく変更した結果かもしれません。

※左が2016年10月1日改定、右が2016年5月16日に作られた以前のバージョン

NtBカレッジはこの赤字の記述などに絡んで、他にも概要書面の運用にも幾つかの問題が指摘できます。NtBカレッジは概要書面を”5部:500円、10部:750円(税・送料込み)”で販売しています。まず概要書面は勧誘に際して必ず交付しないといけないものですから、連鎖販売取引の特定負担に該当するのですが特定負担の項目には記載されていないという問題があります。
さらに有料にしたことによって、特定商取引法で定められた書面の交付を行っていないケースも生まれているようです。例えば、勧誘時にはとりあえずPDFの概要書面を印刷して渡して、後日アリバイを成立させるためにきちんと購入したものを渡すという手法をNtBカレッジでも想定して会員に対する指導で言及しています。当然ですが、カラー印刷、カラーコピーをしなくては赤字は出ません。A4印刷で出力すると全部で10枚になる書類ですがNtBカレッジ側はカラー印刷をしろという指導を行っていなければ、白黒コピーなどで使って作られた法的に問題がある概要書面での勧誘活動が野放しになることになります。他にも特定商取引法では、クーリングオフなどの重要な表示に関しては文字の大きさまで指定されていますので、縮小して印刷したものを使っていたりすると法律違反の文字の大きさになってしまう可能性が出てきます。

このような問題が発生する可能性があるのにもかかわらずコピーなどでの運用を想定しているのには、いくつかの理由があると思われます。まず厳密に概要書面を必ず買わせる形の運用にすると、勧誘が成功しなかった場合にも発生する負担が目に見える形になってしまうのでNtBカレッジとしては強制するような運用は避けたかったのでしょう。運営側を考えると、全国各地で開催される説明会や勧誘活動に対応する形で、概要書面の発送を行う業務体制が整っていないのかもしれません。

ちなみに概要書面の料金設定に関してですが、多くのマルチ商法の業者の場合、先に触れた特定負担にも関係してきますので概要書面で料金を取ろうとする所は寡聞にて知りません。そんな中NtBカレッジが概要書面で料金を取ろうとするのは一つは収益面の話もあるのでしょうが、それよりも内容に法的な問題が多い概要書面が広く世間にさらされてしまう事を阻止する狙いがあるのかもしれません。
 
こうしたNtBカレッジの概要書面の取扱の結果として、赤字が記載されていない白黒コピーの概要書面での勧誘の他、勧誘に際して概要書面を書類として交付せずにPDFのダウンロードページを紹介するだけとというケースもありました。一応NtBカレッジの入会申し込みページには、チェック項目として概要書面の交付を受けたのか等の確認はあるのですが、こうした事例を考えると実質的に機能していないことを見越しての勧誘行動が多くある点は指摘できるでしょう。
 
 
 
■報酬体系が強化
  
また今回の概要書面の変更は、報酬体系にも及んでいます。NtBカレッジでは従来からバイナリーやユニレベルという配下の組織規模で支払われる”ベースコミッション”や”育成コミッション”といったもの、上位会員に支払われる”タイトルコミッション”、新規会員を獲得した際の”新規紹介手数料”というものがあったのですが、それらに加えられる形で、バイナリーで直下の一段目が左右ともアクティブであった場合に支払われる”レベルマッチボーナス”や、一定以上のタイトルを獲得している会員がスピーカーとなって説明会を行った際に入会者が発生すると獲得できる”アドバイザーボーナス”と言うものが加わっています。

商材であるコンテンツの充実に力を入れるのではなくて、集めたお金を会員らに還元する方向によりいっそう力を入れた形です。もともとNtBカレッジは勧誘活動だけで、集めた金品を分配する仕組みができあがっており今回のメルカリでの無在庫転売を含めて提供しているコンテンツの価値自体にも疑問符が打たれているところではありますが、こうした金品の分配を強化した形は、無限連鎖講に該当する懸念をより一層強めていると指摘できるでしょう。

2015年11月27日に作成されたNtBカレッジの『自動顧客獲得システム』という会員向けの文書には、「Q.これって、ネズミ講やMLMではないんですか?」と指摘された際の回答例が用意されており、その一部分には、「最も重要視しているのは、会員の方に提供する商品(会員様に提供するネットビジネスのノウハウやビジネスモデル、システムなど)をどれだけクオリティの高いものにするか?どれだけ結果につなげられるものにしていくか?ということにのみフォーカスしています」といった内容の記載があります。

今回の報酬体系の変更は、ネットビジネスのノウハウやビジネスモデル、システムとは違い言ってみれば連鎖販売取引における還元の強化ですからこの一年のうちに何か大きな方向転換があっということなんでしょうか。
そもそも今回のメルカリの無在庫転売の例をあげるまでもなく、この連載ではNtBカレッジの提供するネットビジネスに関するサービスの商品価値に対する疑問点を指摘してきました。そもそもNtBカレッジが提供しているネットビジネスというのはクオリティーの問題以前で、その中には迷惑行為になっているものがいくつもある点が指摘できるでしょう。

このマニュアルには、このようなことも書かれています。

MLMかどうかというのは単なる集客手段の1つでしかなく、例えば、集客するのにチラシを使うのか?新聞広告を使うのか?MLMを使うのか?というだけの話だからです。

よくあるマルチ商法のごまかしの例です。自分の配下に組み込むことで金銭が直接発生するMLM(マルチ商法)と、一般的なチラシや新聞広告といった手法とはその性格や方向性が大きく異なります。集客方法の一つでしか無いと主張したとしても、実際には殆どの場合他の手法には置き換えられないという点があります。例えば、適正な市場競争の元では一般的な広告マーティングを行ってもほとんど売れないような商品でも、マルチ商法に組み込むことで集金と分配のマネーゲームが成立してしまう怖さがあります。これまで代表のS氏が数多くのネットビジネスに関する情報商材の販売を開始しては短期間で有耶無耶にしてきた経緯から考えて、NtBカレッジで提供しているサービスもまた、MLM(マルチ商法)の仕組みを活用しなければ売れないものであったのかもしれません。
 
 

■人というのは気がつかない
 
概要書面の変更の後にNtBカレッジに勧誘されたり入会された方とお話できたのですが、お話を伺ったいづれの方も公式サイトに記載されている運営会社としての会社名や住所と、概要書面などに書かれている運営会社の会社名や住所が異なっていることに気が付かれてはいませんでした。ただ何も私がお話を伺った方々が”特別に無防備な人”とはいえないと思います。
まっとうなビジネスをしている一般の企業の場合、契約書などの記載が公表している内容と大きく異なっていたりすることはまずありえませんし、法的に問題のある記述がそのまま放置されているという状況も考えにくいと思います。我々の日常生活を振り返ってみても、関係する全ての契約書を念入りにチェックしているという人の方が少ないでしょう。もちろん、こうした怪しい表記に気がつけさえすれば企業として信用がおけないとすぐ判断できると思いますが、いい加減な記載でも気づかす見過ごしてしまうこともあるでしょう。

最初から消費者を騙そうとする人は、時にこうした感覚に付け入ろうとします。消費者としても注意しておくべきでしょう。また騙そうという人の側から見ると、”最初によく契約書などを読まない人”は、知識や行動力がなく騙されたと気がついたとしても、”泣き寝入りする人”だと見られているかもしれません。そういう”泣き寝入りをする人”は騙す人からすると実に都合が良い人です。実際、悪徳商法の被害に遭われた方には、泣き寝入りしてしまう人も多いのも現実で、それが悪徳商法を助長させる結果につながっています。

また、マインドコントロールを含めた様々なテクニックを使い相手を信用させるMLM(マルチ商法)の手法を使えば、たとえビジネスの知識や能力が欠落して商品内容はもちろんのこと、法定書類もいい加減なものしか用意できなかったとしても、比較的短時間に数千人の会員を集められるという点にも注意が必要です。
ただ被害者が増えるというだけではありません。何よりも恐ろしいのがマインドコントロールにより会員の価値観を作り変えていく手法がある点です。今回のNtBカレッジの報酬体系の改定では、勧誘等に対する報酬の強化が指摘できますが、これは会員を勧誘の道具として動す動機づけになります。NtBカレッジは勧誘だけで報酬を得られる体系がありますから、稼げると言われて入会した会員は、自分が稼ぐために”実際には稼げないネットビジネス”よりも勧誘活動の方を積極的に行っていくことにつながります。
確かに稼いでいる上位会員というと、ネットビジネスで稼いでいると主張する人の実態やノウハウはよくわからない一方で、熱心に勧誘を行っている人が目に止まるでしょう。セミナーのサクラやABCシステムといった勧誘時の役割分担など、具体的な仕事はいくらでもありますし、NtBカレッジではそうした手法が月謝などに含まれるサービスとして存在しています。そういったものに晒されると”当面自分にできそうなのは勧誘の方”だと考えてしまうかもしれません。この瞬間、被害者が加害者にもなってしまうのです。

ピラミット状の組織図を想像してもらうとすぐにわかるのですが、そうして加害者の側になってしまった人でも自分の出資分を取り戻せる人は少なく、さらに継続して勧誘活動が成功する人は滅多にいません。盛んに勧誘活動を行っているのにもかかわらずNtBカレッジの会員数が横ばいである状況を見てわかるように、入会した多くの人が退会していく形になっています。これはピラミッド状の組織の下部層で激しく入会と退会が繰り返されており、多くの被害者と加害者を生み出しながら集められたお金が上層に分配される形になっているという事です。

続きます。
   
 
  
※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年11月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
 
※もしNtBカレッに該当すると思われる組織、あるいはその他組織に関して何かご情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、筆者のTwitterなどに宛ててお気軽に教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 
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消費生活アドバイザー めきし粉書房代表。 電子書籍とか出してます。 オカルトから文芸、その他。 最近のメインテーマは「プロパガンダ」とか「マインドコントロール」 貧乏オーディオ愛好家。

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