怪しいネットワークビジネスを追え! ~9

  by mexicona  Tags :  

「ネットビジネスを教える」という事を商材としたネットワークビジネスを展開しているNtBカレッジの勧誘では、しばしば代表のS氏の事を「ネットビジネス業界の有名人」「これまで実業家としてはもちろん、ネットビジネスでも実績を上げてきたすごい人」と言った様な説明をして、「実績のある人が教えるのだから安全で確実である」と思わせて勧誘しようとする構造があります。今回は実際にS氏はどのような経緯で情報商材に関わっていくようになったのかを調べながら、実績や経歴の脚色の手法などを含めて、どのような人物がNtBカレッジの代表者であるのかを確かめていきましょう。

※しかしながら、いざ調べ始めるとここ数年の間だけでもS氏が関わった情報商材の数は数十件以上あることがわかり、まるで焼き畑のように新しい商材を立ち上げては潰していくことを繰り返している上に、S氏の発言にも矛盾点や脚色と思われる部分が多く、なかなか全体像が把握しきれません。この記事ではソースが確認できるものから情報商材に関係しているものを中心に取り上げて構成しましたが、記事で取り上げているもの以外にも複数の疑惑がもたれるような情報商材への関与が確認できる点には注意が必要です。
 
 
 
■S氏と情報商材との関わりあい

S氏の話によると、2001年にビジネスセミナーや書籍などを中心にコンサルタント業を行っていた神田昌典氏の『顧客獲得実践会』というものに”高いお金”を払い入会したという事です。ここでマーケティングを学んだという事になっています。神田昌典氏が直接S氏の情報商材に関与しているとは思えませんが、S氏はこの神田昌典氏のセミナーを受講した事を機会があるたびに語り、一時はプロフィールにも掲載していたほどです。このセミナーを通してS氏は情報商材に関わる人たちと知り合いになったという事ですが、ただすぐに情報商材の世界に入っていったというわけではないようです。
 
 
2009年頃になりS氏はキャバクラ経営などの実績を自称して『男の起業塾』(仮名)というセミナーを主体とした起業コンサル業のようなものを主宰します。しかし特に実績をつくれたというわけではなく、S氏の対談によると、ほとんど人が集まらず「売り上げゼロが1年以上続いた」という話が出てきます。また現在も残されている『男の起業塾』関連の公式チャンネルと思われるところを含めて、公開されている様々な動画の再生回数を確認してみると、数十回から多くても数百回程度で止まっており(確認のため筆者も複数回視聴しています)、S氏の言葉と合わせて考えると”集客マーケティング”を謳いながらも、集客することが出来ず実績をつくれないままであった実態がうかがえます。

 
そんな中、S氏は2010年の初頭に「インターネットで集客をしてコンサルタントとしてデビューすること」を決意したそうで、その年の1月ごろから、当時利用者数が多かったサイバーエージェントが運営するレンタルブログサービスのアメーバブログにおいて自身のブログを開設します。そして3月ごろに「起業・ベンチャー」「人生これから」という二つのカテゴリーで、訪問者数集計のデイリーランキングで1位を獲得した日があったようです。S氏は「アメブロ読者数1位の社長」といった事をよく実績として紹介しているのですが、実態を調べてみるとアメブロの総合ランキングで1位になったという話ではなく、普通は話題にもならないような小さなカテゴリー内のわずか1日の出来事だったようです。
念のためアメブロの2010年の月間総合ランキングのいくつかをインターネットアーカイブから確認したのですが上位圏内にはその姿形もありませんでした。実際のところはテゴリー内でもランキング上位をキープしていたわけではなく、たまたまか作為的な操作かでアメブロの中の小さなカテゴリー内で1位になった日がある程度の理解の方が正しいと思われます。

 
その後、S氏はそのアメーバブログなどでも情報商材のアフェリエイトでの販売などを始めます。その傍らでF出版が関連しているコンサルタントの協会が主催する「コンサルタント資格認定講座」という60万円もする講座を受講しています(現在の受講料は7日の講座で97万円程度)。このF出版は自己啓発関連のビジネス書などを出版してる出版社で、出版業の傍らでその著者によるセミナーや教材、講座を企画して販売していく商法を行っています。良い悪いという話は別になるのですが、出版からセミナーや教材発売をトータルで手掛けることで、セミナーや講座などで使う「出版実績」などを自前で用意してしまえる体制があるというのは興味深い所です。
なかなか実績が作れないS氏にとっては、F出版のビジネスモデルは魅力的に見えたのかもしれません。講座を受講したS氏は認定コンサルタントとなり、F出版が関係するセミナーなどの手伝いなどを積極的に行っていくようになります。
 
 
さて認定コンサルタントとなったS氏は、F出版のO社長に自身が関係するキャバクラなどで接待をしつつ10月にF出版から本を出します。著者としてのS氏は「7つの企業を経営し、コンサルでも実績を上げている」という触れ込みだったのですが、ある対談によるとS氏は本を出すことで立ち行かないコンサル業を立て直すことを期待していたという話を語っています。また講座を受講者が出版したというS氏の実例は、F出版が関係する協会のコンサルタント資格認定講座の宣伝にも活用されることになります。この利害関係は中々興味深い仕組みがあるといえるでしょう。

ここではS氏が出版した本の内容に関しての評論は避けますが、この本が3万3000部だとか3万5000部出てベストセラーになったという話になります。一般の人はそうした話を聞くと、ついつい3万人を超える読者を獲得したと誤解してしまうかもしれません。注意しておかなくてはならない点として出版部数と販売部数は別だという点です。売れた本はずっと少ないかも知れません。
またこれは一般的に言われている話ですが、出版部数というのは現状水増しが常態化しているという問題もあります。多くの出版社で多かれ少なかれ発行部数の水増しがあるという話ですが、この水増しの割合というのは出版社によって異なるわけで、本当か嘘か「大手は控えめで中小は多め」という話がまことしやかにささやかれています。実際にどの程度売れたのかは気を付けて判断する必要がありそうです。
さらに、こうした宣伝目的で出版を行っている人の間では、出版社が行っている水増し以外にも、著者が自分で大量に購入して部数の実績のかさ上げを行うという行為も存在しています。S氏がどうだかはわかりませんが、本業の宣伝目的や関連するセミナーや講座を開いて儲けようと考えている人の中では、そした自分買取がよくある話だそうです。
  
断定をすることはできませんが、セミナー業で儲けたいと考えていたであろうS氏の場合は、多少の無理をしてでも自費で購入することで「ベストセラー」という実績を作ることにメリットを感じてもおかしくはない立場だと指摘できます。ちなみにベストセラーになったという割には、S氏はその後F出版から本を出していないようです
 
実際の所、本を出版することで自分のコンサル業に人が来ることを期待していたS氏ですが、世の中にはそんなに甘い話はなかったようで、S氏は対談で「出版してもコンサル事業は何も変わらないままだった」という話をしています。

また、せっかく取得した認定コンサルタント資格の方ですが、不思議なことに2013年頃には協会の認定者の名簿の中からS氏の名前は消えています。一体どういった事情があったのかわかりませんが、S氏の事業にとって協会のコンサルタント資格認定は、あまり実にならなかったのかもしれません。
 
 
■怪しいfacebook展開

2011年に入るとS氏はfacebookのセミナーを積極的に開催していきます。従業員5人程度までの中小企業に特化したことで「当たった」ということになっているようです。S氏は「当時はfacebookに関する書籍も少なく」と言ったことを言っているようですが、2010年位からfacebook関係の本は盛んに出版されており、中小企業の利用は一つのテーマとしてありました(当時、熊坂仁美なども小規模ブランドの事業展開などの事例を紹介しています)。別にS氏は何か新しい切り口や手法、ノウハウを作ったというわけではないようです。セミナーの内情にしても、前回の連載で記事にした通り実績も知識もほとんどない状態でのスタートだったようです。もちろん後々知識や技能を蓄積し成長してそれを還元していったのであれば、まだある程度は理解できる部分もあるのですが、実際のところ自分が関係していると主張する会社や店舗では本格的にfacebookを活用している形跡が見られなかったり、「プロフィールの入力はしっかりしましょう」という当たり前の指導を行っている一方で、2016年になっても自身のfacebookのプロフィールはいい加減なままだったりしていることからも、facebookセミナーの内容も、適当に行っていたことが推測できます。
さてS氏はこの年の夏ごろに、こうしたセミナーを通してお金持ちアピールで世間を騒がせた情報起業家のY氏と知り合いになったという話を語っています。後にS氏はこのY氏の元から情報商材を販売することになります。
 
 
また、この2011年頃からS氏は『国際ビジネス大学校』という組織(学校法人ではありません)の教授というものになっています。経緯が不明なので少し『国際ビジネス大学校』について調べてみました。

※国際ビジネス大学校の認定教材という名目でS氏が販売していた情報商材。定価は12,800円。「売上げの10%~20%」が国際ビジネス大学校の運営資金として寄付されるという。
 
 
この『国際ビジネス大学校』の入学金や授業料の振込先は、特定非営利活動法人である「国際コンサルティング協会」になっており、そこが運営の主体になっているようです。内閣府のサイトから”特定非営利活動法人”についての情報を調べてみると、広島市に主たる事務所を置く法人で事業の目的として「文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」を第一とし「子供の健全育成を図る活動」「社会教育の推進を図る活動」「国際協力の活動」「街づくりの推進を図る活動」と続いていることがわかります。「国際ビジネス大学校」が一体どういった活動を行っている組織なのか現在ある公式サイトから調べてみると、この『国際ビジネス大学校』には16の学科(『夢のかなえ方学科』や『マジシャン学科』などもあります)があり、学長1人に教授が4人、講師11名が所属している形になっているようです。

※内閣府のサイトで公開されている収支報告書より

実際の活動内容の規模や様子は公開されている「国際コンサルティング協会」の収支報告からある程度推測することが出来ます。収支報告を順に見ていくと、2012年度に入会金会費収入として3,171,500円が入っていることが分かります。その後は2013年度には3,103,735円、2014年度は大きく減って231,000円となっています。『国際ビジネス大学校』の入学金は120,000円で、それに加えて発生する授業料は、全学科を受講できる「フリーチョイスプラン」だと480,000円、一番安い「3教科チョイスプラン」で一年間で300,000円が必要となってきます。協会の収入の全てが「国際ビジネス大学校」の入学金や授業料だったとしても、『国際ビジネス大学校』には2012年から10人も参加していないような状態が続いて、2014年には新規入会はいない状況であることが推測できます。学科とそれを担当する講師の人数の方が多い状態です。
これはどういった事を示唆しているかというと、『国際ビジネス大学校』は社会教育の組織というよりは大学校と称する所の「教授」という名称(大学でいう教授とは別)であるとか「(大学と誤解させることを前提で)大学校で教えている」といった肩書がほしい人のための組織である可能性が高いという事です。
 
現在、様々な反社会的な組織の特定非営利活動法人の制度の悪用は社会問題となっている所ですが、直接的な悪用ではなくこのような形で消費者に誤認させるための権威づけの活動にも使われているという実態は、我々消費者の側も社会的な問題として認知しておくべき問題だと思います。
 
 
今回、何故この『国際ビジネス大学校』に注目したのかというと、やみくもに「学科」という構成を作ったり、あたかも教育機関であると誤解させる手法は、その後のS氏が関与していくNtBカレッジの運営にも色濃く影響を残している点が指摘できるからです。中卒であるS氏は学校や教育に対するコンプレックスが強いようで、学校という形の組織にことのほか興味を抱いているのが指摘できるでしょう。
 
 
 
■怪しい情報商材の発売へ

さて、その一方でS氏は2011年の末から情報商材を扱っているSKN社のグループのプロデュースを受けて「S式Facebook塾(仮名)」という名目で、198,000円もする高額な情報商材の販売を開始します。誇大表現が疑われるようなセールスレターのほかに、当時よく見られていた無料動画などで人を集めてバックエンドの高額商品に結び付けていく手法がとられていたようです。よくあるパターンは、アフィリエイター(アフェリエイト報酬を得る人)などに成果報酬や紹介料などを払って「セミナー動画を無料プレゼントする」という案内を拡散させて、動画を見た人を「その気にさせて」申し込もに誘導する形です。成功している自分を見せて信じこませたり、見ている人に自分もできると思わせるのですから、動画では人の感情を揺さぶり動かす演技力が必要になります。S氏は今まで携わってきたセミナーを含めて、こうした動画の出演でその腕を磨いていった事が指摘できるでしょう。
 
肝心の情報商材の内容はというと「コピペだけで誰でも簡単にお金を稼げる方法を教える」というもので「自分はコピペだけで月収一千万円を稼いでおり、そのノウハウを教える」と主張し、DVD数十枚からなる教材を売るという形です。ここで登場するコピペという手法はNtBカレッジをはじめ、その後のS氏の情報商材などにたびたび登場してくることになります。
セールス用に用意されたページを見てみると「日本でまだ私だけしか知らない日本初の驚愕のfacebookノウハウ」と言った言葉がありますが、何故か既に実践しているモニターの声が届いているという不可解さがあったり、「毎月30万円、100万円と面白いように稼げます」、「100%稼ぐことができると断言できます」「月に100万円以上を確実に稼げることができます」といった根本的に、誇大広告などの問題が疑われる表現のオンパレードになっています。このおおげさな宣伝は注目を集め、S氏が業界で知られるきっかけになったと言われています。
 
このS氏が販売していた情報商材で教える稼ぐ手法というのは、facebook上にコピペによるスパム投稿を繰り返しアフェリエイト報酬を得るというものが一つの柱になっているようです。これは一般ユーザーからすると迷惑行為です。実行するとfacebookの規約違反にもなりますからIDが凍結される結果になる可能性があります。またS氏が直接、疑問や質問に答えるというサポート体制というのもウリにしていたのですが実際には十分に機能しておらず、多くの人からクレームと返金騒ぎが起こった様です。
 
 
それまでのS氏は中小企業向けのfacebookセミナーやコンサルタントを行っていたという事になっていますが、この情報商材はfacebookを活用するといってもその内容の方向性は明らかに中小企業向けのものとは違います。(日本初というのがウリですから、仮にセミナーでその内容を紹介していたとなると話がまたややこしくなります)
実際にS氏は、それまで行っていたfacebookのセミナーでどの程度成功していたのかはわかりませんが、逆説的に考えると、ほとんど評価されなかったからこそ簡単に方向性を変えることが出来たのではないか?とも考えることが出来るでしょう。この方向転換を主導したのが、情報商材を扱っているSKN社のグループのようです。
S氏はfacebookのセミナーなどを開催しており人前でしゃべり慣れているので、動画を使った情報商材のプロモーションではその技能を発揮させることが出来ると考えられますし、出版の実績もあり実業家であり数億円の売り上げがあると自称しているので、情報商材を売り出すための看板としてもってこいの人物に見えたのかもしれません。また矛盾だらけの話でもためらう事なく喋り、自分を成功者とみせようとするS氏の言動は一つの才能とみられていた部分もあるかもしれません。
 
 
この「S式Facebook塾(仮名)」は、ガジェット通信に転載されていたS氏のインタビュー記事によると第一期目で約650人の人を集めたという事になっています。この数に対して、もしかすると派手な露出のわりに意外と獲得が意外と少ないように考える人がいるかもしれません。しかし単価が20万円ほどの商品ですから、650人で約1億3千万円の売り上げとなります。殆どの消費者はこうしたあからさまな誇大広告を鵜呑みにすることは無いわけですが、1000人に1人でも引っかかる人がいてくれれば、十分な収益を得られると考えられた手法なのかもしれません。

実際にS氏が、このS式Facebook塾でどの程度利益を得たのかはわかりませんが、仮に650人を集めたという話が本当だとしても、S氏が売上の1億3千万円をそのまま手にできたというわけではありません。販売元となっているSKN社の取り分のほかに、自前発信のスパムやブログ掲載依頼などに使った広告費や、アフェリエイトして誘導してくれた人への支払いなどの相当の経費を差し引かなくてはなりません。見方を変えるとS氏のような人を作り上げることで、それに群がって利益を得る人たちが多くいるという事です。彼らはいい加減な商材でも、それを売るために褒めたり実績があるように見せて、言葉巧みに一般消費者を誤解させようとすることも珍しくはないのです。
 
 
また批判の多い内容の情報商材でしたが、S氏は一切返金などに応じなかったという話もあります。もしかすると投資額を考えると返金に応じたとたんに破たんするような状態だったのかもしれません。実際に訴訟まで起こして取り返そうとする人も割合的にそれほど多くは無いでしょうから、返金などを要求されても「無視していても大したことにはならない」と考えていた可能性があります。仮に、いい加減な高額商材を売りつけてたり購入者からの返金の求めを無視しても「警察などに捕まることはない」という認識が出来上がりそれがS氏にとっての一つの成功体験となったとすると、その後の彼の行動の方向性を形づける一つの契機になった可能性を見ることが出来ます。
 
 
 
■ソーシャルマーケティング?

一方でS氏は2012年に、それまでWeb制作をなどを手掛けていたST氏と伴に「ソーシャルマーケティングを広めること」を目的とした協会を立ち上げS氏が代表理事に収まります。名称に「ソーシャルマーケティング」という言葉が入ったこの団体は、実際の運営はS氏が代表取締役となっているAP社とST氏の会社が行っていたようです。
 
 
しかし少しでもきちんとマーケティングを勉強した人であれば「ソーシャルマーケティング」というのは、1980年代にフィリップ・コトラーなどが提唱して発展していった概念で、営利事業組織が行っている利益追求型のマーケティングではなく、社会とのかかわりを重要視するマーケティングの事だという事は存知かと思います。具体的な例としては、JTの喫煙マナー広告やAC公共広告機構の広告キャンペーンなどがあり、近年ではNPO組織のマーケティングなどにも応用されていたりもします。

しかしながらS氏やST氏は、「ソーシャルマーケティング」をSNSなどのソーシャルメディアを利用して集客を行う事だと独自に解釈して活動を始めたようです。おそらくこれは一般的には「ソーシャルメディア・マーケティング」と呼ばれているもでしょう。
S氏は「マーケティングの専門家」を自称していますが、こうしたことからもごく初歩的なレベルのマーケティングに関する知識すら持ち合わしていない可能性がうかがえます。例え、たまたまその用語を知らなかったり誤解していたという事があったとしても、常識的な感覚でいうと事業を立ち上げる際には、設立目的の説明やネーミングに関して使う重要な言葉は誤解が無いように気を配るものです。普通の感覚では、専門家としてはありえないと思います。

  
  
この協会を作ったS氏とST氏は、共同で『企業Facebook集客実践会』(仮名)であるとか「コピペ丸投げプロデューサー」といった内容の情報商材を次々と手掛けていきます。そのうちの一つに『ありえない稼ぎ方』(仮名)という約45万円で販売されていた情報商材があります。少しその内容を見てみましょう。
 
 
この情報商材は無料で視聴できる動画をプレゼントするといったプロモーション手法を中心に販売勧誘を行っていたようですが、具体的には以下の5つのステップで稼げるといった内容でした。

1.よだれを垂らしながらあなたを待ちこがれている中小企業経営者がいる
2.あらかじめ用意してある契約書をコピペして持って行き契約を取る
3.翌日その企業から50万円~100万円の入金が入る
4.入金の50%をS氏に振り込む
5.丸投げでS氏がコンサルを引き受ける

リスト作成はツールを使ったり、トークスクリプトとやら名刺などは用意してくれるようですが、これを45万円で売りつけようとしていたというのは、正直、開いた口がふさがらないと思います。大金を払って、まず成約をとることが難しいであろうコンサル契約の営業の仕事を歩合制でさせられる形です。そもそも仮に簡単に売れるものならば多くの企業が行っているように自分たちで人を雇って売るはずです。
 
ほとんど騙される人もいないと思われる内容ですが、内容を一旦おいておいてスキームだけに注目してみても、これを売ろうとした人は本当に一般社会での仕事をしたことがあるのか疑問です。例えば支払いに関して見ても、企業相手に一般的な月末締めなどの掛取引ではなくて契約をした翌日に振り込みをさせようとしている点です。現物がない”コンサル”という商品の売り込みのアプローチを信用関係がない売り手がやろうとする話なのに、契約の翌日に前払いをさせる形というのは奇妙です。普通ですと「無理をお願いして当日支払い」にしたとしても、相当「売りにくい」という話になるようなところだと思います。もしかするとS氏は、よくある「売ってやるという強気の姿勢で営業をしろ」という話を、商品に関する価格や割引といった部分ではなくて、入金スキームの方で実践しようとしたのかもしれませんが、それはおそらくそれは間違った解釈になると思います。
S氏は複数の事業を展開している経営者という触れ込みですが、普通の経営者の感覚ではまずこうしたお金の流れのスキームは考えないと思います。この連載ではS氏の経営者としての実績が怪しい点に様々な角度から触れてきましたが、ここでも改めてそのことが指摘できるでしょう。
 

ちなみに1年ほどで、この一般社団法人の代表理事はST氏に入れ替わり運営などからS氏の会社の名前が消え、さらに1年ほどでS氏の名前自体が消えてしまいます。 

2012年の末に入るとS氏は「S式Facebook塾(仮名)」の二期の販売を開始します。発売元がSKN社から、金持ちをアピールして一躍有名になったY氏の会社に代わり、今度も派手なプロモーションを行います。S氏によると二期には450人が集まったとのことです。この数字自体どの程度信用するかは問題ですが、一期よりも数を減らしたことは確かなようです。世間がY氏に注目していた時期で、Y氏が集めた新しい系列の人にアプローチして、価格も期間限定で16,8000円に割り引くなど色々と工夫をしたようですが、確実に売り上げを落としたのは指摘できるでしょう。

またこの年ぐらいからS氏は、Y氏を中心としたネオヒルズ族と呼ばれたグループとも接近して、複数の情報商材に参加しています。その後、S氏は独自にこのY氏のグループが行っていた手法の真似をするようになるのですが、ネオヒルズ族として成功をおさめたというわけではないようです。
 
 
 
■情報商材にのめりこむ

2013年頃からはS氏が代表取締役となっているAP社も直接情報商材の販売を手掛けるようになります。そこでは「facebook投稿が現金収集マシーンになる」としてブログとfacebookに対して同時投稿するマルチ投稿ツールを半年契約で127,000円で販売したり、メールアドレスを回収してリスト化するツールの販売などなど様々なものを手掛けていました。
ざっと解説すると、マルチ投稿ツールは無料のスクリプトを含めて色々と出回っています。またマルチポストはコンテンツ評価が低くなる傾向がありアフェリエイト目的の投稿を量産したところで意味は無いどころかマイナスになると指摘されています。
公開されているメールアドレスを回収するというのは、実態が巡回型ボットの様です。これで集めたリストを活用してスパムメールを送り付けることでアフェリエイト収益が得られるという説明で、このツールをS氏は98,000円で販売していました。既に当時から既にオプトイン規制(承諾のないメール広告の禁止)が始まっていたはずですので、アフェリエイトを目的としたこのツールの価値は無いと言えるでしょう。それどころかこうしたツールで勝手に収集したアドレスに広告を送り付ける行為は、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。
 
 
そして2013年の2月にS氏は大手出版社Kから『あなたもfacebookで年収1億円』(仮題)というようなタイトルの本を出版します。S氏は大手の出版社からfacebook関連の本を出版し、いよいよここからfacebookのセミナーやコンサルタントの活動を本格化させていくのかと思いきや、出版から半年もたたない2013年の7月にはfacebookセミナーから撤退を宣言しています。

その一方でS氏は他の人の情報商材の販促動画に出演したり、自らも「女性にもてる方法」であるとかいう古典的な情報商材の販売なども手掛けたりしています。2014年頃にはS氏は「素人でもデリバリーヘルスという派遣型の性風俗店を運営して儲けられる」だとか、「2日で動画プロモーターの仕事を覚えて3日働いて月収60万稼ぐ方法」とか、あきれるような情報商材を多数販売したりしているようです。情報商材の方向性を次々と変えているところを見ると、どうもS氏はなかなか売れる情報商材を作り出すことが出来なかったように考えられます。
 
 
2014年の夏にS氏はSC カレッジ株式会社(仮名)というものを立ち上げます。「稼げる副業を教える30歳からの大人のビジネススクール」というのをテーマにして、S氏自身は学長という肩書を名乗り始めます。実際は開校イベントとしてS氏の誕生パーティーを有料で開いたぐらいで、ビジネススクールとしての目立った活動の痕跡は見られませんが、S氏は学長という肩書を名乗り講演活動などを全国で行っています。
また「ネットビジネスで稼げる方法を教える」というのは2015年の2月にスタートしたNtBカレッジの原型だとみることが出来るでしょう。

10月にはS氏は、無料セミナーで「人にビジネスを教えること」からの引退を宣言して、これからは情報商材を売る他の情報起業家の応援に専念をすると言い出した無料動画を公開しています。意味がよく分からない宣言ですが、どうもS氏は応援する情報起業家としてのちにNtBカレッジにも参加するN氏を売り出したかったようです。S氏は「これを見逃すと次に会えるのは一年後」などと言って呼び込みを行っていましたが、実際にはその後もS氏の姿を情報商材のプロモーションなどでよく見かけることになります。
 
 
その直後、無料動画につながる形で、S氏はN氏とともに『メンターシップ コース』(仮名)というもの販売します。「稼ぐ知識や経験、ノウハウを伝授していく」という月1回の授業を一年間行うというプログラムで2015年の1月からスタートするとされていました。「150万円でもおかしくはない内容を原価に近い内容で74万円で提供するのだけれど、このオファーを受け取った人には特別価格の45万円で購入する権利をプレゼントする」という、奇妙な価格説明をしています。また「特定商取引法についての表示」を見てみると、販売業者となっているのはS氏が代表取締役を務めている株式会社ACとなっており運営責任者としてS氏の名前があるのですが、所在地に関しては千葉市若葉区にある株式会社ACの住所が記載されているものの何故か「※ただし、上記住所での直接販売は行っておりません」という不思議な但し書きがあります。もちろん直接販売を行っている場所の情報がありません。おそらくクレームなどが直接来ては困るという事なのでしょうが、株式会社ACが販売に関わっているとすると代表取締役であるはずのS氏の立場に疑問が出てきます。

この『メンターシップ コース』のfacebookのページを見ると、2015年の2月ごろからFXのトレードシステムの販売勧誘の話ばかりになっていきます。このFXのトレードシステムとかいう代物の勧誘にしても「年利110%、勝率90%を超える実績」だとかいう文面の他「損失が出たら私がその損失を負担しましょう」とかいう文言があり、誇大広告はもちろんですが損失補てんを前提にツールを販売提供する行為は金融商品取引法に抵触する可能性があるかもしれません。

『メンターシップ コース』は東京と名古屋で開催されていたようですが、名古屋を拠点として2015年の2月にプレオープンしたNtBカレッジとの関連性も視野に入れるべきかもしれません。組織の勧誘に使うサクラの調達や受講生の声などに、この『メンターシップ コース』の参加者が入っている可能性が指摘できます。

2015年の2月には問題のNtBカレッジがプレオープンし全国的にマルチ商法を展開していきます。ただNtBカレッジの仕組み自体はS氏が作ったものではなく、総合プロデューサーを務めていたO氏の発案という事になっています。実際のネットワークビジネスの構築にあたっては他にも「名前が出せない人」もいるようですが、S氏がフロントとして前面に担ぎ出される形でスタートした構図はうかがい知ることが出来ます。

S氏は「NtBカレッジにかけているので、これに専念して他の事業は行わない」という内容の説明を会員向けに幾度となく表明しているようですが、実際にはその傍らでS氏は、FXのトレードシステムの販売を試みようとしたり、NtBカレッジとは関係がなく「稼げる方法を教える」といった類の有料や無料のセミナーを色々と行っていることが確認できます。
 
 
ここまでS氏の情報起業家としての経歴を追ってきましたが、S氏は取り立ててマーケティングやITや知識や実績があるというわけでもなく、ネットビジネスで成功してきたというわけではありません。問題がある情報商材にやたら数多く関わってきたことで有名であって、それは評価されるべき実績ではないと言えるでしょう。確かに自身が開催していた自己啓発セミナーなどで培った技術を駆使して、感情を揺さぶり聴衆の何割かを信じ込ませる能力はあるのかもしれません。他の人のセミナーテクニックなどをよく研究している節はあります。ただ仮にそれらが人を騙すためだけに使われているとすれば厄介な人物であると言えるでしょう。

カルト宗教などを見てもわかるかと思いますが、一般社会の常識からみて「信じるべきではない人達」であっても、一部の「熱心に信じる人」を獲得してしまう場合があります。通常の感覚であれば騙されなないような内容でも、演出されたセミナーの熱気や偽物の成功体験、あるいは偶然を装った出会いの体験などを通して感覚を揺さぶられて、ごく普通の人でもあっさりと信じてしまう事もありえる話なのです。我々一般消費者は騙されやすく、また常にそれを狙って騙そうとする人がいるという事は常に念頭に置いおくべきでしょう。
 
 
 
■普通の人の心理を悪用するロジック

2016年に入ると1月にY氏というNtBカレッジの上位会員の造反離脱がありました。Y氏はNtBカレッジではセミナー講師という立場で、勧誘活動にも積極的に関与していたようですが、自分の系列の多くの会員を引き連れて抜けて転売などのノウハウを活用した情報商材の販売グループを立ち上げます。このことでS氏はY氏を激しく攻撃することになります。

S氏がブログなどに掲載している文言の一部を紹介しましょう。

弊社と私とは、一切、関わりのない案件になります。
またNtBカレッジは一切、関与していませんので、
プロダクトに関して、一切の責任を持てません。

Y氏の登場により混乱されている方は、十分、ご注意頂けたらと思います。

なを、NtBカレッジとしては、このように嘘を盛り込み、
数十万円の高額商品を売り込むやり方に
断固として戦っていこうと思っています。

※名称等は修正しております。

S氏はツイッターやブログfacebookなどを通して、時には実名を挙げてY氏を糾弾しています。S氏がこれまでに販売してきた数々の高額な情報商材に「嘘が盛り込まれていなかった」と言い切るのは難しいと思いますが、まさに一方的な糾弾をおこなっている形です。興味深いのが「嘘を盛り込み」と指摘しているのに、具体的にどの部分が嘘であるのかという点には踏み込んでいない点です。もちろんY氏の情報商材自体もその価値が疑わしいものだとは思いますが、S氏に対しては「お前が言うな!」という思いの人も多いのではないでしょうか。実際、いかがわしい点が数多く指摘されているNtBカレッジも、入会金や月謝を抑える形になっていますが1年間で考えると20万円を超えますし、別途セミナーなどに参加するとさらに高額になる仕組みがあります。だいたいS氏が45万円で販売していた1年間のカリキュラムの「メンターシップ」も、その提供期間がつい先日終わったところです。

ただ普通の人の感覚ですと「自分に火の粉がかかってくるようなことを、あえて指摘するはずがない」と言う思いもあるかもしれません。そこから逆説的に考えてS氏のやっているNtBカレッジなどに対して「他を批判するぐらいだから、怪しい高額商品であるはずがない」と考えてしまうかもしれません。普通の人間は整合性がある行動をとろうとしますので、そうした考え方は通常ではは通用するのかもしれませんが、相手がS氏のような場合ですとその普通の感覚が利用されてしまう事になります。特にマインドコントロール下に入っている人などは、こうした話でも肯定的にとらえることで自己肯定につながりますので、自分に都合の良い解釈を重要視するようになる傾向が指摘できるかもしれません。
 
 
またS氏は、2016年の1月にfacebookの投稿で『日経デジタルマーケティング』に掲載されたネット商材の被害件数が増えている現状に関する記事を引き合いに出して

弊社では、この辺りを踏まえて、サイトの表記は全て専門の弁護士にチェックを依頼し、また社内でもコンプライアンスを重視して運営を行っています。対面が主になるので、ネット広告よりもシビアな中での運営を行わなくてはならないので、当たり前の事です。

という内容の投稿を行っています。
 
この連載ではNtBカレッジをはじめS氏が関連する企業について、専門家のチェックを受けているとは思えないサイトや契約書等の奇妙表記や、コンプライアンス意識に欠ける実態を色々と取り上げてきましたが、そうした事柄を否定す根拠としてS氏のこうした発言が引き合いに出されて、ネットワークビジネスの勧誘に使われている点には大きな問題があると思われます。S氏は経営者として実際に「専門の弁護士にチェック」の有無を把握できる立場であり、また入会によって利益を得る立場でもありますので、これが虚偽だとすれば刑法上の詐欺の要件を満たしてしまう可能性が出てきます。
 
 
 
■我が子をも躊躇なく使う

ネット上では以前からS氏に対する批判が数多くあったのですが、NtBカレッジの開始後からはマルチ商法に対する批判やその検証の中でもS氏が登場し、これまで彼が関係してきた一連の情報商材についての批判も出てきます。そんな中2016年に入るとツイッターに以下のような投稿がなされました。

で、S氏さんなんですが、ググると詐欺師になっていて7歳のお嬢さんに泣かれてしまったそうです。 お会いするととても紳士で、現場の叩き上げでもいらっしゃるからか、とても親しみやすいです。 ネットビジネスの日本人のTOP20に入られる方なのに、私でも一見でお話してくださいました

このやり取りが本当だとすると、投稿者はS氏と何らかのやりとりがありS氏がネット上の自分の批判を認識しており、それに対して自ら口にしていることが分かります。S氏にはお2人の娘さんがいるようですが、7歳のお子さんは下の子だと思われます。そした娘さんの話を引き合いに出してきて、S氏は自身の詐欺が疑われる行為を指摘することが何か悪い事であるかのように思わせようとしている節があります。しかし、よくよく考えてみると7歳の子供というと小学校1~2年生ですから、ネットで検索をしたとしても「詐欺」という漢字が読めてその内容を理解するのはなかなか難しいものがあると言えます。もちろん周りに内容を教えてくれる年長者がいたり、非常に優秀なお子さんである可能性も無くはないのですが、S氏のこれまでの言動を考えるとS氏の全くの作り話である可能性も考慮しておくべきでしょう。
いずれにしろS氏自らが積極的に自分の子供を弁明に巻き込む形にしているのは重要な点で、普通の人が感じる「子供がかわいそう」という感覚を利用しようとしているのだとするとかなり悪質です。
 
また、紳士的だからと言って詐欺師ではないという説明にはなりません。そもそも人を騙そうというのですから詐欺師は腰が低く親切で紳士的にふるまうのが普通です。例えば今でもよく使われる詐欺の手法のポンジ・スキームで名前が残っているチャールズ・ポンジは「アメリカ人に最も愛されたイタリア人」と言われるぐらい大変魅力的な人だったようです。また史上最大級の巨額詐欺事件の犯人として知られているバーナード・マドフは、ナスダック市場の立役者としてみなされており、多くの人から社会的にも信頼が厚い人物と見られていました。S氏はそうした人物と比ぶべくもありませんが、見た目や物腰、あるいは経歴や評判などで、人はあっさりと騙されてしまうものなのです。
 
 
もっともこの投稿自体も怪しい部分があります。このフレーズを検索してみるとNという方の投稿ど同一の文面を、2014年の9月前後に開設された複数のアカウントで繰り返し投稿されているのがわかります。Nという方とS氏との関係や複数のアカウントの関係性はわかりかねますが、いずれにしろS氏の言葉を使って大変稚拙な情報操作を行おうとしていたようです。
 

※複数のアカウントから、まったく同じ文面が投稿されているのがわかります。
 
 
■怪しいネット戦略

Web上でNtBカレッジの実態やおかしな点批判などがネット上で増えてくると、急に奇妙なページが大量に現れるます。意味が分からない短い文字列で作られた独自ドメインにWordPressの基本的なテンプレートで作られたサイトで、特に外部リンクなどもないままにNtBカレッジに関する評判のようなモノのみが書き連なっています。もちろん評判にしては色々と不自然な記事で、写真などもなく、記事を書いている人の立場やプロフィールも明かされないまま、内容が繰り返しになるような記事を続けて投稿したり、会員の体験談というわけではなく運営者の視点というわけでもない具体性が無いままに評価するような記事が並ぶ少々気持ち悪いサイトです。どうも格安で記事制作サイトに発注して調達した記事で適当に作ったようなサイトのようで、それがかなりの数運用されているようです。おそらく批判に対する煙幕サイトの大量生成を行ったつもりなのでしょうが、正直なところ効果的な手法とは言えないと思います。

 
試しにそれらのサイトのドメインを調べてみると、いずれもIP分散サーバーをウリにしている岡山のホスティングサービス事業者にたどり着きました。どうもこのホスティングサービスを利用して仕掛けられているようです。かなりお粗末な手口であることが指摘できるでしょう。ただ、これまでのS氏の手法には見られなかった形でのアプローチですので、S氏が主体となって動いているようには思えません。もしかするとS氏にITやマーケティングに関する知識が無い事につけ込んで、いい加減なコンサル会社のようなものがS氏を騙した形になっているのかもしれません。
 
 
 
■S氏の企業のサイト隠蔽?
 
この連載でもたびたび指摘していますが、S氏が代表取締役を務めてNtBカレッジの実質的な運営を行っていると思われるAP社という会社があります。NtBカレッジに関する求人などはこの会社で行われたりしているのですが、NtBカレッジに掲載していたS氏の経歴などには、既に営業が終了しているS氏の別会社の名前は挙げても、AP社に関する記述は行わなかったりAP社との関与を隠そうとしている節がありました
 
8月末頃、そのAP社のサイトがサイトが突然消えてしまったようです。ドメインの契約を見ると2016年の9月末までの契約となっているので、まだ1ヶ月程度はドメインの有権を持っている状態ようですが、移転も閉鎖の告知も無くサイト自体が突然消滅した形です。DNSのレコード設定に失敗したまま放置している可能性もありますが、関係性を隠そうとしたり、この連載で指摘してきた怪しい実績や取引先の記載などを隠蔽しようとしている意図があるのかもしれません。仮に隠ぺいの意図が無かった場合、サイトが消滅した状態を放置しているのは企業家としてまたWebマーケティングの専門家としてのS氏の能力や資質に対する疑問が残ることになります。
 
 
昨今ではネット上の「忘れられる権利」というものが注目されていますが、実際の所、誇大表現やあやふやな話にはよく出くわす一方で、消費者の判断に必要な正確な情報には中々たどり着くことが難しかったりします。その一方でやろうと思えば誇張や偽装された実績や経緯をネット上で比較的簡単に作り上げる事が出来てしまいます。この非対称の構造は、騙そうとする人の方が有利になっている現状を表しています。一般の消費生活者は、怪しいと思っても徹底的に調べる時間も技法も持ち合わせていない場合がほとんどです。今後のメディアや消費者団体の役割として、そうした情報収集や保管、提供していく機能が求められてくるかもしれません。

実際、この連載ではNtBカレッジを取り上げて代表のS氏について詳しく見てきましたが、S氏が過去の実績などを一方的に主張し積極的に勧誘行為に活用していく一方で、NtBカレッジの会員は、この連載で明らかにしてきたような実際の内容をほとんど知らない現状があると思われます。
こうした事は何も特殊なケースではありません。ネット社会に生きる我々消費者は常に様々な情報によって騙される危険にさらされている一方で、消費者の側が検証し防衛する手段が心もとない現状にあるという事は指摘できるでしょう。

続きます。
  
 
  
※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年8月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
 
※もしNtBカレッジに該当すると思われる組織、あるいはその他組織に関して何かご情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、筆者のTwitterなどに宛ててお気軽に教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 
掲載順に  
トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 独自に入手した資料による
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消費生活アドバイザー めきし粉書房代表。 電子書籍とか出してます。 オカルトから文芸、その他。 最近のメインテーマは「プロパガンダ」とか「マインドコントロール」 貧乏オーディオ愛好家。

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