大学生などに対して「ネットビジネスの成功者の話が聞ける」といった言葉でセミナーに誘い出し「ネットビジネスで稼ぐ方法を教える」というものを商材とした『ネットワークビジネス』に勧誘しているNtBカレッジ(仮名)という団体があります。
様々な点で違法性の疑惑を含んだ問題点が指摘されている組織ですが、今回はNtBカレッジが「ネットビジネスで稼ぐ方法を教える」というので実際に何をやっているのかということに関して具体的な検証をしていきます。
■いま一度、概要書面を見てみる。
『特定商取引法』では、連鎖販売取引を行う際には契約の前にその取引の概要を記した概要書面を渡さなくてはならないと定められています。2016年5月16日に改定されたNtBカレッジの概要書面から、記載されている取扱商品のところを見てみます。
ちょっと笑ってしまうかもしれませんが、「取扱商品・役務/種類」として以下のように書かれています。
「入会金」、「月謝」の2つを取扱役務(サービス)として会員に販売・提供しています。
『入会金』とか『月謝』っていうサービスって一体何なんでしょうか。たとえば”学習塾”や”生け花教室”といった一般的なスクールの場合ですと、普通はそこで提供するサービスを受けるために支払う”入会金”や”月謝”という形になるはずですが、NtBカレッジでは”『入会金』という名前のサービス“と”『月謝』という名前のサービス“が独立して存在しているという事になります。もしかするとNtBカレッジは、これをブランド名として押し切りたいのかもしれませんが、ネーミング的にもあんまりな名前だと思います。
どうしてこうなったのかというと、どうもこの改定前の旧版の概要書面に”商品名”として『入会金』と『月謝』とだけ記載して、具体的な内容については一切触れていなかった事を引きずっているようです。もちろん本来ですと概要書面に書く”商品名”というのは他者が販売する商品と区別できるように、いわゆる”ブランド名”などを記載する必要があるわけなのですが、NtBカレッジは開始から実にいい加減な概要書面を作って運用してきたわけで、今になってその整合性で苦心している感じです。(こうした概要書面の不備は行政処分の対象にもなる行為です)
※2015年11月改定の旧概要書面から
さすがにこれではまずいわけで、2016年5月16日の概要書面になると具体的にサービスの内訳を記載するようになりました。しかしながら、内容を記載したことで『入会金』と『月謝』で提供されるサービスの怪しさが浮き彫りになってきました。
※2016年5月改定の概要書面から 具体的な内容が記載されるようになりました。
■『入会金』という名前のサービスの内容
新しい概要書面には「入会金の中には以下のサービス内容が含まれます」ということで、色々と列記されるようになりました。
● 入会事務手数料
● サイト使用権:『会員サイト』
● サイト使用権:『イマドレ(仮称)』
● サイト使用権:『one システム(仮称)』
● システム使用権:『自動顧客獲得システム』
● システム使用権:『FC CLUB』
税込みで64,800 円という価格が設定されている商品ですが、その内容を一つ一つ詳しく検証していきましょう。
●入会事務手数料
まず「入会事務手数料」が会員が受けるサービスに入っているのが奇妙です。入会事務という手続きに費用が発生しているというNtBカレッジの主張なのかもしれませんが、言ってみれば”管理費用”ですから会員が受けるサービスを円滑にする性格ものであったとしても、対価を払った”会員が受けるサービス”そのものだと主張するのには少し無理があると思います。実際に連鎖販売取引を行っている複数の企業の概要書面を調べてみたのですが、寡聞にして商品内容に”事務手数料”に類するものを入れている企業を見つけることはできませんでした。
●『会員サイト』
NtBカレッジ会員サイトのサイト使用権ということですが、いわゆる会員サイトの話になります。どういったものかというと概要書面の記載を元に調べてみると「各システムの内容と使用方法、各WEB サイトのURL、各サービスの内容と活用方法、各ツールのダウンロード方法と活用方法、動画コンテンツの掲載、NtBカレッジの最新情報の掲載、WEB 上でのLIVE 配信授業など」を集約して提供するサイトなのだそうです。
使用方法や活用方法というのは、本来利用者に対して用意されるべき取扱説明に類するものでしょう。 サイトのURLというのはリンクを集約しているだけだと思われます。最新情報の掲載というのは、言ってみれば単なる告知になるでしょう。独自の価値が見込めるものとしては「動画コンテンツの掲載」と「WEB 上でのLIVE 配信授業など」の部分ということになると思われます。ただ両方とも客観的な価値を判断するのが難しいものであると指摘できます。
●『イマドレ(仮称)』
『イマドレ(仮称)』とはキュレーションサイト、いわゆるまとめサイトになります。NtBカレッジの会員だけが”まとめの投稿”ができる形になっています。すでにキュレーションサイトのブームは過ぎた感じがしますが、現在でも複数の業者がキュレーションサイトといわれるサービス提供しており、その多くが無料登録したユーザーが使えるようになっています。
そんな中『イマドレ(仮称)』では「自分の記事ページに会員自身のアフィリエイト収入に繋げるための広告バナー等を複数設置することができる」という点で「画期的なサイト」だとして、会員に提供しているサービスの価値を説明しています。
しかしこの表現には違和感を感じる人も多いはずです。今でこそアフィリエイトを禁止しているキュレーションサイトは一般的ですが、かつては大手の「NAVERまとめ」などでもアフィリエイト広告を任意で掲載できる仕組みが用意されていたりしました。
紹介料は全額ユーザーに還元―「NAVERまとめ」にアフィリエイト広告が掲載可能に
※参考 NAVERプレスリリース 2010年12月21日
http://about.naver.jp/press/press_detail?docId=170
これはかつて「NAVERまとめ」に投稿者が簡単にアフィリエイト広告が掲載できるようになるシステムを導入したというプレスリリースですが、その後コンテンツの価値の低下の問題などが発生し、サイトの収益構造の見直しの中でキュレーションサイト全体での投稿者の広告掲載を禁止していく流れが主流になったというのが一般的な理解だと思います。
これらの事例から考えると、少なくともNtBカレッジが概要書面に「画期的なサイト」と表現する根拠が怪しいと指摘できるでしょう。この概要書面は勧誘時にも使われていますから、虚偽が疑われる表現で優位性を主張して新規勧誘をおこなっていると判断される可能性が出てきます。
また『イマドレ(仮称)』の2015年9月17日制定の『利用規約』をよく見てみると「利用者が未成年者である場合は、親権者など法定代理人の同意を得たうえで本サービスを利用してください」という奇妙な文面があります。このサイトはNtBカレッジの会員しか利用できないサイトであり、NtBカレッジでは未成年の入会の際に親権者の同意書を出させていますので、同意の二度手間をしている形になっています。ここから、もしかするとこの『利用規約』は適当に作られたものではないかという疑惑が持ち上がってきます。
そこで他のキュレーションサイトでは、一体どのような『利用規約』を作っているのか、試しに大手のキュレーションサイトとして知られているMERY [メリー](http://mery.jp/)の『利用規約』と比較してみました。
※文書比較ツールの画像 左が『イマドレ(仮称)』右がMERY [メリー]。青色は異なる部分
驚いたことに、社名とサービス名、それに売買に関する項目(『イマドレ(仮称)』には売買に関するシステムがありません)を取り除くと、MERY [メリー]の利用規約(2015年9月8日 改定)と章立てから表現はもちろんのこと一字一句同じです。普通の企業は自社のビジネスモデルを検討し即したものを独自に用意するものですが、制定日と改定日の間隔から考えると非常に短期間でMERY [メリー]のものをコピーして利用規約の作成を済ませている疑惑が出てきます。もちろん利用規約には著作権がないので他社のものをそのままコピーをしても別に罪に問われるわけではありませんが、こういう事をしているとビジネスの信用を問われることになりかねません。
もしかするとMERY [メリー]と『イマドレ(仮称)』との間には、何かが入って”孫引き”という関係かもしれませんが、いずれにしろ「ネットビジネスを教える」ということで会員から対価をいただいているとしいるNtBカレッジが、ネットビジネスの商品として提供しているコンテンツの利用規約をコピペで済ませているという疑惑は、本当に「NtBカレッジがネットビジネスに関する十分な知識や技能を有しているのか?」という疑問点に結びついていきます。
さて、このNtBカレッジのキュレーションサイトですが、ドメインから利用しているサーバーを調べてみるとAmazon EC2 というアマゾンのクラウドホスティングサービスを利用しているらしいということがわかります。アマゾンのサーバーを利用してNtBカレッジは連鎖販売取引の商品となるサービスを会員に対して提供しているわけです。
実は、このAmazon EC2を提供しているAmazon Web Servicesには、コンテンツの禁止事項の中に以下のようなものがあります。
有害または詐欺的行為。詐欺的な製品、サービス、仕組み、またはプロモーション(例えば、一攫千金スキーム、ねずみ講、マルチ商法、フィッシング、またはファーミング)の売り込みや流布、あるいはその他の詐欺的行為への関与を含む、他人、当社の事業、または当社の評判に有害となり得る行為。
NtBカレッジは連鎖販売取引を行っていますから、マルチ商法の関与は否定できないことになります。またこの連載では、様々なNtBカレッジのねずみ講などの違法性が疑われる行為や、詐欺的な行為などを指摘しておりますが、NtBカレッジがアマゾンの規約違反に該当する可能性は高いと思われます。規約違反となるとアマゾン側の対応としては「サービス利用者が本規約に違反した場合、または他人が違反することを許可もしくは助長した場合には、当社は、サービス利用者による本サービスの利用を停止または中止する可能性があります」とされています。
この件については既にアマゾンに問い合わせをしており、現在返答を待っている状態です。社会的責任がある企業としてのアマゾンの対応に注目したいところです。
●『one システム(仮称)』
さて次は、転売仕入れサイトの使用権に関してです。元々NtBカレッジは、海外通販サイトをベースとした『Yamadaシステム ワールド(仮称)』を転売の仕入れ先として提供していました。商品数が数千万点以上もある(実際は重複や取扱不可のものも多く日本で売れそうなものとなると限定されてくる)というのがウリで、ヤフオクなどで規約違反となる無在庫転売を会員に対して指導していました。
当然ながら無在庫転売の発覚で、会員のヤフオクIDの利用停止などが頻繁に起こるようになります。そこで『Yamadaシステム ジャパン(仮称)』という”NtBカレッジが在庫を確保している”という建前の転売仕入れサイトを立ち上げました。価格的優位もあまりなかったらしく、家電を販売する際らもホームセンターなど向けの格安量販モデルを、型番が異なる正規品と誤認させるように紹介して「家電も格安で買える」と主張し(実際はホームセンターで買うよりも高いぐらいです)販売しようとする悪質な会員がいたりしました。
その後、NtBカレッジ内部で分裂騒ぎがあったようで、権利関係からか『Yamadaシステム ワールド』が使えなくなったようです。そこで表向きは『Yamadaシステム ワールド』と『Yamadaシステム ジャパン』を統合する形で、新しく『one システム(仮称)』というものが立ち上がりました。これが現在NtBカレッジで使える転売仕入れサイトになります。実質的には『Yamadaシステム ワールド』が抜けた形です。
『one システム(仮称)』はログインをしなくては実際の取引価格を見ることができないのですが、IDがなくとも概要書面に記載されたURLから取り扱っている商品を確認することができます。一体どれほどの商品点数を取り扱っているのか気になったので調べてみました。
手法としてはページのトップに配置されているカテゴリーをたどって、すべての掲載商品を数えてみる形です。すると7月30日の時点で631点しかありません。重複しているものや、色違いも別商品となっている場合がありましたから実際の商品バラエティーはもっと少ない状態です。
※「携帯電話、スマートフォン」の大カテゴリーを選ぶと無名ブランドのスマホカバーが65件表示される(取扱商品の1割以上の数)。
2016年7月現在で、NtBカレッジの会員数が”5000人”とか”6000人に迫る”とか言われています。そのうち仮に1割程度しかNtBカレッジの転売ビジネスを利用していないとしても数百人が利用している計算になるわけです。転売である程度の利益を確保しようとすると通常1点や2点程度の出品とは考えられませんから、本当に利用者がいたとすると会員同士が同一商品を並べての競合状態になっている可能性があります。
また実際のところ、並んでいる商品というのも趣味の悪いスマホケースや安っぽいアクセサリーなどが中心で、お世辞にも「そんなに売れるとは思えない商品」がその大半を占めていますので、本当に転売に使われて会員が利益を上げているのか疑問です。
こうした転売仕入れサイトの使用権のサービスの価値を考えてみましょう。転売に関しては、会員が独自に用意した商品などを含めて転売をするように指導が行われていたりするようですが、それは別にNtBカレッジを介さなくとも取引できる部分です。“『one システム(仮称)』の使用権のサービスの価値”の部分を考えると、そうした部分は省く必要があります。実際に『one システム(仮称)』を使って会員に転売したものはNtBカレッジ側で集計できるはずですから、そこから会員が受け取ったであろう利益を推測することができるでしょう。その利益部分からNtBカレッジのサービスの価値の評価を考えることができます。総合的な売り上げデータも存在しているはずですから、NtBカレッジ側が全体としてのサービスの価値を客観的に把握できているはずの部分だと言えるでしょう。しかしこの部分は公表されていません。
もちろんデータが出たとしても、それを鵜呑みにするべきではないかもしれません。偽の実績を作るために、架空売り上げやサクラの購入が混入している可能性があります。
また手間の部分の問題もあります。例えばある会員が1万円分の商品を販売したとして、平均2割の利ザヤを確保して転売できたとすると、その2割分の2000円相当がサービスが生み出した価値の基本となる部分です。そこから販売サイトの形を整えたりする作業や告知に必要な作業時間を考慮してコンテンツの価値を判断する必要が出てきます。場合によっては最低賃金以下という事もありえるかもしれません。
●『自動顧客獲得システム』
次に『自動顧客獲得システム』のシステム使用ですが、これは実際のところは各自がNtBカレッジが用意した広告ページへの誘導を行うというだけのものです。そこから入会に結び付けば誘導と会員IDが紐づけされて勧誘実績として計上され報酬が支払われる形です。ここで発生する報酬は新規勧誘に対するものです。言ってみれば勧誘ツールの提供をしているわけですが、NtBカレッジからの報酬が発生する勧誘ツールを“独立した会員に対するサービス”として提供している点が重要です。ここには”商品”が介在していませんので、いわゆる「ねずみ講」の疑いが出てきます。
以前にも別の角度からの問題点を指摘しましたが、このNtBカレッジの『自動顧客獲得システム』から作られるリンクで誘導される広告ページの一つにこういう記載があります。
物販ビジネスだけに特化して、月に150万円以上売上をあげている方もいらっしゃいますし、逆にこのソーシャル・ネットワーキング・アフィリエイトに特化して月収100万円以上稼いでいる方も多数いらっしゃいます。
まず、どこにもこの数字に対する具体的な根拠が示されていないところも問題なのですが、もっと重要な点なのが「ソーシャル・ネットワーキング・アフィリエイトに特化して」という部分です。ここでいう「ソーシャル・ネットワーキング・アフィリエイト」という言葉は、新規勧誘獲得に対する報酬の事を指しているわけですが、商品やサービスの提供に関わることなく新規勧誘のみで高額な報酬を得ることができる主張しているわけです。
しかし勧誘報酬に特化して『月謝』分を賄おうとすると毎月2人以上を継続して勧誘していかなくてはなりません。勧誘されて入会した新規会員も同じ立場になることを考えると、ねずみ算式に必要な新規会員が急激に増えていきますから破たんは必然だと指摘できるでしょう。NtBカレッジでは、”稼げない”事実を知った会員の退会という形で、”組織”ではなくて”入会者の方”を次々と破たんさせていっているのが大きなポイントです。破たんと言っても、泣き寝入りする額は入会金と月謝程度ですから、なかなか問題が表面化しにくい作りになっています。(そうはいっても全体では既に10億円以上のお金を集めている計算です)
●『 FC CLUB』
『 FC CLUB』は福利厚生サービスになります。内容は「全国の様々な施設やサービスに対して、割引・利用特典を受けることができる」というものです。おそらく一般的な企業も利用しているような福利厚生サービスのアウトソーシングを活用したものだと思われます。
しかし、まず普通の感覚で考えると『入会金』を支払うことにより提供されるサービスとして福利厚生が挙げられていることに違和感を感じるのではないのでしょうか。仮にNtBカレッジが他社の福利厚生サービスのアウトソーシングを活用してサービスを調達しているとすると、会員への「再販行為」に該当する可能性もでできますからこの辺の事情に対して相手側との整合性はしっかりと取れているのか確認する必要はありそうです。また、市場価値も算出しやすいものになるのではないかと思われます。
■『月謝』という名前のサービスの内容
毎月税込みで16,200 円かかる『月謝』ですが、これに関しては以下のような内容が記されています。
● サービス利用権:『オンデマンド』
● サービス利用権:『特単アフィリエイト紹介制度』
● サービス利用権:『オンライン授業』
● サービス利用権:『オフライン授業』
● サービス利用権:『商材分析代行サービス』
● サービス利用権:『各種ビジネス支援ツール』
これも一つ一つ検証していきましょう。
●『オンデマンド』
オンデマンドというのは、代表のS氏が登場する「月刊スペシャル対談」というのを含めて、オンラインセミナーで過去にLIVE 配信した放送内容を編集した動画コンテンツなどを提供しているとのこと。『入会金』に含まれている 『NBC 会員サイト』の利用権で提供されるという「動画コンテンツ」との違いが不明瞭ですが、いずれにしろ価値判断が難しいものです。
●『特単アフィリエイト紹介制度』
どうもオプトイン・アフィリエイトをさせるという話らしいです。オプトイン・アフィリエイトというのはメールアドレスを登録させることで報酬が得られるというものです。
どうしてメールアドレスを登録させることがお金になるのかというと、広告目的の迷惑メールの増加で現在では電子メール広告に対してオプトイン規制(あらかじめメールを送ってもよいということを許諾した相手にしか広告メールを送ってはいけない規制)がなされているからです。結果として“広告を送り付ける許諾を得たアドレス”に大きな価値があると、電子メール広告を活用したい側が考えるようになったからです。
NtBカレッジでは、オプトイン・アフィリエイトに対して、通常は「運営元が 100~ 300 円程度/件のアフィリエイト報酬を支払う 仕組み等」という説明をして、NtBカレッジの会員に対しては独自ルートを用いて特別に「1 件1000 円前後の高額なアフィリエイト報酬」が出る案件を適時紹介するとしています。しかしこれはよく考えるとNtBカレッジが他所から報酬がでる仕事の仲介をしている形です。
ちなみに、一般的なオプトイン・アフィリエイトについて紹介しているネット記事などを見てみると、単価として「300円~1,200円」という記載を見つけることができます。統計的なデータがないので断定は避けますが、NtBカレッジのいう「高額なアフィリエイト報酬」というのは、特に凄いというわけではなさそうです。
●『オンライン授業』
これは、物販ビジネスに関する各種授業やアフィリエイトビジネスに関する各種授業、 SNSの活用法、集客ノウハウなどに関して随時放送するというものですが、これもまた他の動画サービスとの違いが不明瞭であると指摘できるでしょう。どうも他のサービスと整理されないまま記載されている印象があります。
●『オフライン授業』
関連施設・セミナー会場等で行うリアルの授業として、ワークショップや事業説明会を行っているとのことです。この部分がマインドコントロールが行われている現場の1つなっています。
実際に自己啓発の手法が取り入れられているようで、”自分の夢”というものを必要以上に意識させたり”ビジネスマインド”という言葉で『ネットワークビジネス』の運営側に都合のよい行動を肯定化したりしていきます。この”ビジネスマインド”といのうは、よくよく聞いていると“詐欺師の言い訳”のような内容である場合もあるようなのですが、そうしたものを「オフライン授業で学べる」としても、はたしてそれに価値があるといえるのでしょうか。
具体例をあけでみると、NtBカレッジの会員の勉強会で「会社にバレずに副業できる方法〜税金対策〜」と題されたものがありました。(実際は「もし困るほどたくさん稼げたら」という話で気分を高揚させるのが目的だったようです)
その内容に関してレポートしたものを見てみると、就業規則違反を犯すことを肯定する内容で「投資している株が大当たりした」 「FXで臨時収入を得た」と嘘をついて誤魔化せといった内容でした。こうしたことを組織的に指導するというのは、社会通念上問題があるといえるかもしれません。
もちろんこれが全てではないはずですけれども、こうしたものが横行していますので概ねコンテンツとしての価値を評価するのは厳しいと思います。
●『商材分析代行サービス』
これはNtBカレッジが月に最大で100万円までの予算を用意して、流通している情報商材を分析して内容を会員に提供するというものです。まず情報商材の内容を分析して勝手に数千人の会員にばらまくのですから、実際にやってしまうとおそらく権利者側との問題に発展する可能性が出てくると思われます。そもそも会員はNtBカレッジから「最新のネットビジネスについて学ぶ」という形で勧誘を行っているわけですが、こうした実態を見てみると、NtBカレッジには「人に教えるネットビジネスのノウハウが無い」のではないかという疑惑が生まれてきます。
●『各種ビジネス支援ツール』
NtBカレッジのいうビジネス支援ツールの実態というのは、スパムスパム業者がよく使っているようなtwitterやInstagramのフォロワー集めて管理するツールだったり、外部のアフィリエイトによる自己アフィリエイトの集計ビューワーなどが提供されているようです。
ご存知の通りtwitterなどのフォロワー管理ツールは無料のものも多く提供されています。仮にNtBカレッジが、いい加減な市場価格をつけて価値があるものだと訴えようとしても、NtBカレッジの場合は「ネットビジネスで稼ぐことを教える」というのが商材ですから、”どの程度収益に寄与する効果があるのか”というのが評価するポイントの一つになるわけです。そこから考えるとスパム収集で集めたようなアカウントに対して一体どれほどの価値があるのかは疑問です。実際、会員の方のtwitterアカウントを調べてみると転売や勧誘のスパム行為に終始しているケースが目立ちます。
外部のアフィリエイトの集計ビューワーですが、独自に入手したマニュアルによるとA8、アフィリエイトB、アクセストレードといった、一般的にもよく知られているアフィリエイト・サービス・プロバイダーのに前が上がっています。それらのところで自己アフィリエイトができる案件を検索して申し込めるというものです。契約は、会員とアフィリエイト・サービス・プロバイダーとの間でのやりとりで、各々のサイトでも表示されている案件です。このNtBカレッジのシステムは集約しているにすぎません。
ちなみにアクセストレードの利用規約には「当社は、パートナーになろうとする者が、以下の事由に該当する場合には、登録を承認できないことがあります。また、当社の承認後においても、以下の事由に該当することが認められた場合には、本規約の定めに従い登録を抹消することがあります」として
ねずみ講、マルチ商法、ネットワークビジネス等に関わっている場合
というのが明記されています。
■こうしたサービスの内容の評価が持つ意味
以上がNtBカレッジが、概要書面に記載しているサービスの内容の全てになります。数で内容を誤魔化そうとしたのか、客観的に価値を評価するのが難しいものばかりを闇雲にずらずらと並べたてたという印象があります。
今回どうして概要書面を元にしてNtBカレッジが提供しているサービスについて一つ一つ細かい検討に踏み込んだのかというと、提供しているサービスの価値の有無が違法な無限連鎖講(ねずみ講)とみなされる判断の重要な要素となるからです。仮に無限連鎖講となると勧誘することはもちろん参加することも違法という事になります。
また勧誘時に受けたサービスの価値や効果についての説明が、実際のものと異なっていたりする場合、不事実告知や事実の不告知が認められて契約の取り消しの理由となる可能性が出できます。(消費者契約法 第4条)契約が取り消されると、契約は初めにさかのぼって無効となります。
だまされて契約してしまった人にとって、クーリングオフ期間が過ぎてしまった後にでも『入会金』や『月謝』を取り戻せるかもしれないというのは重要な点です。例えばNtBカレッジのような「稼ぐ方法を教える」といった類の性質の商品の場合、勧誘時や新規の会員に対する教育などで「実際に効果が見えてくるまでに時間がかかる」といった説明に納得してしまいやすいと指摘できます。結果として判断を躊躇しているうちにクーリングオフの期間が過ぎてしまうことも十分にありえます。
特にNtBカレッジが提供している商品の場合、商品の特性として”実績のねつ造がしやすい”という点も指摘できますから、仮に「偽物の成功体験」をさせてクーリングオフ期間を回避しようとしているようなケースがあれば、本来あるべき形で消費者がクーリングオフの権利を行使するのは難しくなってきます。
そうした時でも、商品の実際の価値と照らし合わせて契約の取り消しを求めることは、有効な対抗手段となりえるかもしれません。
この一連の連載ではNtBカレッジを題材に取り上げていますが、他の連鎖販売取引などでも見られる問題点を含んでいますので、何か思い当たる節がある人は消費生活センターや法テラスといった所に相談してみるとよいでしょう。たとえ被害を受けたとしても泣き寝入りしないことが大切です。自分のお金を取り戻すばかりではなく、悪徳商法業者に対するダメージにもつながっていきますから、これ以上の被害を増やさないためにもぜひ行動を起こしてください。
続きます。
※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年7月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
※もしNtBカレッジに該当すると思われる組織、あるいはその他組織に関して何かご情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、筆者のTwitterなど宛てにお気軽に教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
掲載順に
トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 独自に入手した資料による
中画像: 独自に入手した資料による
中画像: 独自作成作成
中画像: 問題となるサイトの画像イメージ