「誰でも知れば出来てしまう。”コピペ現金製造システム”」などと謳ったセミナーや説明会を全国各地で開催し、1年半ほどの間に10億円以上を集めているNtBカレッジ(仮称)という組織があります。名目上は「インターネットを使った副業を教えるビジネススクール」という事になっていますが、一般的なビジネススクールでは無く『連鎖販売取引』という形態をとり、一般的なビジネスの経験が乏しい人たちや未成年を含む学生などをターゲットにして盛んに”勧誘活動”を行っているようです。
会員がこの”勧誘活動”に成功して直接新規の会員を獲得すれば、10,000円の”新規紹介手数料”が支払われます。NtBカレッジの「月に数万円程度の”副業”になる」という話に乗ってくるような学生などにとっては「稼げる方法を教えてくれる」上に、こうした報酬があるのは魅力的に見えてしまうかもしれません。(実際には、その教えてくれる”稼げる方法”の中に”新規勧誘”の話も入っているのですが)
支払う『月謝』も月に15,000円(税別)程度に抑えられていますので、比較的人に勧めやすく毎月二人を誘うだけでプラスになる皮算用をしてしまうかもしれません。
しかし多くの人にとって勧誘を行う事は難しく、そもそも勧誘を行う事自体に抵抗がある人も多いでしょう。そんな人に対してもNtBカレッジのセミナーなどでは、勧誘をしなくてもただ組織に属しているだけで得られる報酬プランの話を魅力的に語ってくるかもしれません。
どういうことかというと、健康食品や日用雑貨などの販売を行っている一般的な『マルチ商法』あるいは『ネットワークビジネス』の組織とは異なり、NtBカレッジの場合は”モノ”としての商品は無く、毎月会員から『月謝』を取る形をとっているのがポイントになってきます。つまり毎月モノを売る必要はなく、ただ毎月『月謝』を払い在籍しているだけで、新規会員獲得時の報償や、配下に出来た組織の規模に応じて受け取れる報酬プランが用意されているという事なのです。(直接紹介した会員が1名以上活動中である必要があります)
こうした一見魅力的に見える仕組みを説明することでNtBカレッジは、組織の拡大や維持をおこなってきたわけですが、現実にはそうそう甘い話はありません。今回は、NtBカレッジが作り上げている連鎖販売組織の正体を中心に見てみましょう。
■『ネットワークビジネス』の形
NtBカレッジの『概要書面』の説明を見てみると、自分の配下に2系統の枝が出来ていく”バイナリー方式”と呼ばれるものを組織の基本としているのが判ります。NtBカレッジではオートポジショニングといって自動的に配下の会員が割り振られる形でピラミッド状の組織が形成されていくようです。
このバイナリーで作られる2つの系列の組織のうち少ない方を”スモール系列”と呼び、そこで得られる総ポイントに15%を掛けたものがベースコミッションとなります。ここで使うポイントというのは、1ポイントあり100円で、『入会金』で100ポイント、『月謝』で100ポイントが発生するという形になっています。実質的には配下の現役会員一人につき100ポイント、つまり一人あたり1,500円が発生するという事になります。
※当月直紹介アクティブ数が1名以上という条件あります。またバイナリーで得られる報酬が15,000円未満の場合でも、当月紹介した会員が5人以上の場合は15,000円が払われる形になっています。
さらに育成コミッションとして、自分が直接勧誘した会員で系列が作られる”ユニレベル組織”による報酬もあります。直接勧誘した子会員をレベル1として、その下にレベル2の孫会員、さらにその下にレベル3のひ孫会員と、レベル5までの報酬体系があり、バイナリーで得られるベースコミッションを元にした報酬が受けられるようになっています。もちろんこれは、勧誘に成功した会員で作られる系列が在籍していなければ発生しません。
マルチ商法の系統的な分類しようとすると、NtBカレッジは”バイナリー方式”をベースに”ユニレベル”を加えた複合型組織ということになるでしょう。
一般的にバイナリー方式を取る『ネットワークビジネス』はスタート直後は急速に成長する反面、5,000人程度で頭打ちになって短期間に破綻する傾向がある事が知られています。NtBカレッジの組織の設計は、そこにユニレベルの報酬体系を加えることで勧誘能力の高い会員を手放さないようにして組織の維持を狙っている形とみることが出来るかもしれません。
■詳しく報酬体系を考えて見る
NtBカレッジには、健康食品や日用雑貨といった”モノとしての商品”の流通は無く、『入会金』を払い『月謝』を納めることで「ネットビジネスで稼げる方法を教える」という話に関連した”サービスを使用する権利”を得て、同時に”バイナリー方式”と”ユニレベル”からなる報酬体系に組み込まれる形です。さらに組織の上位ランクになると”タイトルコミッション”という特別報酬が出ます。
まず最初にバイナリー方式の部分をとりあげて解説してみましょう。NtBカレッジの月謝は月に15,000円(税抜き)ですから、スモール系列で配下に10人を作れば、それだけで元が取れることになります。バイナリー方式では2人ずつ枝が増えて階層が作られていく形ですから、各階層の人の数は1、2、4、と配置される形です。つまり10人そろえようとすると4階層目に入らなくてはなりません。
2人ずつ増える組織で4階層と言われると、一瞬なんとか達成出来そうに思えるかもしれませんが現実はそうそう甘くありません。
NtBカレッジの場合、代表のS氏の言葉によると2016年の2月のスタート時で既に800人が参加していたそうですので、左右の差が無い理想的なバイナリー配置の場合(スモール系列が最大になる時)で考えた場合、スタート時点にいる会員だけで既に最低でも10階層目に到達していることになります。
その後のNtBカレッジの会員数ですが、2015年の8月に4,200人程度という発表があり、半年過ぎた2016年の2月には代表のS氏の「5,000人以上の会員数」という表現がありました。仮に現在の会員数が5,000人位だとすると、左右の偏りが無い理想的な配置になっているとして13階層目に入ったところという事になります。この13階層目を埋めようと思えば4,096人、14階層目を埋めようと思えば8192人が必要となります。
※現実には退会者が存在したり左右での偏りが生じますから、”圧縮”などの手法で全体的な再編を行って行かない限りはこうした理想型にはなりません。
NtBカレッジをはじめ『ネットワークビジネス』を行っている所は、こうしたポジションによって得られる報酬を、しばしば『権利報酬』『不労所得』と言った言葉で説明する場合があります。勧誘時によく言われるのが「普通に働いていても先が見えているので『権利報酬』を得る立場を目指しましょう」とか「月に数万円の『不労所得』が入ってくる」といった話ですが、NtBカレッジの場合はスタート時点で既に9階層まで埋まっているので、組織が無限に拡大していかない限り、後から入った一般参加者がバイナリー配置によるプラス益を得るのは難しくなっている事が分かります。
もちろんNtBカレッジのスタート時点の800人という数字も、本当に800人の人間が参加しているかどうかはわかりません。
どういう事かというと、一般的によくある手法として、運営側にいる人が最初の方で関係者やダミー会員を数多く入会させるというというものがあります。上位の椅子を確保することで、ある程度会員が増えた時にきっちり下部会員からお金を吸い取り仕組みができあがるという仕組みです。もちろんやり過ぎると収益を吸い上げる地位の椅子が少なくなってしまいますから、力のある勧誘組織を持った有力なプロ会員(マルチ商法を行っている組織を専門的に渡り歩いている人)に参加を頼むことが難しくなってしまいます。集客力を持っているプロ会員の参加は『ネットワークビジネス』の成否の分かれ目と言われていますから、そのあたりは兼ね合いになるのですが、立ち上げ時に外部から呼ばれてくる有力なプロ会員もまた、自分のダミー会員や子分に当たる配下の人間を持っていたりするので、本当に何人がスタート時にいたのかは藪の中だったりするケースも珍しくありません。
さらに注目しておきたい点として、NtBカレッジでは”タイトルコミッション”というものも設定し、集めたお金の分配に活用しています。これは会社の総売上ポイントから、上記で支払った分を差し引いた残りをタイトルにあわせて分配するというものです。
このタイトルというのは配下の会員数と直接紹介した人の数で設定されていますので、実質的には上位の会員に対する分配とになっています。例えば、一番下の”リーダー”の場合でも2,500ポイントと直接紹介が3名の実績が必要になります。一人あたり100ポイントですから、配下のスモール系列だけで25人以上獲得していなくてはなりません。
系列の人数が階層が下がるごとに1、2,4,8,16と増えていく理想的な形の場合でも、自分の下に5階層ある事が必要という事になります。仮に5,000~8,000人規模で13階層を形成している理想的な組織配置があるとすると、その場合でも上位のわずか約250人程度に、このタイトルコミッションを獲得出来る可能性があるという事になります。(系列の左右の偏りがあると、この人数はさらに少なくなります)
より上位のタイトルになると分配する人数が減る上に、下位のタイトルコミッションも重複して受け取れる様になっていますので、上の方のタイトルを獲得している人は、図表に書かれている数値よりも、実際にタイトルコミッションとして獲得する金額がかなり高くなる設計になっています。
もっとも、タイトルをよくよく調べて見てみると『Web ブラックダイヤモンドマスター』ともなるとスモール系列で500,000ポイント以上とされていますから、バイナリーで二股に分けられた小さい方の系列に5,000人もの人が必要となります。現在のNtBカレッジの会員規模が5,000人程度の規模だとすると、ようやく『Web ダブルダイヤモンドマスター』が一人現れるかどうかで、『Web ブラックダイヤモンドマスター』以上のランクは現れてはいないはずです。
不思議な事に思われるかもしれませんが、NtBカレッジに限らず『ネットワークビジネス』に参加している会員の中には、必ずしも自分が受けとる立場である報酬体系に関して、こうしたピラミッド状の階層の現実を十分に理解しているとは限りません。なんとなくピラミッドになっている事は理解していても、どれだけの人が損をするだけの立場になるのかを把握していなかったりします。よくよく考えると自身も儲かる立場になれそうにも無いのに、熱心に勧誘をしている場合も珍しくないのです。
そういう勧誘者の多くは、自分が”理解していない”という事を自覚してはいません。むしろ、上位の会員やセミナー講師という様な立場の人からの適当な説明を信じ込んで、自分が「教えてあげる」立場だと思い込んでいたりします。実際に教えられている説明というのは、際限なく会員が増え続けるのが前提であったり、肝心な報酬の部分で全体と個人をまぜこぜにしていたりするのですが、危険な『ネットワークビジネス』の運営者側の人間は、そうしたことに「気づかせない」様にマインドコントロールを行い勧誘者に仕立て上げます。さらに、このマインドコントロールが進むと「誠実な説明ではない」ことを理解しつつも、「勧誘には必要な脚色」といった『不誠実の肯定』という段階に入っていきます。こうなって来ると、驚くほど大胆に組織のために働く様になる事も珍しくありませんので注意が必要です。
例えばこのNtBカレッジの事例で言うと、2016年5月の段階で「既に6,000人位の会員がおり、すぐに1万人になるから、今のうちに入っておくと”先行者利益”を狙えるチャンスである」といった趣旨のことを大まじめに言う勧誘者がいたりしたようです。
仮にこの数字が正しいとして、まずNtBカレッジは、2015年の7月には「年内には1万人の会員登録数を見込んでおります」と公式サイトに記載し、代表であるS氏も公言していましたから、1万人の会員を集めるのに苦戦している実態は上位の会員の多くは既に認識をしているはずです。
また”先行者利益”と言った話ですが、会員数が6,000人から1万人に到達したとしても、バイナリー配置で出来る階層の理想モデルで考えると、13階層が14階層に増えるだけです。6,000人も参加者がいる状態で、後から加入した人が魅力的な”先行者利益”を得ることは不可能であると言えますから、”先行者利益”が得られるという話を元に「今のうちに」という勧誘は、事実から乖離したものだと指摘できるでしょう。
ここまでNtBカレッジから支払われる報酬体系を見てきましたが、一つ言えることはごく一部の上位者が非常に手厚くなるようにコミッション報酬が設計されているのが重要な点になります。つまり”スター勧誘者”が派手に活動する事で、多くの見返りを得られる可能性が高くなる仕組みだと指摘できるでしょう。
仮に、こうした上位に利益が集中していく形の組織に、社会的な倫理観に乏しい”スター勧誘者を目指す人”がいたとすると”虚偽の実績”などを作ってでも”スター勧誘者”の立場に近づこうとするかもしれません。また、それを元に別の勧誘者が「~という実績を上げている人もいるらしい」と言った形で再利用する事で『虚偽の再生産』が積み重なっていく場合もあり得ます。これは『不実の告知』という違法行為につながる可能性が生まれます。
NtBカレッジでは、他の『ネットワークビジネス』と違って「とくかく”モノ”の売り上げを作って、販売実績からなる上位のランクにのし上がる」といった事がありません。自腹で買い込める様な”モノ”が無いので、在庫を抱えて破綻するようなケースは普通は起こりません。しかし逆にこのことは、長期間にわたる”時間とお金の搾取”につながったり、不正や不法行為へより深く関与させられて後戻りが出来なくなっていく形になる可能性があります。
また”新規勧誘で入会手数料を獲得する”のと”退会を思いとどまらせて配下の会員でいてもらう”というのが重要になってくる報酬体系ですから、たとえ商材となっている「稼ぐ方法」というモノの成果があまり期待できないものであっても、定期的に”ビジネスマインド”の勉強会や実践会などを開いて下部の会員をマインドコントロールの影響下に置き続けることが有利に働く構造になっています。
■報酬の割合の問題
NtBカレッジでは「ネットビジネスで稼げる方法を教える」としてい会員を勧誘していますが、その際に”儲かった成功談”として「ネットビジネスで稼げた」と言うのと「組織の勧誘に対する報酬で稼げた」というのを、併記して消費者をミスリードさせている事例を多く見つけることが出来ます。例えばNtBカレッジでは広告ページにこうした文言を載せています。
物販ビジネスだけに特化して、月に150万円以上売上をあげている方もいらっしゃいますし、逆にこのソーシャル・ネットワーキング・アフィリエイトに特化して月収100万円以上稼いでいる方も多数いらっしゃいます。
※ここでいうソーシャル・ネットワーキング・アフィリエイトとは「NtBカレッジで自分が得た経験や体験を誰かに伝え、興味を持ってくれた方にNtBカレッジのことをご紹介いただく事でも収入を得る事」で、新規勧誘獲得に対する報酬の事を指しています。
広告としては、具体的な計算方法やこの成果を得ることが出来た人の割合など、客観的な事実が示されていませんので、”誇大広告”の懸念を含めて色々と法的な問題になる可能性があるのですが、その話は一端置いておいておきましょう。
今回指摘したい問題は、全く違う系統のお金の流れを同じように扱って会員の勧誘活動を行っているという点です。
この「物販ビジネス」というのはNtBカレッジのネットビジネススクールの部分です。ここで「いくら稼げた」というのは言ってみれば「ネットビジネスで稼げることを教える」というNtBカレッジの商品価値の話になります。一方ここで言う「アフィリエイト」とは、連鎖販売取引で発生する特定利益と言われる部分で、会員が支払う『入会金』や『月謝』として集めたお金を元にした組織内での金銭配当の部分です。
つまり会員が支払ったお金を内部で還元させている部分までを「ネットビジネスで稼げる方法を教える」ことの成果として見せている形です。普通に考えてこれはおかしな話です。
サプリや日用品を扱っている様な一般的な『ネットワークビジネス』の場合では、似たような構造を取っていても、下部の会員が買った商品から手数料が得られる事に対しては「会員もまた消費者の一部である」といった”言い訳”が用意されていたりするのですが、NtBカレッジの場合はそういった”理屈を作る事”が非常に難しい様に思えます。
では具体的に、どの程度の割合のお金が内部で還元しているのでしょうか。
NtBカレッジでは『入会金』および『月謝』として100ポイントが計上される形になっています。5,000人の会員がいた場合単純に計算すると1月あたり500,000ポイント。1ポイント100円換算ですから5,000万円が還元に使われている形です。税別15,000円の『月謝』だけを考えて見ると、7,500万円集めたうち5,000万円を還元に使っている訳ですから、ざっと計算したところ集めたお金の実に66%以上を配当のために用意しているという事になります。
実際には、あり得ないタイトルコミッションが含まれていたり、入会時に支払う『入会金』が同じポイント数の『月謝』よりも高い金額に設定されていますので、全体での割合は66%からもう少し低下する事になるのですが、それでも配当の割合が非常に高くなっているのがわかります。
この高額な当の割合の事はセールスポイントとして勧誘の際にも使われており、実際にNtBカレッジの勧誘者が「70%も配当に回しているビジネススキームなので、参加者が儲かる可能性が非常に高いネットワークビジネスである」という旨の説明している事例があります。この割合は特定利益に関する大切な部分なので、事実では無い不正確な数字を元に勧誘活動を行っている事は法的に問題になる可能性が出てくる部分なのですが、とりあえずここでは”会員への還元率が高い”と言って勧誘している部分に注目します。
もっとも、配当が高いと言ってもそれは全体を考えた時のことであって、実態は半ば固定化された上位の数%の会員に配当の多くが集中して分配される形になっているのは上記で説明してきた通りです。そもそも常識的に考えても集めた『月謝』のうち最大6割以上も毎月会員に対する配当に回す設計になっている時点で、最初から”価格に見合うサービスを提供する”ということは考えていない様に思えます。
特にNtBカレッジの場合は、まず販売価格ありきで「ネットビジネスで稼ぐ事を教える」という商品価値の判断が難しい商材を取り扱っており、その具体的な内容に関しても商品内容の変更やコンテンツの追加、終了などを行っていく事を前提として運営している形です。
実際、現行の『概要書面』(2016.5.16)には以下の記載があります。
※サービス内容はビジネス環境の変化に応じて変更になる場合があります。
本来、サービス内容が変更になればその都度新しい『概要書面』を作り、それを既存の会員に対しても渡す必要がありますので、強いてこのことを『概要書面に』書く必要があるのか疑問ではあるのですが、具体的な商品内容が固定化されていないことを公言する形になっています。
配当割合の大きさはもちろん、こうしたサービス内容内容の位置づけからみても、金銭配当の方を主としている組織である様に思えます。このことが何を意味するのかというとNtBカレッジのビジネスモデルが『無限連鎖講』、いわゆる違法な『ねずみ講』と判断される可能性につながっていく事になります。
■ねずみ講の問題
よく『ネットワークビジネス』を行っている人たちの説明で「多くの人から誤解されているが連鎖販売取引は法律で認められている正しい手法なので、ねずみ講などとは全く違うものだ」というものがあります。こうしたミスリードに繋がりかねない説明は未だに非常に多くあるようです。
現実にはどのように判断されているのかを知るために、『国民生活センター』のサイトの『消費者問題の判例集』にあるページの参考判例の解説を一部引用してみましょう。
連鎖販売契約につき公序良俗違反とした判決は数多い。無限連鎖講との類似性に言及して同違反が認定された判決としては、一連のベルギー・ダイヤモンド事件判決のほか、
* 東京地方裁判所平成18年5月23日判決 『判例時報』1937号102ページ(八葉物流事件)
* 名古屋高等裁判所金沢支部昭和62年8月31日判決 『判例時報』1254号76ページ(福井印鑑ネズミ講事件)
* 大阪地方裁判所昭和55年2月29日判決 『判例時報』959号19ページ(白光マルチ事件)
などがある。
http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200705.html
『連鎖販売取引』と『無限連鎖講』とは非常に似通った形であり、表向き『連鎖販売取引』を行っている業者が『無限連鎖講』に当たると判断されたケースも多くあるという事です。
『ネットワークビジネス』を肯定したい人たちが、よく「これは商品があるから、ねずみ講ではない」といった説明でミスリードを狙う場合があるようですが、実際には『商品』があったとしても、その内容によっては違法なねずみ講と判断されるのです。
そうしたケースで特に注目したいのが、先の解説でも触れられているベルギー・ダイヤモンド事件です。これに関連した裁判は複数あるのですが、中でも重要なのが大阪高裁による『リクルート利益配当』、いわゆる還元率の”割合”に関しての民事の判断です。かいつまんで説明をすると、たとえ適法な商品流通の部分があったとしても、商品購入価格の中に占める『リクルート利益配当組織』の原資部分の割合が、明らかに高く設定されている場合は違法になるとされたものです。具体的に書くと、この事件では43%という割合の大きさにより『無限連鎖講』に該当するとされました。
刑事と民事とはまた別の話になるのですが、この判決以降『マルチ商法』『ネットワークビジネス』を行っている組織の多くは、全体での還元率を高くても40%以下程度に押さえる様になって行きました。(一方、ピラミッド状の販売組織の中でランクが上がって行けば還元率が上がる仕組みを取り入れた組織も多くあります)
NtBカレッジの場合は、自身の『概要書面』に会社総売上ポイントを会員に分配する旨の事が明記されています。つまり”総売上ポイント/販売総計”が還元率、すなわち『リクルート利益配当』の割合になります。そこから計算をすると、月謝の部分だけで見ると『リクルート利益配当』が43%を軽く超えてしまう状態であることがわかります。
『リクルート利益配当』の部分が43%にしようとすると、付与されるポイントに比べて金額が高い『入会金』を払って、すぐに退会するようなケースがかなりの数で発生しなければなりません。しかしそうなると、今度は大部分の会員が『入会金』を払ったものの、その後すぐに辞めてしまっているという事になりますから、NtBカレッジの「稼ぐ方法をおしえる」という商品の価値に自体を問題視する必要が出てきます。商品価値が無いものを提供することを名目にして勧誘で集めたお金を上位に分配する組織となると、やはり「ねずみ講に該当する」という話が出てきてしまいます。
いずれにしろ、NtBカレッジの代表であるS氏やその勧誘者たちは、NtBカレッジのビジネスモデルの合法性を主張したり「コンプライアンス重視の姿勢をとっている」と主張していますが、その実態は非常に怪しいという事が指摘できるでしょう。
続きます。
※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年7月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
※もしNtBカレッジに該当すると思われる組織、あるいはその他組織に関して何かご情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、筆者のTwitterなど宛てにお気軽に教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
掲載順に
トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 独自に入手した資料より作成
中画像: 独自に入手した資料より作成
中画像: 自主製作資料
中画像: 独自に入手した資料より作成