交通事故に遭遇した人の中には、「車がぶつかる瞬間、周囲がスローモーションのように見えた」という人がいます。科学的な根拠はないとされていますが、年齢性別国籍に関係なく、そのような報告が多数なされてきました。
この現象に疑問を持った、千葉大学文学部認知心理学研究室の一川誠教授と千葉大学文学部の卒業生小林美沙さんの共同研究によると、危険な状態におかれると視覚の時間精度が向上して、周囲の風景がスローモーションのように見えることがわかりました。
視覚の時間精度とは、短時間に視覚が処理できる情報のこと。
人間の目は、危険が身に及ぶと、短時間でも多くの画像情報を処理できるようになるため、結果として周囲がスローモーションのように見えるというのです。
一川教授らは、16名の大学生(女性9名、男性7名)の被験者に対して、大多数の人が危険と感じる画像(事故の瞬間の画像など)、安全と感じる画像を織り交ぜた24枚の画像を用意。
各々の画像を1秒ずつ表示し、次の画像を10ミリ秒~60ミリ秒の時間に分けて画像をモノクロに切り替えて、モノクロになった瞬間を肉眼で確認できたかを実験。
その結果、危険な状態と感じる画像を見た時は、ほぼ全員が短時間モノクロ表示に切り替わっても確認することができたとのこと。
また、これらの画像をランダムに0.4秒から1.6秒ずつ表示し、1秒間以上の表示と感じるものを指摘してもらったところ、事故の映像などといった、身体に危険が伴う映像だと感じるものについて、全員が1秒より短い時間でも1秒より長く表示されていたと回答したとのことです。
これらのことから、危険が身に迫った時は、同じ時間でも視覚から得られる情報を大量に処理できるようになり、スローモーションのように周囲が見えることが明確になったとのこと。
今まで多くの方から指摘されてきたことが俗説ではなかったことになりますが、可能なら視覚がフル活動するような危険な状態にさらされないのが一番ですね。
※写真はイメージ 足成より http://www.ashinari.com/2013/01/11-375013.php