今回は、NHKで放送されていた経済ドラマ及び映画を紹介しよう。
「ハゲタカ」
それが物語の名前だ。
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鷲津政彦 (大森南朋)は、外資系投資ファンド「ホライズン・インベストメント・ワークス」日本代表だ。
バブル期に銀行を退職した彼は、とあるトラウマを抱えている。
銀行からの命で懇意にしていた顧客に貸し渋りをしてしまった彼は、そのことに責任を感じている。何故なら、顧客は自殺してしまったから。
銀行への疑問を持った彼は、もっと巨大で、そしてアグレッシブなフィールド。
投資業界で頭角を現すこととなる。
無慈悲に、企業を買い叩き、売る。
銀行員時代よりも、もっと、残酷なことを何かに突き動かされたかのように行う彼。
それは、過去を忘れるための行動なのか、あの日の悲しみが彼を変えてしまったのか。
彼は、その無慈悲思える行動の中にも、優しさを見せる。
買収した会社の再生、改革、そのどれもが業績をあげる。
もちろん、それらは、既存の組織にいる人には急進的すぎて受け入れられない。
反発もされる。しかし、彼は、そのようなことを意に返さず、次々と会社の利益‘だけを’ 見据えた行動を取る。
そのために時に残酷な、つまり、利益をあげられない経営者を切り捨てることを行う。
あの日のように。その過程では、やはり、誰かを行き詰らせて、絶望の淵を見せてしまう。
だが、そのような鷲津の行動には、功利主義的な慈悲が隠れている気がしてならない。
彼は、このようなセリフを発している。
「一緒に日本を買い占めましょう。まだまだ甘ちゃんの、この国を」
資本主義の原理が徹底されていないこの国のシステムにさえ、彼の思慮は及んでいる。
「助けにきたんですよ。瀕死の日本を」
彼は、言うように、本当に助けたいのかもしれない。
この国を。
効率化された資本主義の下ではより多くの人々が助かる。
そう、信じているのではないか。あの日のように、人を自殺に追い込まなくてもよい社会が生まれると。
「我々はハゲタカだ。最後までハゲタカなりのやり方を通させていただきます」
そんな彼の言葉には、人間的は正しくない行動だが、ファンドという組織の行動としては、正しい行動を強いられる彼の板挟みの気持ちが表れている気がする。
彼は、銀行員時代に自殺に追い込んだ社長の娘、三島由香( 栗山千明)に取材を申し込まれた時、多くは語らないが、彼女に他の記者よりも自分の行動の意味、そのヒントを与える。
そのような人間らしさをもった彼が、資本主義の論理を振りかざして、タスクを、ディールを行う姿に感銘を覚えずにはいられない。
私も少しは、社会に影響を与える仕事をしたいと思うお昼前