なぜ多発する? 避難生活でのエコノミークラス症候群(LFT)

熊本の震災から一週間が過ぎようとしています。全国各地からの救援物資の到着や医療班の到着の声を聞くようになり、救援が進んでいるのは喜ばしいことです。

とはいえ、不可解な現象も起きています。避難生活を送る人の中から、エコノミークラス症候群で搬送される患者が続発しているのです。
なお、現在専門家の間でエコノミークラス症候群はLFT(ロングフライト血栓症)と呼ばれるのが一般的ですが、本記事ではエコノミークラス症候群で統一します。

エコノミークラス症候群とは、同じ姿勢を6時間以上保った時に、ふくらはぎなどの静脈内にできたゼリー状の血栓ができ、血流に乗って肺動脈につまり、重篤な場合は失神・頻脈・呼吸困難などの症状が起こる疾患です。

従来、エコノミークラス症候群は、航空機の移動で狭い座席(エコノミークラス)に6時間以上座り続けることで、ふくらはぎの中にゼリー状の血栓ができる原因になると考えられていました。

ところが、2004年の新潟の中越地震では、車内で寝泊まりしていた人が、エコノミークラス症候群を引き起こし、次々と搬送されることになりました。このことから、航空機の狭いエコノミークラスに座るのではなく、水分を取らず大腿部を6時間以上椅子などに押しつけた状態を続けることが、エコノミークラス症候群の原因だということがわかっています。

今回の熊本地震では、19日までに10人のエコノミークラス症候群患者が発生し、済生会熊本病院へ搬送されています。

特に目立つのは、女性の患者が圧倒的に多いこと。女性に発生率が高い理由として、搬送された患者の治療に当たった済生会熊本病院は、避難所のトイレが整備されてないので、水分を摂取するのを控える上に、余震が続くため、体を動かさず血栓が起きやすい状態になっていることが推測されると指摘しています。

エコノミー症候群を専門に治療する医師等は、予防策を以下のように示しています。

1 2~3時間おきに立ち上がって最低10分以上歩く。
  特に車の座席に座ったままや寝たままの状態を維持しなければならない場合は、
  長くても6時間以内に立ち上がって歩くようにする。

2 ミネラルウォーターやお茶などの水分を摂る。
  (コーヒーやアルコールや利尿作用によって、かえってエコノミークラス症候群を引き起こすリスクが高くなるので避ける)

3 体を締め付ける服装は避け、ゆったりとした服装を心がける。

4 座っている時に、足を組まない
  (血行が悪くなって血栓ができやすい)

5 血行を妨げる不自然な姿勢で寝てしまうため、可能な限り、睡眠薬を使用して眠るのを避ける。

避難所の状況によっては難しいのでしょうけど、「水分を適時に取る」「最低6時間に一回は立ち上がって10分以上歩く」ということを意識するのが大事なようですね。

特に、車の中で眠ったりすることはハイリスク行為だと意識して、必ず5~6時間以内に車外に出て体を動かすことが大事です。

※写真はイメージ 足成 http://www.ashinari.com/2013/01/31-375843.php より

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長