【映画試写会】家族を愛さなかった音楽家の行く末とは? 各国主要映画賞13部門入賞『グランドフィナーレ』

  by 南條 祐弥  Tags :  

『グランドフィナーレ』は、女王のオファーを断った指揮者がいたという実話から着想を得て生まれた物語です。
音楽を愛し、家族よりも音楽のために時間を割いてきた名指揮者・フレッド。現役を引退してからは、もう高齢ということもあり、高級ホテルで優雅なバカンスを送りながら余生を楽しんでいました。そこに「英国女王からの出演依頼」が舞い込みますが、名誉あることにもかかわらず、フレッドは出演依頼を拒否し続けます。なぜ、そこまで頑なに断るのか? その理由には、今まで誰も知ることのなかったフレッドの想いが隠されていました。

音楽で始まり、音楽で終わる! 圧巻のラストシーン

映画開始まもなく、軽快な音楽が流れます。そのほかにも、場面それぞれに多彩なBGMを使い分けて、映画の雰囲気を演出していました。高揚、平穏、閉塞感……音楽家が主人公ということもあり、音楽に対するこだわりを感じられる作品です。

ただ、その音楽が何を意味するのかを汲み取るのは、非常に難しい。字幕で観たのですが、BGMの歌詞を把握できないため、リズムや映像から感じ取るほかありませんでした。
それでも、最後の盛大なフィナーレは圧巻! フィナーレは歌詞もわかるのでご安心ください。最初から最後まで、音楽をギュッと詰めこんだ作品。映像のアングルも独特なので、音楽や映像美の視点で楽しむのもひとつの手だと思います。

老いた先に、待っている未来とは?

子どものときには「大きくなったら……」と夢を膨らませ、若いときには「老後は……」と将来を見据えることができます。では、既に年老いた人間は、何に希望を持てばよいのでしょうか? 『グランドフィナーレ』を観ると、老いるとは? 人生とは? 哲学的なことを考えさせられてしまいます。

仕事人間で、音楽に捧げた人生だったフレッドでしたが、引退したら音楽家という肩書とはお別れです。でも、人間として終わるわけではありません。仕事が終わっても、人生は続いていくのです。子どもには、理解し難いけれど、年を重ねれば多くの人がぶつかるであろう壁が、『グランドフィナーレ』に描かれています。

本当に家族を愛してなかったのか?

フレッドは、仕事に夢中で家族を放ったらかしだっただけではありません。なんと不倫もしていたのです。この事実は、娘からの信頼を大きく裏切るものでした。娘は家族より音楽を選んだ父を、どこかずっと許せずにいました。子どもに無関心なフレッドに、自分の気持ちなどわかるはずない。

しかし、娘はあることがきっかけで真実を知ることになります。表面的に目で見えることだけが全てではないのかもしれない。『グランドフィナーレ』は、「好きだ」とか「愛してる」と言葉にして言うことだけが「愛」ではないと気づかせてくれる作品でした。

『グランドフィナーレ』は、2016年4月16日公開です。「英国女王からの出演依頼」に対してフレッドが出した答えを、ぜひ多くの人に見届けてほしいと思います!

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グランドフィナーレ
http://gaga.ne.jp/grandfinale/ 

※画像はホームページ(http://gaga.ne.jp/grandfinale/)より引用。

女性のライフスタイルや児童文化の分野を得意とする、東京在住のフリーランスライター。コラムやシナリオを執筆するほか、書籍の編集協力、取材レポートの提供なども行なっています。趣味は絵本を読んだり、映画を観たり。ハイキングに出かけるのも好き。 ここでは、児童文化や地域情報について楽しく&ゆる~く発信! よろしくお願いします。

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