九州内縦横無尽! 『SUNQパス』で高速バスを使い倒した取材旅行記

  by 古川 智規  Tags :  

宮崎、福岡、長崎と3か所取材した取材旅行に、九州内と山口県下関のほぼすべてのバスが利用できる『SUNQパス』を利用したので、レポートする。
九州島内は、九州新幹線の開業で南北間の所要時分はずいぶんと短くなったが、その代わり在来線が第三セクターに分離されたり、本数が極端に少なくなったり、あるいは普通列車よりも特急列車の方がはるかに多い線区があったりと、便利なように見えて大金がかかってしまうケースも多い。

逆に、高速道路網が充実しているので、路線バスは言うに及ばず、高速バス網が非常に発達している。なかには高速バスの方が運賃が安いのはもちろん、時間も鉄道より早いという路線もあり、苦しいながらもなかなか元気のいい九州のバスである。

国土交通省の社会実験から始まったSUNQパスは通年発売となり、全九州+下関版が3日用10000円と4日用14000円、北部九州+下関版が3日用8000円と3種類のパスを発売している。九州から高速路線バスの便がある本州や四国内のバスターミナルでも発売しているので、事前に手に入れることも可能だ。もちろん、予約もインターネットや電話でできるので、旅程を前もって組んでおくこともできる。
このパスだけで、離島やコミュニティバスを除く全九州内や北部九州のごく一部を除く高速バスや路線バスと、下関の路線バス、それに一部の航路まで乗り放題となる。もちろん九州内夜行高速バスも乗車可能なので、その気になれば宿代わりに利用することもできる。

記者が利用したのは全九州+下関版4日用で、取材の移動と、最終日の余り時間に乗り鉄ならぬ「乗りバス」を堪能した。
SUNQパスの詳細はインターネットで専用ページがあるので、そちらを参照されたい。

11月30日に羽田から空路ソラシドエアで宮崎入りした記者は、その日は宮崎市内で宿泊。この日はまだSUNQパスは有効ではないので、運賃を支払って宮崎市内へ。
翌日からパスの利用が始まる。

まずは、宮崎空港での取材のため、ホテルのある最寄りの橘通り1丁目から宮崎空港まで宮崎交通の路線バスに乗車。
宮崎空港で取材後に宮崎駅に宮崎交通の路線バスで移動。
そして、3乗車目は宮崎駅から福岡へ向けて高速バス乗車となる。

あらかじめインターネットで予約していれば、電話番号を窓口で伝えれば「確保券」という、いわゆる指定券を無料で発券してくれるので、これをもらって待っていればよい。この宮崎・福岡線フェニックス号は座席指定制のため予約が必要になる。予約制ではない高速バスはそのまま乗り込むだけ。

フェニックス号は西鉄グループ、九州産交、宮崎交通、JR九州バスの4社での共同運行だが、記者は12時30分発のJR九州バスの便にした。
JR系のバスは昔から定時性には定評があると思い込んでいるので、福岡に着いた後の取材のことを考えてJR九州バスにしただけだが、時間で都合のよい便にしてもいいし、バス会社で選ぶのもよい。バス会社が違えばバスの仕様も異なる場合があるので、そこはバスヲタならではの研究の成果が出るところだ。

フェニックス号は従来、1か所10分の休憩だったが、わざわざ所要時間を延ばして2か所15分ずつの休憩にダイヤ改正した。
はなから新幹線に対抗しようとせず、どうせ時間はかかるのだからゆっくり乗ってもらって休憩時間に余裕を持たせ、定時性を優先させようとしたバス会社の意図だろう。

車内にもトイレはついているが、休憩が2か所もあれば買い物をしたり、ベンチで一息ついたりと、様々な時間の活用方法があるだろう。

福岡市内に入り、都市高速道路を走行し、福岡空港国際線ターミナルが見えれば、博多駅はすぐだ。

17時08分、ほぼ定刻で博多バスターミナルに到着。フェニックス号はこのまま西鉄天神高速バスターミナルまで行くが、記者は取材のため博多で下車。

夕方のラッシュ時刻を迎えて、福岡市内はそうでなくても多い路線バスが、これでもかというほどやってくる。
営業所から各地に向けて出庫するバスが、10台以上並ぶことも珍しくない。

徒歩でラーメン5に移動して取材。

記者の実家は北九州市なので天神から西鉄の高速バスで北九州に向かい、この日は終了。
福岡・北九州線は時刻表が不要なほど便数があるので、深夜でも適当に行って並んでおけばバスがすぐに来る。
ちなみに福岡市内の中心である天神から新幹線やJR在来線と競合する小倉行きは130便以上あり最終バスは00時15分発、熊本行きも100便以上あり最終は23時40分発と信じられない本数と深夜にも走るので、新幹線はさほど脅威ではない様子。

12月2日はもったいないが記事を書いてゆっくり過ごしたので、SUNQパスは使用せず、明けて12月3日。
北九州市八幡西区にある黒崎インター引野口バス停。
山のように時刻表が並んでいるが、これはすべて高速バス。市内路線バス停と時刻表は別のことろにある。

東京・福岡線も停車する比較的大きな高速バスの停留所なので、設備は充実している。
各地への高速バスや北九州空港の発着案内もディスプレイで確認できる。

ここで、福岡行に乗るのだが、福岡から乗り継ぐハウステンボス行きの確保券をここで発券してしまう。

福岡・北九州線4路線のうちの1つ、レアな「なかま号」がやってきた。
これに福岡天神まで乗車する。

西鉄天神高速バスターミナルは、西鉄電車福岡駅や三越のビルに入っていて、その規模は九州最大。
あまりにも便数が多すぎて、かつて発着していた路線バスをターミナルから追い出してしまったほどだ。

ここで、翌日の予約しているバスの確保券を発券する。西鉄以外の確保券も発券できるところがすごい。

乗り場はすべてホームドア付きで、バスの排気ガスは待合室には入ってこない。

その乗り場から発車するバスの路線図がディスプレイで表示される。

記者は10時50分発のハウステンボス行きに乗車予定。

長崎県佐世保の西肥バスがやってきた。
SUNQパスが使えるバスにはどの会社であろうとステッカーが貼られている。この路線は北部九州版と全九州版で乗車できる。

福岡都市高速を走っていると、釜山行きのフェリー、カメリアが停泊中。

福岡空港国際線ターミナルに停車してハウステンボスに向かう。
途中、九州自動車道の基山PAに停車するが、この「高速基山バス停」は、九州各地からの高速バスが一点に集まるところで、ここでの乗り継ぎができるようになっている。
例えば、SUNQパス全九州版でも乗車できない長崎-鹿児島・宮崎線は、長崎・福岡線に乗車して、高速基山で福岡・鹿児島、あるいは福岡・宮崎線に乗り継げば、長崎から鹿児島や宮崎に行くことができる。

若干遅れて、ハウステンボスに到着。

ハウステンボスで世界最大1300万球のイルミネーションを取材。この日はハウステンボスに宿泊。

明けて12月4日。SUNQパスの最終有効日。
東京に帰るだけだが、夜の航空便を予約しているので、この日は「乗りバス」を決め込む。
長崎に行きたいのだが、土休日しか高速バスがないので、08時20分発の長崎空港行き西肥バスに乗車。

長崎空港に到着後、不要な荷物をコインロッカーに預けて、再度バス乗り場へ。

長崎県営バスの長崎駅前行き高速リムジンバスに乗車。

長崎駅前にある県営バスターミナルから、予約しておいた九州急行バスの11時15分発「ノンストップ九州号」福岡行きに乗車。

終点の博多バスターミナルで下車。

ここで遅い昼食をと思っていたのだが、バスが遅延したためここで食べることは断念。
博多バスターミナル8階にある、お好み焼き「ふきや」でテイクアウト注文して、バス車内で食べる。
個人的な趣味で恐縮だが、「ふきや」のお好み焼きはとにかくでかい。女性が注文すると若干小さめに作られる。でないと食べきれないのだ。ボリュームは満点。
ここの名物は、自家製のマヨネーズ。テイクアウトでもちゃんと付けてくれるから、もし福岡で腹いっぱい食べたくなったら、お勧めする。記者の注文は肉玉で650円。

14時21分発、西鉄高速バスのスーパーノンストップさせぼ号で、佐世保駅に向かう。

天神周辺はいつも混雑している。渋滞の大半がバスのことも多い。そうでなくても西鉄の路線バスが多いのに、高速バスターミナルから乗り入れ各社の高速バスが出てくるのだから、写真のように福岡市内でバスに囲まれたら車線変更はあきらめるしかない。

佐世保駅に到着。

ここから長崎空港行のバスがあるが、時間はまだある。17時00分発、西肥バスの長崎行きノンストップ高速バスに乗車。

長崎駅からようやく、SUNQパス最終乗車である長崎県営バスのリムジン高速バスに乗車。

こうして、長崎空港からソラシドエア42便羽田行きで東京に戻った。

距離を稼いでお得感を出す「乗りバス」もいい利用方法だが、バス路線が充実している九州では、都市間高速バスを利用して、ターミナルからの路線バスで散策するという利用方法もお勧めだ。
また、今回は利用していないが、一部の船舶便も利用できるため、非常にフレキシブルな旅をアレンジしてくれる重宝なパスである。

その気になれば、京王新宿高速バスターミナルでSUNQパスを購入して、別途運賃は必要だが福岡行きの西鉄高速バス「はかた号」で福岡入り、そのままSUNQパスを利用して九州各地に飛ぶ、全行程をバス利用という方法もある。
宿泊地やちょっとした観光地までの運賃すらSUNQパスでまかなえることを考えると、お得な乗車券といえるだろう。

※写真はすべて記者撮影

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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