「新しいアジア太平洋の世紀、いよいよその幕開けです。かつてない規模の人口8億人、世界経済の4割近くを占める広大な経済圏が生まれます。そして、その中心に日本が参加する、TPPはまさに国家百年の計であります」
安倍総理は、今回のTPP大筋合意をこのように評価しました。
マスコミの論調を見ていると、やれ牛肉が安くなるとか、米や農産物が立ち行かなくなるとか、部品の輸出は伸びるだろうとか個々の産物や製品に関するメリット・デメリットの話ばかりが先行しています。
しかし、本当の環太平洋パートナーシップ(TPP)とは一体なんでしょう。私たちはもっと広い視野を持って、もっと遠くを見る必要があるのではないでしょうか。
世界の国々には、たくさんの人種がおり、国が違えばルールも違います。言葉はもとより、ものの考え方や主義・主張、生活習慣から法律や経済活動さらには通貨に至るまで、ほとんどすべてが国ごとに異なります。
そうした国々が、共通のルールを強制的に押しつけられたら、デコボコのあるそれぞれの国ごとにうまみや痛みが出るのは当然で、不平不満が募るのは分かり切っています。
にもかかわらず、あえてルールを共通化しようとする目的は、ひとえにお互いの理解を深め、交流を活発化し、その結果得られる利益を分かち合って、生存と繁栄の共有を目指すからにほかならないのではないでしょうか。
分かりやすく言えば、環太平洋におけるEUのようなものです。もちろんEUのようにまだ進展はしていませんし、EUが理想でもありません。ただ、そのようなものを目指して、TPPは今、始まったと言えるのではないでしょうか。
通貨統合など今はまだ、だれも考えていないでしょう。しかし、いずれは、関税障壁が撤廃され、通貨が統合され、制度が共有され法律も共通化が進むでしょう。そしてさらに大胆にこの考え方を突き進めて行けば、国境が撤廃され、究極の目的である「世界国家」に行きつくはずです。
国と国との垣根を完全に取り払ったグループが、次にはグループごとの垣根を取り払い、世界が一つのグループになれば、正に世界国家が出現し、日本国憲法が言う「武力放棄」が可能となり、核兵器廃絶も現実となるでしょう。
その道のりは、今はまだ想像もつかないほど遠く、「坂の上の雲」のごとく「小さな灯りが歩んだ道を照らす」程度です。いつこの灯りが消えてしまっても不思議ではありません。
とは言え、世界国家を目指す第一歩はここから進んでいくしかないと信じます。この灯りを消さないためには、お互いに目先の国益だけに一喜一憂せず、遠くの目標をしっかりと見据え、多少の痛みに耐えても困難を乗り越えて行く覚悟が肝要なのではないでしょうか。
安倍総理の言われる「TPPは国家百年の計」とはこのようなことかと、勝手に推察しています。