【モノ・マガジンのデジカメ報告No.2】単焦点高級コンパクトという贅沢『ライカQ』

モノ・マガジンのデジカメ報告No.2

本稿は1982年創刊モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス刊)好評デジカメ連載『電子寫眞機戀愛(デンシシャシンキレンアイ)』を気まぐれに電脳スペース上に移植したものである。または、カメラ片手に世の森羅万象を記録せんと闊歩する電磁カメ戦士たちにおくるラブレターでもある。

『電子寫眞機戀愛(デンシシャシンキレンアイ)』

約2400万画素35ミリ判フルサイズ、28ミリF1.7ズミルックス、単焦点高級コンパクトという贅沢『ライカQ』

我が国は長らくドイツをお手本にしてきた歴史があります。とくに自動車、カメラ方面は顕著で、ほかにも航空機や銃器軍事、政治、経済、文化、医学と多くの影響を受けてきました。すると、いったいどうなるかというとあたしなんかはドイツ製っつうだけでもうありがたくてありがたくて。

なんまんだぶなんまだぶ、ダンケシェ、となります。

なかでも三大ありがたジャーマンアイテムは高級ドイツ車、高級ドイツカメラ、高級ツヴィリング包丁でございます。車のほうは『モノ・マガジン』(2015-10-2号)を。また包丁のほうもやはりワールドフォトプレス刊『ツヴェリング読本』で堪能いただきまして、カメラのほうはぜひ、我が『電子寫眞機戀愛(デンシシャシンキレンアイ)』にてご賞味いただけますように、今回はライカのラインナップから高級コンパクトの『ライカQ』をご紹介いたしましょう。

『ライカQ』価格58万6440円

まずは『ライカQ』の外観写真などからご説明いたしますと、まあこれがじつにすっきりとしたというか、シンプルというか、もうちょっとメカニカルな感じでゴツゴツしてる外観のほうがオジサンとしてはうれしいな……って物足りなく感じることでしょう。

ええ、写真だとボディラインにもうすこし凸と凹が欲しく感じるのですよ。

でもね、実物の感触だとその感想はまるで違ったモノになるんですな。無垢のアルミニウムブロックから削り出された上質なトップカバーやマグネシウム合金のボディからは、上質さがにじみ出ておるのでございます。触れた瞬間にそれが伝わります。

そしてこのカメラを構えたときに、右手親指のあたる肩の部分がほんのわずかに削られサムレストになってることに気がつくはずです。ほんのわずかな変化にしか思えないのですが、これが実にしっくりとカメラを握り構えることができる効果的なものだと知ったとき、あなたも驚きを隠し得ないでありましょう。

我が国の美徳のひとつである慎み深さとさりげない工夫。そう、無骨な焼き目の茶碗に加えられた陶工によるほんの少しの親指のへこみ……そんな優しさを感じる『ライカQ』の握り心地なのであります。ドイツ製だからってぜんぶマレーネ・ディートリッヒみたいなすごいのばかりじゃないんです。いや、そういうのもキライじゃないすけど……。

幅130㎜、高さ80㎜、本体質量590gと小型ながら大口径レンズを搭載したヤクートパンター(編注:第二次世界大戦当時のドイツ軍中戦車)みたいな『ライカQ』ですが、中身のほうは約2400万画素の35ミリ判フルサイズCMOSセンサー画像をQ専用エンジンが処理し、撮影感度はISO 100からISO 50000と高感度撮影にも対応。

ノイズレスなフルサイズCMOSの余裕と搭載されたライカ ズミルックスF1・7/28㎜ ASPH.レンズの組み合わせでローライトな撮影条件下でも最高の描写を約束します。さらに光学式手ブレ補正機構も内蔵、これによりシャッター速度にして約2・5段もの効果が得られるのであります。

このコンパクトな機体内に凝縮された高性能は完全にレンズ交換式大型一眼レフを駆逐しにかかってます。できないのはレンズ交換だけです。これまさにヤクートパンター。わからないレディまたはフラウはググってみてください。「あっ(納得)」となるでしょう。『ガールズ&パンツァー』でいうと黒森峰女学院の保有戦車ですね。

これで「あっ(納得)」となったらそれはそれで問題です。

描写力「大口径F1.7らしく素晴らしくボケる」

さて、基本性能はクラスを越えて極めて高いレベルにあるこの『ライカQ』ですが、操作性能や描写力のほうはどうでしょう?

人間が作るモノなので国が違えども、そうそう違いはないはずなんですが、たまーにありますよね、スイスアーミーナイフの缶切りがなぜか押して切るタイプでしばしまごつくとか、ドイツ車のウインカーが左右逆なのでまごついたあげくワイパーうごかしつつ車線変更してしまいクラクション鳴らされるとか。

その点、『ライカQ』はなんの心配もいりません、すべての操作が合理的かつ人間工学に基づき正確に配置、システム化されているので撮影までの手順は説明書が不要なほどであります。

懐中電灯ですら電池交換するのに説明書を読む私が言うので間違いありません。また、368万ドットの高性能EVFもビューチフル。構えた感じも収まり具合も快適な電子ビューファインダーです。

そしてレンズの描写も大口径F1.7らしく素晴らしくボケる。おっと、まずボケを褒めたらピントが合わないみたいだけど、自然に背景の溶ける浅い被写界深度でピントが際立つので素晴らしく立体感を感じるのであります。確かに購入には少々気合いの必要な価格ではありますが、その価値はありますぞ富裕層の皆々様。

お値段以上、『ライカQ』。

『ライカQ』
価格58万6440円
有効約2400万画素フルサイズCMOSセンサー/EVF、光学式手振れ補正機構/Wi-Fi、NFC/ISO100~50000/フルHD動画対応/3型約104万ドット背面液晶/本体幅約130×高さ80×厚み93㎜/撮影時質量約640g

魅力の質感と操作性

凹んだサムレスト部分。これによりカメラを薄く軽快な感覚で握れる。ボデイはアルミニウムからの削り出しとマグネシウム合金による美しいラインを描く。なでなでしていて飽きがこない指に吸い付くようなこの感触が裸……じゃない、ライカの魅力なのだなと感じた不惑の秋。

ここがスゴイ

ボデイにくらべ大きく感じるレンズはズミルックス 28㎜ f1.7。そりゃそうだよフルサイズでF1.7の明るさだもの。ライカ定番の50ミリや35ミリでないのがファンにとってどう感じるかはともかく、シャープで立体感のある描写力は流石っス。クロップで35ミリ、50ミリの画角が選べますのでぜひそちらもご賞味ください。

接写もお任せ

スナップなど日常の撮影では便利で楽しい28ミリと正確で素早いコントラストAFだけど、たまには接写もしたいなーっていうワガママをいうユーザーにライカも折れました。今回は最短30㎝、さらにレンズ根元の切り替えリングで近接撮影機構にスライド、最短撮影距離17㎝まで近寄れます。写真はMACROにてマグロ……。こんな写真に恋をする。

28ミリ スナップ

素早いオートフォーカスとキレの良いシャッター、適切なグリップと軽快な質量。そして滑らかで見やすい368万ドットの高性能電子ビューファインダーでこの『ライカQ』は相当なスナップ番長であります。高速な10コマ/秒の連写速度に頼らずともレスポンスの鋭さで瞬間を切り撮ることができるカメラでありました。

撮影データ
絞り:F4
シャッター速度:1/1000秒(オート)
感度:ISO100
撮影モード:絞り優先オート

28ミリ 接写

ライカQを携えて海辺を歩いていると、綺麗な野良猫に出会った。

触れるか触れないかの微妙な距離感で様子を伺う仕草が可愛い。「おお、そうか。これがライカが出会いを呼ぶってヤツだな」と納得し2、3枚撮らせてもらう。絞りを開けて背景をボカして立体感をだそうとしたところ、見事に思い通りの効果に。打てば響く、そんな気持ちの通じるカメラです。

撮影データ
絞りF1.8
シャッター速度:1/16000秒
感度:ISO400
撮影モード:マニュアル設定

写真と文/織本知之

日本写真家協会会員。第16回アニマ賞受賞。1972年千葉富津生まれ。
facebook:https://www.facebook.com/tomoyuki.orimoto[リンク]

なんどデジカメのバッテリーを買ってもその度にマークや番号で区別を忘れ、ダメになるまでさっぱりわからないロシアンローテーションが得意なカメラマンです、みなさんこんにちわ。

公式サイト

モノ・マガジン2015年11月2日特集号
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10月16日発売【特集】さらば、賃貸! モノマガ人の家

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1982年創刊のモノ情報誌のパイオニア。

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