愛犬の幸福度を高めるには


愛犬と共に暮らしていれば、犬は家族の一員だと強く感じていると思います。私もその一人です。みなさんも家族の一員である愛犬の幸せを願っていることと思います。また共に暮らしていると犬とヒトの似ている仕草や行動、感情にも気がつくと思います。しかし犬はヒトとは違う動物。ヒトの暮らす社会で生かさせる犬達の多くは、犬が本来もつ能力を発揮できずにいたり、欲求の発散が不足がちでストレスを溜めている犬も多くいます。その結果で問題行動に発展し私の元へ相談に来られる飼主さんが沢山おられます。問題行動に発展してしまうと当然ながら犬も幸せとは言えない状態になってしまいます。また目立った問題行動に発展していなくても愛犬が”何か特定の音に怯える”や”散歩が嫌い”などの問題を抱えていては犬もストレスを溜めてしまいます。家族の一員である愛犬には生涯に渡って幸せを謳歌してもらいたいものですよね。それでは愛犬にもっと幸せを感じてもらうために我々飼主に何ができるのでしょうか。

犬のことをもっと知る

まずは相手である『犬』のことを理解することが初めの一歩となります。現在、多くのブログで情報が発信されています。役に立つ知識も多くあると思います。しかし中には専門家から見ても怪しいもの散見されます。ブログなどで情報を得ようとするなら”どんな立場の人が書いているのか”を注意した方が良いでしょう。またその人の書く他の記事も読んでみて総合的に判断する必要があります。また、ブログなどでは1つの記事のみから情報を得ることが多くなりがちで、情報が偏りやすくなります。個人的には書籍をお勧めします。書籍であれば著者のプロフィールも詳しく書かれているので判断の材料になりやすく、情報のボリュームもあるので幅広い知識を得ることができます。また書籍の著者も判断材料の1つになるでしょう。犬関連の本は生物学者や動物行動学者、獣医師、ドッグトレーナーが著者となった物が多く出版されています。それぞれで意見が異なったりもしますが、各専門家が提唱することであれば一定の信頼は担保できると考えられます。また、ある本の反対意見の本を読むのも知識の幅を広げるのにとても役に立ちます。

知識を得たら実践あるのみ!

せっかく得た知識を実践して効果を試してみましょう。本などで得た知識も使わなければ意味がありません。自分に出来そうなことからチャレンジしてみてください。全てうまくいく事は中々ないと思いますが、幾つかは効果のある事もあるかと思います。もちろん相手は生き物ですから無茶な事はしないようにして慎重に取り組みましょう。

迷ったら専門家に相談しよう

とにかく少しでも不安を感じたら直ぐにドッグトレーナーやビヘイビアリストなどの専門家に相談をしましょう。誤った方法を誤ったやり方で進めていると逆に問題行動に発展することもあります。なので「なんかおかしいな」と思ったら、気軽に専門家に相談をしましょう。私に元に相談に来られる方に訊くと「トレーナーに依頼するのはハードルが高くて…」という方もいらっしゃいます。しかし我々のような専門家は「問題行動は未然に防ぐのが鉄則」と考えているので、早めに相談して欲しいと思っています。事態が悪化する前に専門家に相談すれば早期解決にもなりますし、犬も余計なストレスを溜めずに済みます。また躾や問題行動に対して獣医さんに相談される方も多いと思います。しかし、獣医さんは病気や怪我の予防・治療の専門家です。しかも犬だけではなく多くの動物を扱う専門家です。獣医さんの中には動物行動学に詳しい方やトレーナーのライセンスを持った方もいますが、それはほんの一部に過ぎません。獣医さんは犬の躾や問題行動の専門家でないということを飼主は知っておく必要があります。適切な専門家に依頼することが大切です。

専門家を徹底的に利用する

「本を読むのは苦手で…」という方や「本を読んだけどあまり理解が深まらい」と感じたら、積極的に専門家にアドバイスをお求めてみましょう。犬に関する知識でも良いですし、貪欲に質問を浴びせて教えてもらえば本を読むより役に立つかも知れません。百聞は一見に如かずですね。私もトレーナーになる前は大の本嫌いだったので警察犬訓練所で直接に指導をしてもらうことから始めました。その中で多くを学びましたが、それがきっかけで好奇心に火がつき、本を読むようになりました。そして本で得た知識を実践してみて不安を感じたらすぐに先生に質問をしたものです。先生は丁寧に本で得た知識の理論をどうやって実践するかを教えてくれました。また我々のような専門家は勉強熱心な人にはつい熱が入ってアドバイスしてしまうものです。専門家の習性ですね(笑)このように専門家の習性を利用すれば、もっと効率良く学ぶ事ができます。

テキトーが通用しないのが動物の世界

愛犬の幸せを願うならくれぐれも”テキトー”に考えないことです。私がトレーナーになってから強く感じるのは「テキトーな考えや理論は一切通用しない」という事です。その結果は犬の行動や表情に出ます。きちんとした方法で犬と接し、犬の生理的な欲求を発散し、もっている能力を延ばしてあげて、信頼できる家族と暮らす事ができれば犬はその一生を謳歌できるのではないでしょうか。それには飼主にも一定の知識やスキルが求められます。現状の自分の知識に奢らず、スキルアップを心がけて実践すれば、犬の行動は望ましい方向に向い、犬の笑顔をたくさん見られるようになります。愛犬もまた、あなたの言っていることを今よりももっと理解してくれるようになります。そうなればあなたも愛犬との強い絆を感じることでしょう。目の前にいる愛犬の事をもっと知ることはとても楽しい事です。きっと愛犬も勉強熱心なあなたの期待に喜んで応えてくれるでしょう。

※TOP画像は著者が撮影したものです。
被写体は著者本人と著者の愛犬達、撮影当時に保護していた犬。

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner