食欲の秋におすすめの本(1)井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』角川春樹事務所

みなさん、こんにちは。今日から9月、残暑というよりは涼しく、一気に秋が近づいたように思います。秋といえば、食べ物がおいしい季節。井上荒野さんの『キャベツ炒めに捧ぐ』(角川春樹事務所)は食欲の秋にふさわしい本です。

『キャベツ炒めに捧ぐ』は、東京の私鉄沿線の、各駅停車しか停まらない町の、商店街にある、お惣菜屋『ここ屋』を舞台に、バツイチの江子(こうこ)、初恋の幼なじみに恋をしている麻津子(まつこ)、夫と息子に先立たれた郁子(いくこ)の3人の60代の女性が主人公の物語です。

題名になっている「キャベツ炒め」の味付けだけでも、醤油派、ソース派、塩派と好みがバラバラの3人。お互いを信頼して、時には、恋バナも楽しむ姿は微笑ましくもあります。江子の元夫の白山や麻津子の恋人の旬の少し情けない姿や、3人のアイドル、米屋の配達人進が右往左往する姿も、この物語を魅力的にしています。

お惣菜屋を舞台にしているだけに、おいしそうな料理がたくさん登場します。なかでも、1章『新米』に登場する「茸の混ぜごはん」は、文章を読んだ瞬間に食べたいと思った料理です。進が作る「キャベツ炒め」も、どんな味か気になりますし、麻津子の思い出の味「桃素麺」も挑戦したい料理です。

3人の女性が楽しく料理をする姿がごちそうの、この物語。料理が好きな人、食べることが好きな人、元気になりたい人におすすめです。

『キャベツ炒めに捧ぐ』

作者:井上荒野

出版社:角川春樹事務所

2011年9月8日第一刷

 

 

野球はスワローズ、好きなキャラクターはつば九郎、使っている手帳はあな吉手帳。最近ランニングを始めました。興味があることは、色彩心理学です。

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