浮かんで、潜って、飛び降りて!カラダで感じるニュージーランドの絶景ベスト3

  by 牧村 朝子  Tags :  

「絶景まとめ」をスマホで眺めて、満足している自分だった。「いいなぁ、いつか行きたいなぁ……」なんて口では言いながらも、やっぱりお布団の中が心地いい、そう思っていた。

だって、まだ知らなかったのだ。スマホで見ている写真の中の、澄み切った空気を、異国の鳥の歌を、はじめて見る花の香りを、その土地に生きる人たちを。特に、冒険者がつくった国・ニュージーランドには、“絶景を眺める”なんてものじゃない、“絶景の中に入って感じとる”機会がたくさん用意されている。

ということで今回は、カラダで感じるニュージーランドの絶景をあなたにお届けしたい。

前回記事:「さかさま、なのに、なつかしい国。ニュージーランドへの旅が心を揺さぶる5つの理由

もくじ:カラダで感じるニュージーランドの絶景ベスト3

【1】数十秒後は、違った自分――オークランド・スカイジャンプ
【2】地球の中の宇宙に出会う――ワイトモ・グローワーム・ケーブス
【3】鳥を見下ろしながら飛ぶ――エア・サファリ

【1】数十秒後は、違った自分――オークランド・スカイジャンプ

まずご紹介したいのは、ニュージーランド北島オークランドにある、南半球で最も高いタワー・スカイタワーからの“スカイジャンプ”だ。

タワーからのジャンプ、と言われた時点で「あっ、もうなんか無理」となってしまう人もいるかもしれない。私もわりとそうだった。が、192mの高さから最高時速85kmで飛び降りたあとは、最高に興奮しきってこう言っていた。「なにこれ気持ちいい! もう一回やりたい!!」……そんな一面が自分にあるなんて、数十秒前までは知らなかったことだ。

写真:Mark Downey

もう一回、どころか、係員さんにはもう200回くらい飛んでいる人もいるらしい。ただ、私に付き添ってくれた係員さんはこんな人だった。私がジャンプ用のスーツに着替え、バンジー的な縄をつけてもらっていた時のことだ。

自分「緊張するなぁ……」
係員「うん、僕も緊張する。初めてだから……
自分「え!?」

HAHAHAHAHA!! と他の係員さんがウケていた。これがニュージーランドジョークなんだろうか? とにかく、そんなふうに緊張をほぐしながらも係員さんはきちんと準備してくれた。周りでウケていた係員さんも、ちゃんと安全をダブルチェックしてくれる。ノリは軽いが、スカイジャンプは、ニュージーランド国内で行われるビジネスの安全性を審査するOHSの認証を受けた安全性の高いアクティビティだ。

いたれりつくせりで準備してもらった後は、いざジャンプ。意を決して飛び降りる感じを想像していたが、実際はノリノリの係員さんに「オッケー! レッツゴー!」されて気づいたら飛んでいた

一瞬「うぐっ!!」と息が詰まった。しかし、目の前に広がる海、全身を包む風に気づいたら、なんというか、ものすごく自由になった。文字通り宙に浮いて、着地が近づくと、自動的にスピードが落ちるようになっている。何の心得もない私でも、忍者みたいにふんわりしゅたっと着地することができた。

そうは言っても恐いというあなたにおすすめするのは、命綱つきで足場を歩く“スカイウォーク”で慣れてからのスカイジャンプだ。私も、係員さんといっしょに高所を歩き回って慣れてからのジャンプだったので、だいぶ安心感を持てたと思う。

必要なものは全て貸し出してくれるので、特別な持ち物は何もない。ただ、「あなたのビーサンが飛んでって通行人にぺちっと当たっちゃうかもしれない」から、きちんと靴ひもで固定できる靴を履いてきてほしいと係員さんは言っている(※忘れてしまった人にも靴の貸し出しはある)。長い髪はまとめる必要があるし、できれば動きやすい服装に長い靴下をはいていくことをお勧めする。

メガネやコンタクトレンズを使用している人も心配なくジャンプできる。私はソフトコンタクトレンズを着用して飛び降りたし、メガネの人にもちゃんと専用のストラップを貸してくれる(写真)。

持病や身体的障がいのある人の利用についても、相談に乗ってくれる。事前連絡の上、医師の診断書や付添人が必要になる場合もあるが、公式サイトには車椅子利用者のための専用ハーネスも紹介されているなど、最大限の対応をしてくれるようだ。

(※写真は2016年6月時点の資料)

▼スカイジャンプ、スカイウォーク
住所:Federal Street, Auckland Central, Auckland, New Zealand.
TEL:+64-9-368-1835
営業時間:10時~18時
URL:http://www.skyjump.co.nz/

【2】地球の中の宇宙に出会う――ワイトモ・グローワーム・ケーブス

写真提供:THL

続いてご紹介したいのは、ニュージーランド北島ワイカト地方に位置する、先住民マオリの人々の神聖な洞窟“ワイトモ・グローワーム・ケーブス”だ。この洞窟にはツチボタルが生息しており、まるで地球の中の宇宙のような光景が広がっている。この光景は一年中楽しむことができる。私が訪れたのは6月(ニュージーランドの初冬)であったが、ツチボタルたちは元気に光っていた。

洞窟内には、現地のガイドさんと共に、しばらく歩いて進んでいくことになる。車椅子利用者のためには、同じくツチボタルの生息するルアキリ洞窟が整備されている。奥の奥まで進むと、洞窟の中を川が流れており、その上をボートで進みながらツチボタルを眺めることになる。

ボートは十数人の乗り合わせになっており、ガイドさんがロープをたぐって操作するので、静かで、せせらぎの音の邪魔をしない。ボートに乗った直後こそ、世界各国からの観光客十数人(私含む)が「きれーい!」「すごーい!」と騒いでいたが、ゆっくり洞窟を進んでいくうち、みな不思議と静まりかえってくる

写真提供:THL

この一つ一つの光が、それぞれ、生きている。光るツチボタルはまだ幼虫で、釣糸のような糸を数十本も垂らし、そこにちいさな羽虫が引っかかるのを待っている。「まるで、よくばりな釣り人みたいですね」とガイドさんに言ったら、こんな話をしてくれた。

羽虫を食べたツチボタルは成長し、さなぎになり、やがて成虫になる。そしていつかは誰かに出会い、卵を残して死んでいく。相手を求めて飛び続ける成虫ツチボタルには、もはや、食べるための口がついていないのだそうだ。だから、幼虫ツチボタルは何十本も釣り糸を垂らして、じっと食べ物を待ち、力を蓄えているのだ。その時が来たら、ちゃんと、運命の相手のところまで飛んでいけるように。

星空のように輝くツチボタルを見上げながら、「この光の粒のどれかとどれかがいつか出会うんだなあ」と考えていた。静まりかえり、ただ水の音だけがする中を、偶然に一緒になった旅行者たちと進んでいく。お互いに言葉は通じないのだけれど、洞窟を抜けた時、誰からともなく自然に拍手がわき起こった。

写真提供:THL

▼ワイトモ・グローワーム・ケーブス
住所:585 Waitomo Village Road
Waitomo Caves
Private Bag 501
Waitomo
TEL:+64-7-878-8228
URL:http://www.waitomo.com/Waitomo-Glowworm-Caves
※マオリの人々の聖地であり、環境保全の観点から、特別な許可がなければ撮影禁止です

【3】鳥を見下ろしながら飛ぶ――エア・サファリ

最後にご紹介するのは、ニュージーランド南島の美しい湖・テカポ湖近くから出ている遊覧飛行機“エア・サファリ”だ。5人から15人までの小型飛行機で、全席が窓側。約50分の空の旅を楽しむことができる。なおニュージーランドでは、日本と季節が真逆になる。むしむしする梅雨時の日本を出て、初冬のニュージーランドで雪山を眺めるのは、なんとも清々しくぜいたくな時間だった。

まるでディズニー映画みたいな、ちっちゃな可愛い飛行機が空港で待っている。

飛び立ってすぐに、テカポ湖の青と雪山の対比に目を奪われる。飛行機は徐々に高度を上げていき、あっというまに鳥の背中を見下ろすくらいの高度に達してしまう。

雄大な氷河は、最初から最後まで流れるのに200年かかるのだという。いま見下ろしている光景が、自分の一生の何倍もの時間を秘めているのだという、悠久の流れを体の芯で感じた。

ニュージーランドで最も高い山であるマウント・クックも、飛行機から一望することができる。なにか生き物が見えないか一生懸命探したが、なんの足跡もついていない厳然とした雪の世界が広がっているばかりだった。

着陸寸前まで見逃せない。グレンタナー・パークの大地に風が描いてきた模様が、どこまでも続く未解読の文書のように広がっている。この上を飛行機に乗って滑空しながら、なんだか、どこか知らない惑星に着陸するような錯覚にとらわれた。そういえば地球だって惑星だったっけ、って、飛行機から降りたときにやっと思い出したような気がした。

▼エア・サファリ
住所: State Highway 8, Tekapo Aerodrome, Lake Tekapo, Christchurch – Canterbury, 7945, New Zealand
TEL:+64-3-680-6880
営業時間:10月~4月 8am-5.30pm, 5月~9月 8.30am-5pm
URL:http://www.airsafaris.co.nz/

そう。ニュージーランドを旅することは、地球に住んでいることを思い出させてくれる行為なのだ。
私たち人間は、自分自身の捉え方次第で、ある町にいると感じることも、ある国にいると感じることも、ある星にいると感じることも自由だ。忘れがちだが、家の中にいるということは、銀河系の中にいるということと同じなのだ。

そんなことを、ニュージーランドの風は、空は、海は、大地は、そっと思い出させてくれたと思う。
あの澄んだ風は、遠い空は、秘めやかな海は、命にあふれた大地は、自分がどんなにつらい思いをしていたって、ちゃんとここから繋がっているんだ。そのことを、身体で覚えていられる。

この記事を通して、ニュージーランドで感じたものをお伝えできたなら嬉しいと思う。ただ、伝えることはできたとしても、感じてもらうことってやっぱり画面越しでは難しい。ぜひ、あなたの身体で出かけて欲しい。「見る」だけじゃない、身体で感じるニュージーランドの絶景の中へ。

▼フライトやツアー検索、更なる情報を探すなら:ニュージーランド政府観光局
http://www.newzealand.com/jp/travel-agent-or-airline/

タレント、文筆家。 いわゆるLGBTsを中心に、社会的弱者についての諸問題を専門分野とする。著書「百合のリアル 増補版」(小学館)「同性愛は病気なの?僕たちを振り分けた 世界の同性愛診断法」(星海社)「ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?」(イースト・プレス)、主なテレビ出演「5時に夢中!」(TOKYO MX)「ハートネットTV」(NHK教育)「世界の日本人妻は見た!」(TBS)ほか。司会やナレーションなど、声の仕事でも活動。学校や自治体での講演も多数行っている。

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