【しつけ】犬にとっての報酬とはなにか


 最近のドッグトレーニングの方法では、”褒めて伸ばす”や”報酬を与えて学習させる”という物が主流になっています。もちろん、これらは有効に働きます。犬が何かの行動を取ることで報酬を得れば、その行動は強化され定着します。こうした報酬を与えることでの学習は、学習の速度を早めて効果的なトレーニングを実現させるものです。
 さて、ここでは犬にとっての”報酬”とはどんなものなのか、について考えてみたいと思います。

報酬の種類は色々ある

 一般的に報酬といえばオヤツとなるでしょう。オヤツなどの食べ物は、動物にとって生死を分けるほどの重要な意味を持ちます。食べる事そのものが報酬となり、これはとても強烈な報酬となり得ます。多くの場合で報酬をオヤツとすることができます。しかし、犬にとっての報酬という事を考えると、常にオヤツで良いのかという疑問も湧いてきます。犬がその時々で求める物や事柄も、オヤツなどの食べ物と同様に報酬としての働きを持ちます。
 例えば外に出たがっている犬がいるとすれば、外に出れる事も報酬となり得ます。犬が遊びたがっているのなら、遊んであげる事も報酬となるでしょう。また犬が甘えたい様子なら、甘えさせてあげるのも報酬となります。
 このように、その時々の犬のニーズを満たす事も、食べ物と同様に報酬とすることができます。この原理を利用して犬のしつけを行うことで、様々な場面で犬のトレーニングが行えるようになります。
 例えば、犬が外に出たがっていて、玄関の前でソワソワしているとします。これは絶好のトレーニングのチャンスです。犬のそばに行き、犬に何らかの指示をだします。指示は犬が確実に出来る簡単な事が良いでしょう。うまくできたら、その報酬として玄関のドアを開けて外に出してあげます。犬は外に出たがっていたので、外に出れることが報酬となります。また、犬が遊びたがっているのなら、飼い主は簡単な指示を出して、うまくできたら遊んであげます。
 このようなケースでは、犬は指示に従えば要望が叶えられると学習できます。すると犬は飼い主から発せられる指示を、願いが叶うチャンスだと捉えることができます。こうした事を繰り返していると、指示に対して喜んで従うようになります。

なにも与えないという報酬もある

 これは犬同士のやりとりを見ていると頻繁に見られます。例えば犬が自らの意思で飼い主に近寄って来たとします。犬は飼い主に近づきたいという欲求があると考えることができるでしょう。この場合では犬が近寄って来ることを許すというのが報酬になります。犬同士のやりとりでは相手が近づいてくる事に抵抗がなければ、その行動を許すのみです。犬が犬を褒めたりはしません。逆に近づかれることに抵抗があれば、追い払うか自ら違う場所に逃げます。つまり、犬が近づいてきて飼い主の横でくつろいでいるのなら、その行動を許すだけでも報酬となるのです。
 このような状況をトレーニングに応用するなら、犬が飼い主に近づき、飼い主の手前に来た時点で、何かの指示を出します。その指示をうまくこなせたら、「オイデ」と指示を出して、近寄らせます。このように応用することで、オイデなどの呼び戻しのトレーニングにもなります。

犬のニーズを捉えて応用する

 このように、犬がその時々で求めていることが解れば、報酬として使うことができます。散歩の最中に歩きたがっているようであれば、歩くことも報酬とすることができます。その犬のニーズを満たすまでのプロセスで、犬に指示を与えることができれば、様々な状況でトレーニングが行えます。
 オヤツという強力な報酬以外にも、有効な報酬はたくさんあります。それは、その犬のニーズを知ることで見つけることができるものです。たくさんのニーズを見出してあげることができれば、多くのニーズを満たしてあげることもできます。ニーズがしっかりと満たされる犬は、報酬を与えてくれる飼い主をより信頼するようになるでしょう。

 皆さんも、愛犬をよく観察して愛犬の隠れたニーズを探してみるものも楽しいと思います。

※TOP画像:筆者撮影
 

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner