読前読書録vol.4 西川美和「その日東京駅五時二十五分発」

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 映画「ウインズ・オブ・ゴッド」の衝撃を、今も忘れることができない。現代から第二次大戦中にタイムスリップした漫才師の若者二人が、当時の若者たちと入れ替わって生きる話だ。そこで描かれていたのは、はるか遠いと思っていた時代の若者が、今の時代の若者と変わることなく悩んだり迷ったりしながら生きている姿だった。朝に漂う草いきれ、太陽の下のグラウンドに舞い上がる砂埃、大切な人の息を飲む愛おしさ、僕自身経験してきた夏の日と同じものがそこにはあった。その中で唯一違うのは、若者たちの覚悟だ。愛する人を守るため命を賭して戦うという覚悟。戦争が終わった日も暑い夏の日だったと聞く。その日、何が起きるかを誰も知らず、人々はどこに向かったのだろうか。何を考えて過ごしたのだろうか。
 休日の一日、のんびりと気持ちを緩め過ごす。当時と比べ、なんと軽い一日だろう。覚悟のない日々を反省する。改めて、今井雅之さんのご冥福を祈る。

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