「パトレイバーは無限に作られる」――『機動警察パトレイバー EZY』完成披露舞台挨拶レポ 出渕裕・上坂すみれ・戸谷菊之介・千葉繁が語る新章

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2026年4月23日、新宿ピカデリーにて『機動警察パトレイバー EZY File 1』完成披露イベントが開催された。

当日は5月15日(金)に『File 1』として公開される第1話『トレンドは#第二小隊』、第2話『閑中妄あり』、第3話『ホンモノが一番』が先行上映されたほか、上映後に出渕裕監督、久我十和役の上坂すみれさん、天鳥桔平役の戸谷菊之介さんによる完成披露舞台挨拶が行われた。

1988年のOVA第1話から38年——ついにヴェールを脱いだ新生特車二課第二小隊。
サプライズも飛び出した完成披露舞台挨拶の様子をファン歴38年の担当ライターがこの目で見届けてきた。

約40年の歴史に感謝――出渕裕監督とキャストが語る『EZY』への想い

全3話からなる『File 1』の上映が終了すると同時にスタートした完成披露舞台挨拶。

ひと足お先に『File 1』を見届けた会場のファンに向け、出渕裕監督は「思えば遠くに来たものです。約40年にわたってお付き合いいただいている方もいらっしゃるかと思います。この場を借りてあらためまして……ありがとうございます」と感慨深げに頭を下げた。

旧作のファンだったという久我十和役の上坂すみれさんは、新作が制作されると知り、ファンとして楽しみにしていたとのこと。

「ファンとして楽しみにしていたのに、まさか自分がイングラム1号機のフォワード(パイロット)になれるとは思っていませんでした」と嬉しそうに話す上坂さん。

先行上映された『File 1』について、上坂さんは「『パトレイバー』イズムにあふれた作品になっていると思います。軽妙な会話劇はイングラムが登場していなくても面白いし、イングラムが登場するともっと面白くなるんです!」とファンならではの目線で語り、往年のファンたちの共感を集めた。

天鳥桔平役の戸谷菊之介さんは「僕は『EZY』のオーディションを受けるにあたって、初めて『機動警察パトレイバー』という作品に触れたのですが、演出の素晴らしさに感動しました。上坂さんがおっしゃるように軽妙な会話劇が魅力の作品なので、『役者としての腕が試されるな……』と思いながら、毎回、覚悟をもってアフレコに挑んでいます」と『EZY』にかける想いを語った。

時を超えて受け継がれる特車二課 千葉繁が語る『パトレイバー』の魅力(ネタバレあり)

※以下、作品の内容に関わる記述がございます。

出渕監督と上坂さん、戸谷さんの挨拶が終わると、ここでまさかのサプライズが!
旧作のファンにはおなじみ、特車二課整備班のシバ・シゲオを演じてきた千葉繁さんが舞台に登場!

PVや2月に行われた第1話の先行上映で出演は判明していたものの、『EZY』にどのような形で登場するかは明かされていなかったシゲさん。

1988年のOVA第1話から登場し、劇場版やテレビシリーズはもちろん、実写版『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』では千葉さんご自身が俳優としてシバ・シゲオを演じるなど、シリーズの生き字引とも言える千葉さんの登場に、会場からは大きな拍手が鳴り響いた。

「最近、『千葉繁に似ている』と言われることが多い、シバ・シゲオです」と千葉さんが会場のファンに挨拶すると、会場は爆笑の渦に包まれた。

初期OVAシリーズ(アーリーデイズ)や劇場版1作目、テレビシリーズ、NEW OVAでは、整備班の若頭的な存在として、強面の班長・榊清太郎に付き従っていたシゲさん。劇場版2作目や実写版では班長となっていたシゲさんは、『EZY』では歳を重ね、一線を退いたものの、整備班の特別顧問として2030年の特車二課でも変わらぬ飄々とした姿を見せてくれている。

さらに『EZY』では、これまでアニメシリーズでシバ・シゲオとカタカナで表記されていたキャラクター名が、ゆうきまさみさんの漫画版に準拠した漢字表記の斯波繁男に変更されている。
もともとキャラクター性は千葉繁さんをモチーフにしており、初期OVAシリーズで音響監督を務めた斯波重治さんの名前と千葉さんの名前を掛け合わせてつけられた名前。それだけに、漢字表記になったことで、より千葉さんとの親和性が高いキャラクターになったと言えるかもしれない。

『EZY』への出演について千葉さんは「特車二課に就職して本当によかったと思います」と語り、作品の魅力について「『パトレイバー』という作品は、なにも考えなくていい。いつでもすんなりと入っていける世界なんですよね。あと、普通に考えたらイングラムをかっこよく活躍させなきゃいけないのに、全く活躍しないのがいい(笑)」と笑いを交えて語ってくれた。

千葉さんの「イングラムが全く活躍しない」という発言に、出渕監督は「いやいや『File 1』でもちゃんと動いてますから」とすかさずフォロー。

劇場版1作目に登場した試作機・零式や、劇場版やテレビシリーズで活躍したヘルダイバーが『File 1』に登場していることにも触れ、「PVで零式やヘルダイバーを出したことで、ファンのみなさんが『どうやって零式やヘルダイバーを出すんだろう』と考察されていますが、先ほど先行上映をご覧になったみなさんはわかると思います。ファンのみなさんの考察は心地よく裏切られます(笑)」と、ニヤリと笑った。

押井守も“クレジット入り”!? 樋口真嗣の予告編に隠された舞台裏(ネタバレあり)

※以下、作品の内容に関わる記述がございます。

零式やヘルダイバーを登場させたことについて、出渕監督は「『EZY』が劇場で公開されると決まった際に、エンディングまで席を立たずに見てもらいたいと思い、様々な要素を詰め込んだんです」と語り、映画撮影がテーマの第3話で、エンディングを劇中劇の予告編にしたのも同様の意図があったためと解説してくれた。

第3話のエンディングで流れる劇中劇の予告編は、絵コンテを『シン・ゴジラ』などで知られる樋口真嗣さんが担当していることを明かし、「全部お任せしたら、どこかで見たようなコンテが上がってきて……『ケルベロス』の完コピなんですよ(笑)」と笑いを誘った。

1991年に公開された実写映画『ケルベロス-地獄の番犬』は、『パトレイバー』の原作者ユニット・ヘッドギアのメンバーでもある押井守監督の作品。

出渕さんは、樋口さんの作った予告編について「押井さんに承諾してもらったので問題ありません。エンディングには『予告編承諾 押井守』とクレジットも入れさせてもらいました」と語った。『EZY』は出渕さんが監督を務め、脚本・シリーズ構成に伊藤和典さん、キャラクター原案にゆうきまさみさん、コスチュームデザイン協力に高田明美さんと、押井さん以外のヘッドギアメンバーがクレジットされている中、押井さんもどうにかしてクレジットに入れたいという想いがあったという裏話を明かしてくれた。

千葉繁の“本物”の演技に上坂すみれ&戸谷菊之介が感激! 新旧『パトレイバー』をつなぐ熱いアフレコ秘話

千葉さんの登場とともにネタバレありの熱いトークが繰り広げられる中、話題はアフレコ現場の様子へと移る。

千葉さんとの共演について戸谷さんは「まさに『本物がいる!』という感じでした」と、シリーズの生き字引である千葉さんとの共演を振り返った。

一方、上坂さんは「本物の『ヘ~ロ~』が聞けて感動しました!」と熱っぽく語ってくれた。
この『ヘ~ロ~』は、劇場版第1作でアメリカから帰ってきたシゲさんが、アロハシャツ姿でネイティブっぽく「ハロー」と挨拶したシーンで発せられたセリフ。

どうやら『EZY』でも聞くことができるらしい名セリフをセレクトした上坂さんに、出渕監督も千葉さんも「よく覚えてるよね」と感心していた。

上坂さんは十和の演技について「『もっと暴れていい』と言われたので、1話で『こっちは警察だぞ!警察!』というアドリブを入れたんですけど、演じているうちにどんどん太田さんの気持ちがわかってきて、『納税者だからって優しくしてたらつけあがる市民には、活を入れなきゃダメなんだ』って思うようになりました(笑)」と、自身の役を旧作に登場する正義感あふれる直情型の隊員・太田功に重ねて説明。

さらに話題が旧作のフォワード(泉野明)とバックアップ(篠原遊馬)の話に及ぶと、二人が劇中で発していた「フォワードとバックアップは」「一心同体」というやり取りを上坂さんと戸谷さんが披露。

『EZY』には登場していないセリフだが、ストーリーを重ねるごとに十和と桔平も野明と遊馬のように深い絆で結ばれていくのではないかと感じさせてくれる、貴重な一幕だった。

『パトレイバー』は無限に作られるはず――キャスト&出渕監督が新旧ファンへ熱いメッセージ

『File 1』の先行上映に続き、1時間近くの大ボリュームで実施された完成披露舞台挨拶。

最後に千葉さんは、「皆様、ひとりひとりの中にそれぞれの『パトレイバー』が存在していると思います。それぞれがそれぞれの想いで『パトレイバー』という作品を育てて、引き続き応援してください。僕らもがんばりますので、今後ともぜひよろしくお願いします」と、往年のファンに感謝の言葉を送った。

戸谷さんは、「僕は『EZY』をきっかけに『機動警察パトレイバー』という作品を知り、大好きになりました。僕がこれだけ『パトレイバー』を大好きになったということは、僕と同年代のみなさんにも響く作品だと思うので、同年代のみなさんに『パトレイバー』の魅力を伝えていきたいと思います」と、『EZY』で初めて『パトレイバー』に触れた若いファンにメッセージを送った。

シリーズのファンでもある上坂さんは、「大好きな作品に携わることができて、一ファンとしても役者としても本当に嬉しいです! 『EZY』は、はじめて『パトレイバー』に触れたみなさんも、ずっと応援してきてくれた大きなお友達も、『パトレイバーってこんなに面白いんだ』と再発見できる作品になっています。『パトレイバー』は、見る人によって好きなところが違ってくる作品だと思います。ぜひ『自分はこのシリーズが好き』とか『このシーンがいいんだよ』と、友達みんなで語り合って盛り上がってください! みなさんの応援があれば『パトレイバー』は無限に作られるはずなので、声を大にして『パトレイバーは面白いよ』と全世界に発信してください」と、思いの丈を熱く語り尽くした。

出渕監督は、「『EZY』の公開に合わせて、YouTubeで旧作を放送する『毎日パトレイバー』という企画がありましたが、僕もあらためて旧作を見て『やっぱり面白いなぁ』としみじみ思いました。近所の飲み屋にテレビがあるんですが、そこで『毎日パトレイバーを見よう』ということになって、当日行ってみたら、ちょうど僕が脚本と絵コンテを担当したNEW OVA第14話『雪のロンド』が流れていて(笑)。実はシリーズ構成の伊藤さんに『雪のロンドみたいなお話をまたやってよ』と言われて、どこでとは言えませんけど、やらせていただきました」と語り、ファンに期待を持たせた。

ファンから今後の展開にも期待が寄せられる中、出渕監督は「上坂さんの『無限に作られる』という発言には驚きましたが、『パトレイバー』は、いろいろなアプローチが可能な作品です。昨今の作品は連続性のあるものがほとんどで、読み切り感のある作品は少なくなっていると思います。若い人は、こういった読み切り感のある作品を逆に新鮮なものとして受け止めてくれるのではないかと期待しています」と締めくくった。

舞台挨拶終了後には、出渕監督がひとり会場に残り、ファンの記念撮影に応じるなど、ファンとの距離の近さも『パトレイバー』の魅力のひとつだ。

5月15日(金)公開の『File 1』をぜひ視聴していただきつつ、公開日当日と翌日16日に開催される舞台挨拶にも参加してほしい。

© HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

(執筆者:斎藤ゆうすけ/90年代のアニメとゲームを愛するライター。系放送作家&シナリオライターとしても活動。ゲームやアニメ、小説や漫画原作などシナリオの企画・制作も多数担当。専門学校でメディア論やシナリオ講座の講義も。https://x.com/saito_you)

sasuke_in

元・秋葉原のフリーペーパー&情報サイトの編集・ライター。現在はフリーライターとしてゲーム、アニメなどの記事を中心に執筆。『プリコネR』や『ウマ娘』、アクアプラス作品をこよなく愛す。

Twitter: sasuke_in