西川に神が降りた日~サッカー天皇杯準決勝を振り返る

  by 香椎みるめ  Tags :  

難しい試合になる。試合前から感じていました。サンフレッチェ広島の天皇杯は久しぶりの快進撃。とはいえ、準決勝で当たったFC東京は、「ポポヴィッチ監督の退任」「ルーカスの引退」がモチベーションを掻き立てます。しかもミラーゲームができるチームです。5バックへのシフトが容易なので、大量得点を望むのは酷。案の定、120分でゴールを奪えず、PK戦に突入。

日本代表が魅せ、若い力が勝利に導いた。

先攻はFC東京。太田、青山、森重、水本、チャン、千葉まで蹴り終えたところで、青山がセーブされ、千葉はふかしてしまいました。3対1と追い詰められたサンフレッチェでしたが、守護神の西川が魅せます。三田を止めると、西川自身がキッカーとして決め、その勢いで長谷川のシュートも弾きました。塩谷の成功でサドンデス。米本、浅野がきっちり叩き込んだものの、7人目の石川は失敗。野津田が豪快に蹴り込み、サンフレッチェの決勝進出が決まりました。

青山はともかく、千葉は「外すかも…」と予感していた私。個人的な意見ですが、ミキッチ(準々決勝のPK戦でミス)や千葉は、外しても愛されるキャラクターの持ち主です(仕方ないともズルいとも思いますが)。年長組のミスを取り返したのが、若い力、浅野と野津田だったのはチームにとっても大きく、嬉しかったです。もちろん満足してもらっては困ります。90分で決着を付けられる選手に育って欲しいものです。

日本代表のレギュラー奪取を視界に捉えている西川は、チームメートと協力して120分間ゴールマウスに鍵をかけました。長谷川の決定的なシュートを顔面で防いだ場面も含め、神が降りたような活躍ぶり。国内2冠を置き土産に、噂されている移籍に踏み切るのでしょうか。マネーゲームを仕掛ける余裕があまりないことは重々承知していますが、サンフレッチェはなんとかして慰留を。

得点奪取のアイデア不足。パクは果敢なアピールを!

2試合連続PK勝ちの結果をどう受け止めるべきか。ゴールが欲しい時間でも、下手に慌てることがない落ち着き。そうした安定感はサンフレッチェの武器です。しかしながら、得点を奪うアイデアについては不満が残ります。一定の実力を備え、リーグ最少失点のサンフレッチェと同じ布陣を選択する対戦相手(浦和レッズ、柏レイソル、FC東京)の攻略は容易ではありません。「クロスの精度」も「シュートのタイミング」も、FC東京戦を観る限り、もっと高められる、向上の余地があると感じました。

シーズン通して、レギュラーを固定できなかった、唯一のポジションが左アウトサイド。守備が得意なファンは、どうしても攻撃時にとまどっているように見受けられます。突破するのが難しいなら、仲間にボールを預け、ポジショニングで勝負するのも一つの手。選手としての幅が広がるでしょう。同じ韓国人選手なら、パクの高精度の左足は魅力的。先発奪取は厳しいとしても、途中出場のチャンスを目指し、果敢にアピールし続けてもらいたいです。

香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

Twitter: GigaMirumeK