新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから5年の月日が経ちました。
周りの人とも社会ともどんどん距離が離れていくような感覚、どこにも外出できない日々…。あの時の“異常さ”を、まだ記憶に残っている方もいるのではないでしょうか。
あの経験は、社会に何を残し、私たちはそこから何を学んできたのか―――。
そうした考えを【科学技術】の視点で振り返るイベントを今回、ご紹介。
「SNS等の情報との付き合い方」「プライバシーの重要性」など、【コロナ禍からの学びを未来に活かすイベント】です。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)が展開する、「RInCA」という公募型研究開発プログラムでは、
「科学技術と社会の共創に向けたELSI/RRIの実践知―パンデミックから考える科学との向き合い方」と題したイベントを、2025年12月6日(土)に東京・京橋で開催します。
一部オンライン配信有りとの事なので、全国どこからでも参加できます。
【ELSI(エルシー)】とは…「倫理的・法制度的・社会的課題」の略称
コロナ発生を背景に、2020年に開始した本プログラムでは、新興科学技術の【ELSI(エルシー)】研究のうち、パンデミックに関わる社会課題について取り上げ、これに特化した4つの課題を採択し、研究を進めてきたそうです。
そもそも【ELSI】とは、「倫理的・法制度的・社会的課題 (Ethical, Legal and Social Implications/Issues)」の略称の事。
次々と発展していく“新しい科学技術”が、果たして本当に導入していいものなのか、また社会にどう実装すべきなのか。この【ELSI】の観点が現代において、重要視されつつあります。
イベントご紹介、3部構成
イベントは3部制。第1部で研究者からの成果報告が行われます。
筆者が注目したのは、東京大学 大学院法学政治学研究科 教授・米村滋人氏による研究発表
「携帯電話関連技術を用いた感染症対策に関する包括的検討」です。
パンデミック下で浮き彫りになった「個人情報とプライバシー」の視点での研究。まさしく【ELSI】を感じられるのですが、今でも私たちの身近なテーマとは言えるのではないでしょうか。
以下、HPに記載の【プロジェクト概要】
COVID-19感染拡大に有効な対策が必要とされる一方、人々の行動制限や営業制限は、対策として持続的実施が困難です。そのような中、携帯電話を用いた位置情報や行動履歴、接触情報などのデータを収集・解析する対策が国際的にも注目されています。しかし、これら個人情報の利用に関してはプライバシー上の懸念を指摘する見解も多く、各国においても明確なルールは確立されていません。
本プロジェクトは、COVID-19と将来の新興感染症対策に向けて、携帯電話関連技術の望ましいデータ利用とプライバシーや人権保護のあり方について、情報工学やELSIの観点から多角的・学際的に検討します。立法も含め、適切な技術活用や政策形成の提案を目標として、エビデンスに基づくガイドラインの作成や、国際的なルール形成への貢献を目指します。
(第1部の登壇者:RInCAプログラム研究者)
続いて第2部では、第1部で登壇した研究者と専門家ゲストによる、2つのトークセッションが実施されます。
前半は、国が市民の行動を直接制限せず、「自粛要請」により対策を進めたことが特徴的だった日本の対応を振り返り、携帯電話技術等を活用した感染症対策における個人情報保護と倫理の課題について、京都大学 大学院文学研究科 教授・児玉聡氏と、前述の米村氏、また文科省の科学技術・学術政策研究所の岡村麻子氏による議論を通じ、今後の危機に備える日本モデルを探りっていきます。
後半では、危機時における人の情報の受け止めと行動の選択を捉え直し、ポストパンデミック時代においてのメディア空間や都市空間に存在する他者・情報との向き合い方について、早稲田大学 政治経済学術院 教授・田中幹人氏と、東海学園大学 卓越教授・林良嗣氏、また、Future Center Alliance Japan 理事/デジタルコンテンツ協会 常務理事・加藤公敬氏が対談されます。
(写真:ELSIプログラム(RInCA)主催、過去のイベントの様子)
最後の第3部では、会場参加の皆様と、第1・2部を踏まえて、コロナ禍での学びを振り返った上で、次の危機=パンデミックに向け、科学技術との向き合い方として、どのような価値観を持ち、どのような選択を行っていくかについて、参加者同士の対話を通じて考えを深めるパートを設けられるそうです。
コロナ国内初確認から5年を機に当時を振り返る機会に…
イベントは、コロナ国内初確認から5年を機に、“科学技術”の観点で当時を振り返り、そこから得た学びの活用とこれからの社会を考える貴重な場となります。
参加無料・事前申込制です。
民間企業関係者、政策関係者、研究者・研究機関関係者に加え、一般の方の参加も広く歓迎とのことなので、科学技術に関心を持つ方々に是非オススメです。
ELSIプログラム COVID-19関連課題公開イベント
科学技術と社会の共創に向けたELSI/RRIの実践知―
パンデミックから考える科学との向き合い方
【日時】 12月6日(土)15:00〜18:00(開場 14:30)
【会場】 City Lab TOKYO(東京都中央区京橋3丁目1-1 東京スクエアガーデン6階)
オンライン参加あり(要申込)
【定員】 会場参加 先着60名(オンラインは上限なし)
【参加費】 無料
【詳細・お申し込み】 https://peatix.com/event/4591542
【主催】
JST-RISTEX「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題 (ELSI) への包括的実践研究開発プログラム」(RInCA)
(RInCA) https://www.jst.go.jp/ristex/rinca/

