今から26年前の1987年8月22日、熊本県阿蘇南外輪山にある野外ステージ『アスペクタ』で、『BEATCHILD』と題されたオールナイトのロックフェスが開催された。野外フェスの代名詞である『フジロック』が始まる10年も前のことだ。
THE BLUE HEARTSやBOØWY、尾崎豊、渡辺美里など、当時の日本を代表するアーティスト13組が出演、観客7万2千人を動員したこのイベントを記録した映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987』がこのほど公開された。
もちろん、この映画は、純粋に音楽映画としても楽しめる。『リンダリンダ』『Chance!』『ONLY YOU』『十七歳の地図』そして『SOMEDAY』。あの時代に青春を過ごした者にとってはたまらないラインナップだ。
しかし、そこに描かれているのは単なる音楽フェスではない。途中から降り出した豪雨により、会場はある種“戦いの場”と化す。繰り返す機材トラブル、ずぶぬれになりながらのパフォーマンス、そして客席では寒さのあまり倒れるものが続出する。
安全を最優先される現在のフェスであれば、間違いなく中止の判断がなされるだろう。しかし、あの夜、主催者も、アーティストも、そして過酷な状況に置かれた観客たちでさえも、イベントの続行を願った。
“音楽の力”などという言葉を軽々しく使うことには抵抗があるが、この映画を見ると、それを実感せずにはいられない。逆境の中で歌い、踊り、こぶしを振り上げ、あらゆる手をつくしてフェスを成功させようと走り回る、そんな姿こそが“ロックンロール”そのものだ。ここにはあの時代のロックシーンが凝縮されていると言っていいだろう。
今後、テレビ放送やDVD化の予定も無いという。26年前の奇跡のような夜を体験するために、映画館に足を運んでみてはいかがだろうか。
『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987』は、イオンシネマ、TOHOシネマズほかで全国公開中。
※画像は『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987』公式サイトより http://www.beatchild.jp/index.html