「最近の若者は…」という枕詞は、いつの時代も繰り返されてきました。しかし、現代の若者、特に1990年代後半から2010年代序盤に生まれた「Z世代」に対しては、これまでとは少し違った評価が聞こえてきます。それは「Z世代は賢い」という声です。
彼らは本当に賢いのでしょうか?本記事では、Z世代が「賢い」と言われる理由を、その特徴や価値観から多角的に分析し、彼らが社会に与える影響について探ります。
参考記事
https://mamacolle.jp/z-generation-mind/
Z世代とは? デジタルが当たり前の世界に生まれた世代
Z世代とは、一般的に1990年代後半から2010年代序盤に生まれた世代を指します。物心ついた頃には、既にインターネットやスマートフォン、SNSが生活の一部として存在していた「デジタルネイティブ」であることが最大の特徴です。
彼らが育った時代は、経済の低迷や自然災害、世界的なパンデミックなど、不安定な社会情勢が続きました。こうした背景が、彼らの現実的で着実な価値観を形成した一因とも言われています。
Z世代が「賢い」と言われる5つの理由
Z世代の「賢さ」は、単なる学力や知識量だけを指すものではありません。情報が氾濫する現代社会を生き抜くための、しなやかで合理的な思考力や行動様式にこそ、その本質があります。
1. 圧倒的な情報リテラシーを持つ「デジタルネイティブ」
Z世代は、分からないことがあれば即座にスマートフォンで検索します。しかし、その情報収集方法は、単に検索エンジンにキーワードを打ち込むだけではありません。
SNSを駆使した「ディグる」情報収集:Googleでの検索(ググる)に加え、Instagramのハッシュタグ検索、X(旧Twitter)でのリアルタイム情報の収集、TikTokでの動画による直感的な情報収集など、目的や情報の種類に応じて複数のプラットフォームを使い分けます。これは、自分が欲しい情報に最短でたどり着くための合理的なスキルです。
情報の審美眼:彼らは広告や企業からの一方的な情報を鵜呑みにはしません。インフルエンサーや一般ユーザーのリアルな口コミ、レビューを重視し、情報の信憑性を慎重に見極める傾向があります。これは、溢れる情報の中から本質的な価値を見抜く「賢さ」と言えるでしょう。
2. 多様性を受け入れ、自分らしさを追求する価値観
学校教育でSDGsやダイバーシティについて学んできたZ世代は、人種、ジェンダー、セクシュアリティなど、多様な価値観を自然に受け入れます。
個性の尊重:「みんなと一緒」であることよりも、「自分らしい」こと、個性を大切にします。この価値観は、消費行動においても「有名ブランドだから」という理由だけでなく、「自分のスタイルに合うか」「そのブランドの理念に共感できるか」といった点を重視する傾向に現れています。
3. 社会課題への高い意識と行動力
Z世代は、環境問題や人権問題、貧困といった社会課題への関心が非常に高い世代です。各種調査では、Z世代の約9割が社会課題に関心を持っているというデータもあります。
“自分ごと”として捉える当事者意識:彼らは社会問題を遠い世界の出来事ではなく、自分たちの未来に直結する”自分ごと”として捉えています。そのため、環境に配慮した製品を選んだり、社会貢献活動に積極的な企業を支持したりと、自らの消費行動や選択を通じて社会に働きかけようとします。
4. コスパとタイパを重視する合理的な思考
不安定な社会で育ったZ世代は、コストパフォーマンス(コスパ)を重視する現実的な金銭感覚を持っています。それに加え、タイムパフォーマンス(タイパ)も彼らの行動を測る重要な指標です。
無駄を嫌う効率性:動画を倍速で視聴する、結論から話すことを好むなど、時間や労力の無駄を徹底的に排除しようとします。この合理的な思考は、仕事や学習においても、より効率的な方法を模索し、生産性を高める力につながっています。
5. 学びへの貪欲さと自律的なキャリア形成
終身雇用が崩壊した現代において、Z世代は企業に依存するのではなく、自らのスキルでキャリアを切り拓こうとする意識が高い傾向にあります。
専門性を高める意欲:特定の分野で専門性を高め、どこでも通用する人材になることを目指します。オンライン学習サービスなどを活用し、自律的に学び続ける姿勢は、変化の激しい時代を生き抜くための「賢さ」の表れです。
Z世代の「賢さ」がもたらす未来
Z世代の持つ新しい価値観やスキルは、既に社会や経済に大きな影響を与え始めています。
企業は、透明性のある情報開示や、サステナビリティへの取り組みがこれまで以上に求められるようになります。また、画一的なマスマーケティングは通用しなくなり、個々の価値観に寄り添ったパーソナライズされたアプローチが不可欠となるでしょう。
一方で、上の世代とは異なるコミュニケーションの作法や価値観を持つため、職場などではジェネレーションギャップによる摩擦が生じる可能性もあります。しかし、彼らの合理性や社会課題への意識の高さは、旧来の慣習を見直し、社会をより良い方向へアップデートする原動力となるはずです。
まとめ
Z世代の「賢さ」とは、膨大な情報の中から真実を見極めるリテラシー、多様性を受容し自らの価値観を大切にする精神、社会課題を自分ごととして捉える当事者意識、そして無駄を排し本質を求める合理性に集約されます。
彼らは、生まれたときから複雑で変化の激しい世界にいたからこそ、その中で生き抜くための新しい「知性」を身につけた世代と言えるでしょう。「最近の若者は賢い」――その言葉は、これからの社会を担う彼らへの期待の表れなのかもしれません。

