フランスのルイ・カミーユ・メイラード博士が研究したところによると、茶色い食べ物は老化を促進させる可能性がある。物質は加熱などの加工か、経年するか、あるいはその両方が加えられると、白から茶褐色へと変化する。これをメイラード反応という。こうした物質に含まれる『AGEs』と総称されるものが老化の原因とする研究がある。『AGEs』の日本語での呼称は『終末糖化産物』という。中二心を刺激するかっこいい名前だが、身体にはやっかいな代物である可能性がある。
ポテトチップスを調理する段階の高温加熱が『アクリルアミド』という発がん物質を生成しているとして、WHO(世界保健機構)とFAO(国際連合食糧農業機関)から2005年に注意勧告がなされたことがある。これもメイラード反応の一例だ。
肉を焼くと褐変
玉ねぎを炒めると褐変
デミグラスソース(ブラウンソース)の褐変
コーヒー豆の焙煎
黒ビールやチョコレートの色素形成
味噌、醤油の色素形成
パン(トースト)やご飯の「お焦げ」の形成
Wikipedia『メイラード反応』より引用
これらがメイラード反応の例として挙げられている。どれもこれもが我々の食生活に欠くべからずなものばかりだ。これらの多くが老化作用を促進する物質であるならば恐ろしいことだ。必然と思っていた老化現象の多くのものが、我々の普段とっていた食生活が原因になっているとしたら?
ではこの理論が正しいとして、アンチエイジングに則った食生活とはどんなものだろうか。
肉と炭水化物(糖類)の加熱温度や加熱時間を出来るだけ抑える。
精製加工された炭水化物も控える。
あまりに古くなったものは食べない。
加工品ほど身体に良くないという、昔からされていた警告とさしてかわらない。古いものは良くないというのは基本中の基本だ。
しかし人間の身体が美味いと感じるのはこれらの逆であることが多い。ポテトチップスだけではなく、焼いた肉や炒めた玉ねぎ、コーヒーや各種ソース類の一切無い食生活。考えただけでも味気ないものだ。いま話題の、こんがりきつね色に焼き上げたパンケーキ等とんでもないということになる。きつね色の焼き目はメイラード反応を象徴する現象なのだ。
だからといって新鮮野菜と生肉のようなものだけで生活が出来るだろうか?実行にうつしている人もいるかもしれないが、多くの人にとってはそれは苦行である。そのような極端な食生活はかえって寿命を縮めてしまうリスクもある。結局は「基本的には身体に悪いものと理解したうえで、あまり多くは摂り過ぎないようにする」という妥協点しか見当たらない。
ただ、多くの人が当たり前のように必ず食べている白米やパンといった主食に問題は無いだろうか。これらを一切断つ事は難しいが、どうしても食べたい時だけ食べるという発想の転換をするだけでも、随分と身体の負担を減らせるのではないか。炭水化物を制限するという食生活は、糖尿病治療においても一定の成果を挙げていると聞く。
ストイックな食事制限は誰しもが出来る事ではない。しかしほんの少し頭を切り替えてみて、当たり前だと思っていた食生活に、別の可能性を見出すことは難しいことではない筈だ。ちょっとした新しい食習慣を採用することで、若さと健康を保てる可能性があるならば、やってみる価値はあるといえるだろう。