伝説のバラエティ『リンカーン』(TBS系)の後継番組として、昨年10月から始まった『ジョンソン』(同系)が、9月末をもって打ち切られる。放送わずか1年。かまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークといった当代一の人気者をもってしても、番組継続の壁は厚かった。
だがこれは、単に1つの番組が終わるだけではなく、TBSにとっても大変痛手なのである。それは、先述の『リンカーン』から話をさかのぼらないといけない。
2005年に始まった同番組は、ダウンタウン、さまぁ~ず、雨上がり決死隊、キャイ~ンといった精鋭(当初は山口智充も出演)による王道バラエティとして約8年続いたが、そのスタートはTBSにとって大変意義のあることだった。というのもそれまでは当たり前のようにあった同局のお笑いバラエティの歴史が、約10年間途絶えていたからだ。
『8時だョ!全員集合』の系譜を継ぐ『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』が92年に終了。ダチョウ倶楽部の初の冠番組『王道バラエティ つかみはOK!』も93年に打ち切られた。もちろん芸人が出演する番組はそれ以降もあったが、芸人とがっぷり四つで組む純度の高いお笑いバラエティが本格復活するのは、『リンカーン』を待たなくてはいけなかったという。
だがその長いブランクが尾を引き、例えばハリセンの作り方、パイ投げのパイの素材、熱湯風呂の大きさなど、芸人のバラエティでよく見る小道具やアイテムのノウハウが、TBSにはなかったというのだ。当然スタッフは苦労するとともに、芸人からもクレームが届くこともあったそう。また、コントのヅラもTBSでは2~3種類しかなかったが、フジテレビでは山ほど出てくるなど、他局に比べて明らかに見劣りしていた。
これらの状況は『水曜日のダウンタウン』の演出を務める藤井健太郎氏の『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)に詳しく書き記されているが、『リンカーン』はTBSのお笑いバラエティのノウハウを蓄積させただけではなく、在籍するクリエイターをも成長させた。藤井氏のように『リンカーン』で学んだスタッフたちが、今度は自ら番組を企画し、TBSを牽引していったのだ。
『リンカーン』は2013年に幕を閉じたものの、今回の『ジョンソン』で再びそのお笑いバラエティの歴史が、約10年ぶりにつながれた。だが期待に反して1年で終了するという誰もが予想していない事態が起きてしまう。『ジョンソン』の打ち切りは、TBSのお笑いバラエティの歴史にとってあまりに損失が大きいのだ。
さて、5日に放送された企画は、レギュラー陣が世界各国に飛び、バズり動画を撮影。合計の再生回数1000万回を達成したら賞金100万円を獲得できるというものだった。だが、それまで画面左上にあったはずの「ジョンソン」という番組タイトルは表示されず、企画名だけが記載されていた。また、次のオンエアは1ヵ月後の来月9月9日だという。もはやTBSからも見放されてしまったのだろうか。最終回ぐらいは盛大に盛り上げてほしいものだが…。