スイスの”バ美肉”研究者ミラが美少女になる人々の心理に迫る NHK「最深日本研究」放送

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NHK「最深日本研究」スイスの”バ美肉”研究者ミラの密着ドキュメンタリーが放送(出典:NHK新番組「最深日本研究〜外国人博士の目〜」

NHK新番組「最深日本研究〜外国人博士の目〜」でスイスの人類学者ミラの密着ドキュメンタリーが2024年4月14日に放送された。ミラは、VTuberやメタバースでバーチャルアバターの力により美少女の姿に変身する「バ美肉(ばびにく、バーチャル美少女受肉)」文化に着目した論文で学術賞を受賞、国連の国際会議でも発表するなど精力的に活動している。番組では来日してフィールドワークを行うミラに密着。ミラは”バ美肉”VTuberである、のらきゃっと・あまちじょんこ・バーチャル美少女ねむに取材を行い、美少女になる人々の心理に迫った。番組は4月28日までオンデマンド配信で視聴可能だ。さらに4月20日には出演者による「非公式アフタートーク」が配信されることが決定した。現在NHKではドラマ『VRおじさんの初恋』も放送されており、”バ美肉”カルチャーへの注目が改めて高まっている。

■”バ美肉”研究者ミラ

リュドミラ・ブレディキナ(通称:ミラ)は、マルタ大学博士課程在籍の人類学者だ。エスノグラフィー(フィールドワークを用いて対象の生活を観察する民俗学・文化人類学の研究手法)を通じて、男性の”kawaii”とバーチャルなジェンダー表現について研究している。2022年にはバ美肉と伝統的な日本の演劇に関する修士論文でジュネーブ大学のジェンダー分野の学術賞「プリ・ジャンル」を受賞。論文は翻訳され日本の雑誌『現代思想(青土社)』にも掲載された。

VTuberやメタバースが人類に与える影響を調査するため、2020年からは日本のVTuber・作家のバーチャル美少女ねむと研究ユニット「Nem x Mila(ねむみら)」を結成して活動しており、定期的に「ソーシャルVRライフスタイル調査」などのレポートを発表内閣府・総務省・文化庁など各種省庁でも参考資料として取り上げられている。

2023年10月には、Nem x Milaとして国際連合の国際会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023(IGF京都2023)」で講演を行った。岩波書店から7月に刊行予定のVTuber総合学術書『VTuber学(仮)』の執筆陣としても名を連ねている。

■NHK新番組「最深日本研究〜外国人博士の目〜」

NHK新番組「最深日本研究〜外国人博士の目〜」は、サブカルから食まで、世界の注目を集める日本文化に着目。海外にいながら、日本人よりも日本の特定分野に詳しい研究者のフィールドワークに密着することで我々日本人も気づいていない日本の魅力を探るドキュメンタリー番組だ。

2024年4月14日に放送された第1回では「バ美肉」を研究するスイスの人類学者ミラの来日フィールドワークに密着。ナレーション音声は俳優の津田健次郎。

※出典:最深日本研究〜外国人博士の目〜 – NHK – https://www.nhk.jp/p/ts/RJ5G2XZ4N3/episode/te/J1K96JLJ9K/

●ミラが解き明かす美少女になる人々の心理

6度目の調査来日で東京を訪れたミラの目的はバ美肉VTuber達に直接取材を試みることだ。ミラは”バ美肉”VTuberである、あまちじょんこ・のらきゃっと・バーチャル美少女ねむの3名に対して取材を行った。

ミラと取材した3名の”バ美肉”VTuber(出典:NHK新番組「最深日本研究〜外国人博士の目〜」

VTuber「あまちじょんこ」の”中の人”である「じょんアニキ」は、自宅にミラを招いて、美少女を作り出す超絶技巧の音声・モーション技術を披露し、他人からの目線を意識してキャラクターへの感情を演出することの大切さを語った。VTuber「のらきゃっと」のプロデューサーである「ノラネコP」はファンたちの”そうあってほしい”という願いによりキャラクターが生まれたと解説、娘のように感じるキャラクターの幸せを願うことで人脈も広がり、人生が豊かになったと語った。VTuber・作家「バーチャル美少女ねむ」の”中の人”はリアル世界でミラと対談し、自分にとって「美少女」とは”kawaii”という概念を具現化した存在あり、現実のしがらみをはぎとると多くの人の魂にありのままの本質である”kawaii”が眠っているのではないか、”kawaii”によりお互いの本質を認め合える社会が作れるのではないかと語った。

三者三様の”バ美肉”の多様性が明らかになり、ミラは男性が美少女になり”kawaii”を獲得することで社会のストレスや男らしさの責任から開放されるのではないか、と日本文化から生まれた”kawaii”の可能性について語った。また、ミラは新宿の最新メタバース体験施設「スグバース」を視察して最新VRを体験したり、VTuberが一日店長できる新宿のカフェ & Bar「Function(ファンクション)」でファンの一人としてバーチャルねむのリアルイベントに参加するなど、様々なフィールドワークを実施した。

※注意:この番組は「最”深”日本研究」とあるように、ディープな日本文化に着目する外国人研究者を紹介するものだ。”バ美肉”はVTuber・メタバース世界の様々な文化の一つに過ぎず、ミラとしても番組としてもそれが文化の全てだと主張する意図はないので注意してほしい。

番組はNHKプラスで4月21日まで、NHKオンデマンドで4月28日までインターネットで視聴可能だ。
NHKプラス(4月21日まで、契約者は無料):最深日本研究〜外国人博士の目〜
NHKオンデマンド(4月28日まで、有料):最深日本研究~外国人博士の目~

■「ねほりんぱほりん」から4年。NHKと”バ美肉”

遡ること4年前、NHKで2020年1月8日に放送された「ねほりんぱほりん」の特集「バ美肉おじさん」で、当時まだ一般的でなかったVRやバ美肉の世界が大きく注目された。こちらでもバーチャル美少女ねむが出演しており、バ美肉を日本的な“見立て”の文化と捉える「美少女は枯山水」の言葉が話題となった。

2024年4月1日からはNHKでドラマ『VRおじさんの初恋』の放送が開始された。こちらは暴力とも子による同名コミックを原作としたもので、バーチャル世界で美少女の姿となった中年サラリーマンの初恋を描くヒューマンドラマとなっている。こちらは創作の物語だが、今回のミラの密着ドキュメンタリーとあわせ、フィクションとノンフィクションの両面で”バ美肉”というカルチャーへの注目が改めて高まっていると言えるだろう。

黎明期の仮想世界に生きるメタバース原住民にして、その文化を伝える「メタバース文化エバンジェリスト」として活動。「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに2017年から美少女アイドルとして活動している自称・世界最古の個人系VTuber(バーチャルYouTuber)。VTuberを始める方法をいち早く公開し、その後のブームに貢献。2020年にはNHKのテレビ番組に出演し、お茶の間に「バ美肉(バーチャル美少女受肉)」の衝撃を届けた。ボイスチェンジャーの利用を公言しているにも関わらずオリジナル曲『ココロコスプレ』で歌手デビュー。作家としても活動し、著書に小説『仮想美少女シンギュラリティ』、メタバース解説本『メタバース進化論(技術評論社)』がある。各局テレビ番組や国際ドキュメンタリーへのゲスト出演歴、国内外の新聞でのインタビュー掲載歴多数。VRの未来を届けるHTC公式の初代「VIVEアンバサダー」にも任命されている。 2022年は文化庁・総務省・内閣府にもメタバースに関する情報提供やアドバイスを行い、東京大学や各種学術イベントでも講演活動を行った。アバター文化への貢献が認められ、一般社団法人VRMコンソーシアムよりキズナアイ以来史上二人目となる「アバターアワード2022 特別功労賞」受賞。 2023年には『メタバース進化論』で「ITエンジニア本大賞2023」ビジネス書部門で大賞を受賞しVTuber初の大賞作家となった。Forbes JAPAN「注目のクリエイター100」にも選出。国連の国際会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023」に登壇し英語でプレゼンを行った。MoguLive VTuber Award 2023「今年最も輝いたVTuber」に選出された。

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